2004利尻・礼文紀行利尻編
  8月25日〜28日、北方領土を除けば日本最北端の島、利尻・礼文に行きました。
本来この夏は「モンゴルに行って馬に乗る」という計画だったのですが、かみさんの体調が完璧でないため、断念しました。それで昨年のサハリン旅行で積み残した形になっている利尻・礼文に急遽変更したのです。
あとで聞くと「別に8月でなくてもよかったのに」と言います。……夏に涼しい島に行く、と言っていたのはかみさんなのですが…まあ、すんでしまったものはしょうがないか。
  25日(水)
 
6:00起床、7:30出発で羽田へ。9:45羽田発稚内行きに乗り、稚内空港へ着いたのが12:00近く。
「稚内の市街まで出て、そこで食事しよう」という計画はバスの時刻表を見たらあえなくアウト。しかたなく空港内のレストランで昼食。
しかし、これがなかなか美味。ホタテハンバーグなどは「をを!」と言うほどの味でした。ホタテの貝柱をハンバーグにするなんて、北海道でしか発想できないでしょう。
いっしょに頼んだサハリンビールは「BHP」の表記。これはロシア語発音で「ビール」です。本来のロシア語では「ピーヴァ」なので、サハリンも英語化しているんだなあ、と思いました。
   利尻・礼文の地図(円内がフェリー路線)
 
JCB
   
 

稚内までバスで出て、フェリー乗り場へ歩きます。去年乗ったサハリン行きのフェリー乗り場より少し東側です。
時刻表がありました。たった8本の便しか記載されていませんが、これが稚内発国内船便のすべてのようです。

 
礼文行きのフェリーが入ってきました。サハリン行きと大きさは同じです。デザインも同じなので、もう少し工夫してほしいな、と思いました。
  かみさんは待ち時間にビールを飲みます。かなり寒かったので、あとで「熱燗にすればよかった」と言っていました。私は熱い缶コーヒーを飲みました。
 
利尻行きフェリーは3番乗り場で、時間前にもうたくさんの行列が出来ていました。「まだ先なのになあ……」と思いつつ、もしかして座れなかったら困る」と考えて列に並びました。フェリーのキャパシティを考えればそれは杞憂にすぎなかったのですが。
でもあとで礼文島の「かあちゃん宿」のおかみさんに聞いたところ、「今年はお盆過ぎても予約が満杯で忙しい」ということでした。この時期にしては乗客が多かったようです。狂乱熱波も北海道観光にはラッキーだったのかも。
  フェリーが到着し、降りる客と乗る客のすれ違いが起こります。通路が狭いためにみんな迷惑している様子です。職員がうまく整理すればいいのに、と思います。
 
二等船室中央部分の右舷側に陣取ります。みなさん、べったし座って足を伸ばしていますが、一部ではあぐらをかいたり、ひざを立てないといけない人口密集地もあります。
真ん中の女の子たちが犬を持ち込んでいました。小型のチワワですが、いいのかな?と思います。女の子たちは周囲に気兼ねもなく犬と遊んでいます。
  船は宗谷岬をぐるっと回ります。岬の丘の上には灯台と風力発電機が立っています。風はすごそうなので、こういう場所こそ風力発電にふさわしいな、と思います。
去年は見なかった風景です。車でまわったところだけど道路からは遠い地域なのでしょう。
 
外洋に出て、フェリーは波を蹴立てて走ります。時々大きく揺れ、窓の風景がエレベータのように上下します。ビルの4階分くらいの横揺れです。どうやら荒れた海を大きく旋回しているからのようです。
  横にタンカーや漁船が併走していました。
 
利尻富士が見えてきました。この時点では山頂が覗いていました。
 

近づくと山頂は雲に隠れてしまいました。この島は火山そのものです。翌日会った日本レンタカーの女性は、
「最近、利尻山は死火山ではなく、休火山だって変更されたんですよ、あれが噴火したら三宅島どころじゃないです、逃げるところないですよ」
と話していました。

 
5:00過ぎ、利尻島表玄関口、鴛泊(おしどまり)港に到着。
そろそろ夕暮れが近づいています。バスの時刻表を調べると、もう5時台のものはありません。タクシーだと高そうだし、どうしたものかと思っていると、かみさんが「宿から迎えに来させればいいじゃない」と言って電話をかけました。
自宅からかけた電話では「バスで来てください」ということだったので、どうなるのかと思っていたら軽のワンボックスが迎えに来ました。
汚い車で、そのうえ運転しているのは疲れたような高齢男性で、なんだか気の毒になりました。
  走ること20数分、「くつがた荘」に着きました。
ここ沓形(くつがた)は鴛泊を時計文字盤の12時とすると、9時の位置にあります。利尻のもう一つの玄関口ですが、規模は小さいようでした。「くつがた荘」はいかにも古く、今時の観光客相手の宿ではなさそう。もう一人いた客は島の工事関係者でした。
夕食も冷たい作り置きのものばかりでした。予約するときに1万円以上する宿は避けたのですが、あんまり安い宿も考え物です。しかし利尻も礼文も、宿は安い民宿と高いホテルに二分化していて、中間がないのです。
 
もう一人の客に身の上話など聞き、「沓形港は夕日の名所なんですよ」と言われたので、浴衣にサンダルで港まで歩きました。しかしとっくに夕日はなく、町の軒には祭り提灯が燈っていました。
空には12夜くらいの月がかかり、寂しさやわびしさは感じないものの、怪しい夜でした。
  26日(木)
  二日目、昨日よりはいい天気です。宿の車で鴛泊まで送ってもらおうかと思いましたが、夕べの爺様は見えません。婆様には頼みにくく、「じゃあ送りますよ」と言ってくれた工事関係者の車は満杯でした。
すったもんだの挙句、レンタカーのお姉ちゃんに迎えに来てもらいました。車は三菱コルトです。いろいろ問題の多い三菱車ですが、これは別です。乗ってみたい車でした。
しかし走らせた印象は「軽い・頼りない・ものたりない」でした。外見のシックさと違い、中身は軽薄短小な車です。1200tだからしかたないか?
 
最初の観光地は島の北側にある「姫沼」です。
十和田湖に似た印象ですが、少し狭いようです。沼というからには深さもないのでしょう。でも、森に包まれてなかなかいい雰囲気です。
  周囲をぐるりと一周する遊歩道を歩きます。途中にあった木橋で撮影。
 
そこに寝転がっていた?一人旅の女性に撮影してもらいました。どうして寝転がっていたのだろう?
それはともかく、写真の腕は最悪でした。山を真ん中に持ってくるなよ!
  姫沼の北側遊歩道。木道になっていて、尾瀬沼みたいです。途中で「ポン山」への登山口があり、ちょっと面白そうだと思いましたが、登りませんでした。
 
太い木々の根元で一休み。吹きすぎる風に汗も乾きます。
 

湖面には青空が映り、水鳥たちが泳ぎます。

名残を惜しみつつ、105号線を南下します。石崎灯台、オタトマリ沼を通り、仙法師岬公園へ到着しました。

 
仙法師岬公園は波の荒い岸辺の岩の中です。
空にはカモメが舞い、陸では生うにを売っています。
  岩の間をセメントで固めた遊歩道は、ところどころ波に洗われています。タイミングが悪いとずぶ濡れで、実際に子どもたちが水浸しになっていました。
 
岸辺を囲った生簀の中には数頭のアザラシが泳いでいました。観光客が餌をあげています。
  アザラシたちはのんびり泳いでいるように見えますが、本当はどうなのでしょうか?
仲間のいる、広い北極圏へ帰りたいのではないかな・・・
 
利尻水道を背景にして一枚。
  売店では本当に生きたウニを売っています。手のひら一杯のイガグリに似た生き物がウニウニ動いています。
 

お昼になりました。
レンタカーのお姉さんに聞いた「おいしい昼食の店」である、鴛泊(おしどまり)港構内の「漁業協同組合の店」に入ります。頼んだのはもちろん生ウニ。大人のこぶしより大きく、それに棘が生えています。
ほかにホタテ、タコの浜焼き、ホヤを頼みました。ビールは私はほんの一口、残りはかみさんが飲みました。

  隣りのテーブルに来た親子が、私たちのウニを見てビックリしていました。「見せてください」と言って覗き込みます。ウニは割られているのにモゾモゾ動きます。
子どもは半分怖がっています。
 
箸とスプーンで開いてみます。薄い外殻に中身がへばりついています。中には芯のような棒があるだけ。中身を食べてしまっても、外側の針たちはザワザワ動きます。
筋肉などの動力装置がないのにどうして動くのだろう?と不思議です。
針の一本一本が生きているのかもしれません。
  私はおとなしくお茶と味噌汁でご飯を食べました。
味そのものはおいしかったものの、絶対的なボリュームは不足していたようです。せっかくなら「ウニ丼」を食べたかったのですが、2500円だったので諦めました。でも、他の店では4500円だったので、この店のほうがずっと安かったのですね。
 
ウニを見物した隣りのお客に一枚撮ってもらいました。
  かみさんが歯磨きしている間に港をぶらぶらしていると、カモメが一羽歩いていました。
ボロボロになっていて、どうやらカモメの老人のようです。近付いても逃げませんでした。いずれ猫にでも襲われて一生を終えるのかもしれません。
 
鴛泊湾の北西にあるペシ岬展望台に来ました。
手前にあるのがポンモシリ島、向こうに霞んでいるのが礼文島です。
  けっこう急な坂を上ります。風も強く、日傘が飛ばされそうです。
 
断崖の下では波が騒いでいます。この岬は北方植物の宝庫でもあるそうですが、半分枯れかけているのでよくわかりません。
  海に突き出た展望台からは280度くらいが海です。思わず全角度を撮影しました。ちょっと海の部分をカットし過ぎたようです。礼文島が見えません。
  ◆ペシ岬から見たパノラマ風景
 
 
食後の休憩場所を探します。昨日から印象的だった場所を思い出して、南のオタトマリ沼に決めました。ここは利尻山を映す湖面が美しく、芝生があって日陰もあり快適なのですが、人の多いのが玉にキズです。
芝生に寝転がっていても次々と観光バスが停まり、老若男女が降りてきます。
利尻山といえば次々と流れてくる雲に頂を隠されています。
  1時間ほど休憩していると、突然山頂が顔を覗かせました。バイクで来ていた若者たちが私たちに「写真を撮ってくれ」と頼みます。二組の写真を撮影し、こちらも撮ってもらいました。
今年の年賀状の図柄はこれに決まりでしょう。
 
夕暮れにはまだ早い時間ですが、沓形に戻ってきました。
沓形岬公園・キャンプ場に行くと、いくつかのテントが張られています。一人用テントが多く、自転車でツーリングしている少年たちのものでした。
  黄色いテントはバイクのツーリストで、疲れているらしくテーブルにつっぷして仮眠していました。その向こうに見えるのは八角形のミニ・ビジターセンターです。
 
灯台と芝生とテントの調和がすばらしい。
ちぎれ雲も絵に描いたようです。
  ミニ・ビジターセンターから海を眺めます。
やがて夕焼けが始まるでしょう。
 
海に落ちていく太陽。
でも、ちょっと水平線に雲が多いようです。
  波間を夕日が彩りますが、ここまで。空と海が真っ赤に染まるところまではいきませんでした。若者たちは海岸の岩やテトラポットの上でそれを眺めています。
中には弁当とビールで宴会をやっているカップルもいました。二日目の旅が終わりました。
 
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