99’北海道旅行記

 

99年8月23〜26日、5年ぶりに北海道へ旅行しました。

94年に道東を回って以来です。

旅行社のパックで三泊四日、飛行機代・ホテル代・レンタカー、食事つき一人5万円という格安料金。ま、安いなりにいろいろある旅ではありますが・・・

札幌の友人に会うという目的を果たすだけでも、充分ペイする内容でした。

では、ごゆっくりお楽しみ下さい。

       *      *      *

1日目、羽田発全日空機で新千歳に着いたのが午後3時40分。けっこう遅い時間です。

「暑い」と聞いていた千歳の天候は、曇り。今にも雨がちらつきそうで、風が寒いのです。「今日から、急に秋空になって・・・」とレンタカーの職員が言いました。こちらとしては、涼しい北海道が希望通りでけっこうなことです。

渡されたレンタカーはデミオでした。リッターカーだと思っていたのでラッキーです。荷物がいっぱい積めるのですが、私たちはリュックが二つだけと、たいした手荷物がないので宝の持ち腐れです。

 白のデミオ

走り出したのは午後4時。しばらく千歳市内を走り、恵庭インターから道央自動車道に乗りました。あとはひたすら走るだけ。

札幌市内を通ったのは午後5時ころ。手稲山を左に見る頃に、ぽつぽつと雨が降り出しました。右に石狩湾が現われても、空は灰色、ワイパーは踊りっぱなしで景色を楽しむ余裕はありません。

朝里インターで札幌自動車道を降り、393号へのバイパスを抜けてキロロへ向かいます。

 

毛無山のワインディングはなかなかハードです。デミオはパワーは結構ありますが、車重があるせいかコーナーの動きは鈍いです。

雨がやんだと思ったら、今度は霧です。ヘッドライトをつけ、慎重に走るしかありません。霧は海からわいているようです。

霧が晴れたと思ったら、峠の展望台につきました。車を停め、箱庭のような小樽の町を見下ろします。写真を一枚撮りましたが、日ごろ

「生まれかわれたら、髪毛が濃くなりたい」と言っている女房は「毛無峠」の名前がいやだといって撮影拒否です。 

さらに20分ほど走ってキロロリゾートに着きました。

キロロに着いたといっても、私たちの宿はホテルピアノ(メインホテル)ではなく、ずっと手前のホテルピコロです。

団体バスがたくさん停まっていますが、ここはバスの職員たちが泊まる所だということでした。優しそうな女性の受付さんに鍵を貰い、部屋に入ると、広いことは広いのですが(12畳くらい)スポーツクラブの合宿所みたいな、畳だけの部屋でした。窓の外には白樺と熊笹が茂っています。熊が出てもおかしくはない風景です。

窓からの眺め

(実はこのホテルにランクダウンした代償に、夕食が無料となったのでした。)

食事の前に寝酒を買いに行きます。

キロロの入り口にある雑貨屋で酒屋の場所を聞くと、赤井川方向へ6キロほど行ったところにあるという話です。10分ほど走るとたしかに酒屋「高橋商店」がありましたが、雨戸が閉まっています。

「閉店かなあ」といいつつ女房が裏に回ると、犬が吠えながら飛び出して来て、女房はふっとんで逃げてきました。犬には紐がついていましたが・・・。

犬のあとから作業着を着たおじさんが出てきたので、「酒を売って欲しい」と頼むと、「私は店のことは何もしらないからなあ」と言います。

「でも、酒屋ならこの先10キロくらいにもう一軒あるよ」と続けたので、私たちは礼を言って先を走ります。

もう真っ暗になった細い道をハイビームでしばらく走ると、右手に酒屋「安部商店」がありました。そこでようやくビールと酒と焼酎をゲット出来ました。

 

ホテルに戻り、冷蔵庫(だけはあった)に酒と烏龍茶を入れて、風呂と夕食会場に出かけます。どちらもホテルピアノの中にあるのです。

朝のキロロリゾート 

数分走るとホテルピアノ、というよりリゾートセンターの全景が見えました。中世の城のような構造です。ピアノ城を頂点に、ゲーセンや商店、レストランなどがスロープを埋めています。温泉は手前にあったので、さっそく入ります。私は女房がタオルを持っているものと思っていたので自分では持ってこなかったのですが、そこで一騒動ありました。

とにかくタオルを確保し、温泉内に入ると、なかなか豪華です。水風呂・サウナ・ジャグジーが揃い、露天風呂も2個所ありました。私はそれを順繰りに入ってみました。

階下の大露天風呂には、吹きさらしを通り階段を降りていくのですが、素っ裸で歩いていくのは奇妙な気分です。湯はおおむねぬるく、入りやすく出にくい感じです。しばらくじっと浸かっていると、汗がじんわりとにじんできます。

空は灰色、風に混じって小さな雨粒が降りかかる天気ですが、気分はなかなかです。

「温泉は正月の長浜以来だなあ・・・」と感慨にふけります。

 

温泉を出て、待合室で女房を待っていますが、いつものようにかみさんは約束の時間から大幅に遅れて出てきました。

レストラン街をあちこち歩きます。最初は、寿司にしようかと思いましたが、寿司屋に活気がありません。威勢の悪い寿司は食べたくないのでバイキングの店に行こうとしましたが、こちらは「30分待ち」です。

次善・三善の策でバーベキューの店に入りました。

貰った食事券を出すと、「お一人3500円分になります」とのこと。

つつましい私たち夫婦は、夕食にでも3500円なんて使うことはめったにありません。(酒は別として)喜んで「北海道海産物バーベキュー」をメインに、カニサラダ、カニ酒などを頼むことにしました。

バーベキューはタラバ蟹の山でした。これを焼くのは大変でしたが、焼いた蟹はなかなか香ばしいものでした。しかし全体に塩辛く、でも私は車の運転があるというので酒もビールも飲ませてもらえません。ぼーっとしていたら、味噌汁まで女房に飲まれ

てしまいました。食事の間中、私は水分に飢えていました。

あとから見回すと、どのテーブルにも水があったのに、私たちの前にだけなかったのです。頼んで持って来てもらった水は本当にうまかったです。(笑)

このあと、ホテルに戻って二人で宴会の続きをして寝ました。

(本日の走行120キロ)

       *      *      *

二日目、起床は7時前でした。

寝ぼけ眼をこすりながら、車を走らせ、朝から温泉に入ります。

他に誰もいない状況で、貸し切り気分です。

風呂から上がり、待合室に来てみまわすと、ジュビロ磐田イレブンのサインが並んでいます。このキロロリゾートというのは、ヤマハ資本系列のようです。ゴン中山のサインを探しましたがどれがどれだか、わかりませんでした。(そういえば背番号も知らないんだった(^^))

 

朝食は8時頃、ホテルの中の大広間で、和洋のバイキングです。

私はスクランブルエッグにベーコン、ミルク&トマトジュース&ポタージュにご飯という和洋折衷メニューです。

かみさんは味噌汁に納豆にご飯の正統和風でした。

朝のメニュー

大広間の20個ほどの大テーブルがほとんど埋まるという混雑ぶり。さまざまな人々が様々に食事しています。

私たちのとなりに座った若い男女の、男の方は丸坊主で、その後頭部に横に深くえぐったような生々しい傷痕がありました。

交通事故かな?・・・暴走族同士のケンカかな?(それらしい風体です)

などと考えてしまいました。

このホテルは斜面に建てられているせいで、階段がやたらと多く、歩きにくいのです。あとで付けられた車椅子用のスロープ(老人用でもある)がそれぞれにありますが、設計者はなにを考えていたのでしょう。

シャンデリアや大理石で豪華に演出するばかりが設計じゃないでしょうに・・・。

ホテル内部の吹き抜け 

9時15分、ホテルピコロをチェックアウトし、小樽へ向かいます。

目的は石狩湾を観ることと、ニシン御殿です。昨夜とはうってかわって空は晴れ、暑い日差しが緑に照り返しています。毛無峠の山々も美しく輝いていました、

ワインディングを通り、393号を出て5号線に出、それを横切り、小樽市内をまっすぐ突っ切る形で小樽港に来ました。

早くも市内には観光バスがあふれ、運河と倉庫まわりには修学旅行の子どもたちが群れています。そういう混雑に巻き込まれるのはいやなので、海を背景に写真を一枚撮ると、私たちは早々と港を離れオタモイ岬に向かい……たかったのですが、オタモイ岬のニシン御殿はもうなくなっているという読者からのご指摘をいただきまして、高島岬のほうにしました。

小樽港 

小樽湾にそって走り、新高島トンネルを抜けると「御殿」はありました。

丘の上に黒い木造建築が建っています。すぐ側に駐車場はありますが有料なので、丘の方へ登ると、無料の市営駐車場がありました。こっちの方が便利です。でも、土日・祝祭日はすぐ満杯になってしまうのでしょう。

「これが鰊御殿?」

降りた途端、かみさんは怪訝な顔です。彼女はもっと贅を尽くした金ぴかの宮殿を期待していたのです。実際の「御殿」は漁師たちの宿を兼ねた、大きな作業場といった感じです。

 

左:鰊御殿内部   右:展示物に見入る

家としては確かに大きいし、絶景の地に建っていますが、御殿と呼ぶには確かに抵抗があります。それはそれとして、200円の入場料を払って入ってみればなかなか興

味ある展示がありました。目の前の浜がニシンで白く埋まった夢のような時代があったのですね。

(どうしてもここで「石狩挽歌」のメロディーが頭に響きます)

 

鰊御殿を出てまだ午前10時。小樽での目的が二つとも達成したので、次の宿・富良野を目指して走り出します。

(ワインは、ガラスは・・という関係者のつっこみは無視します(^^))

 

小樽−富良野間は、道央自動車道で旭川周りにすれば楽です。しかし時間はたっぷりあるので、高速を使わないルートで行くことにしました。

札幌の混雑を避け、337号で石狩方面へ向かいます。

石狩−江別−岩見沢と通って芦別で山越えするつもりです。

しかし、これはなかなか辛いコースでした。

 

まず、337号はまったく退屈な道でした。道東のなだらかな丘と牧場の続く異国情緒あふれる景観と違い、水田に稲穂が揺れる風景は、悪いとは言いませんが、どこにでもある風景ですから退屈してしまいます。

おまけにダンプが多いのです。地元の車はまだしも、ゼネコンおやといの建設ダンプは運転が荒っぽいのです。沖縄でも同じことを感じました。

沖縄・北海道は開発名目の工事がやたらに多く、そこに巣食っているゼネコン関係者もいっぱいいるのですね。

ろくにハンドル操作もいらない直線の続く道路を走りつづけていると、思わずコックリコックリしたくなってきます。江別までの道は睡魔との戦いでした。

 

江別から12号に乗り、12時過ぎ、やっと岩見沢に着きました。ここで昼食にします。

岩見沢というのは大きな街で、駐車場所にも苦労する感じです。NHKそばの駐車場に車を停め、料金所のおじさんに「いい寿司屋はありませんか?」と尋ねます。

おじさんはすぐ側の「清寿司」を教えてくれました。

(なにも道央に来てから寿司にしなくても、というつっこみは無視・・・だって、時間が合わなかったんだもんね)

清寿司で、私たちは「握り・竹」1500円と、「チラシ・梅」1200円を頼みました。どちらもイクラがたっぷり入っていて、値段のわりにはうまかったと思います。

 

腹ごしらえを済ませて、いよいよ山越えです。

三笠インターの下を通って県道116号を桂沢湖へ向かいます。晴れていた空はいつのまにか曇り、山道に雨が降り出しました。

えんえんと続くワインディングを制限時速プラスアルファで走っていると、後ろから白いスカイラインGTがあおってきます。スカG、でっかいウイングを付けています。まるで空でも飛びそうなやつです。

デミオで対抗するわけにはいかないのですが、エスケープゾーンがないので道を譲ることが出来ません。そのまま走って行くと、前にファミリアがのろのろ走っていました。スカGとデミオはそこでスピードダウンです。しばらくそうして走っていると、スカGは、後ろからバシバシとパッシングを光らせ始めました。それは数分間続いたでしょうか。

右手に湖水が見え、パーキングの表示がありました。ファミリアとデミオは2台そろってパーキングの入り口に飛び込み、スカGはドヒューンという爆音をたててすっ飛んでいきました。

桂川湖で一枚写真を撮り、さらに先へ進みます。美唄富良野線はきれいな道でした。空知川を渡り、やっと富良野です。

 

まだ2時半なので市役所の駐車場にデミオを停め、富良野の町をぶらつきます。ぱらつく雨の中、本通りを駅の方へ歩いていくとずらりと露店が並んでいます。タコヤキ、イカ焼き、サボテン売り、オモチャに定番のヤキソバ、焼きトウモロコシ・・・子どもたちがはしゃぎ回っています。聞いてみると富良野神社の祭礼だということでした。

屋台

ちょっと得した気分です。

(買い食いはしなかったけど・・・)

 

露店を一回りしてから、戻って富良野物産センターに入ります。

ラベンダーにちなんで紫の飲食物が多いのですが、ほとんどどれにも有害そうな赤い色素(赤色1号・2号)が入っています。なにも色にこだわる必要はないと思いますが・・・

結局、小物を数点買って外に出ました。

小雨にけぶる富良野は、夏の終わりの気配がして、物寂しく見えました。

 

ノース・カントリー・ホテルに入ったのは5時でした。

名前の通り木造の丸木小屋風の建物で、ホテルというより民宿みたいです。部屋に入ると、これまた民宿以下、せまくて何の設備もついていません。

窓の外は雑草の茂る駐車場で、殺風景としか言いようがありません。

私もかみさんも、山小屋で寝泊まりしたこともあるし、もっとひどい所もいっぱいあるさ、ゆっくり眠れさえすればそれでいいや、とすぐ諦めます。

ホテル玄関

(この後、しるばぁ男爵に無事富良野到着の電話を入れると、留守電になっていて、

「お兄ちゃ〜ん、電話だよ〜・・・あ、お兄ちゃんは今電話に出られません」という変てこなメッセージが流れまして、笑ってしまいました。)

 

ともかく、疲れた体を風呂で休めます。温泉ではないものの、二人くらい入れる露店の浴槽がありました。景色は雑草しか見えないのが残念ですが、少しは開放的な気分になれます。

ワインディングを走って右腕と右肩が重く感じます。

「歳だなあ・・・」とつぶやきます。

夕食はフランス料理風で、牛刺しに始まり鮭のソテーと続き、牛ヒレのステーキがメインディッシュでした。

 

食事のあと、かみさんは疲れたらしくすぐ寝てしまいました。まだ7時です。

私は手持ちぶさたで、夕べの残りの酒をちびちび飲みながら地図を見ていましたが、やっぱり9時前には寝てしまいました。

 本日の走行、240キロ(通算360キロ)

       *      *      *

三日目は、さすがに早く目が覚めました。午前5時。

朝食は7時半なので、しかたなく散歩に出かけます。殺風景な道の遠くに富良野ニュープリンスホテルが見えます。

道を歩いても見るべきものはなさそうなので、山の方へ斜面を登ります。ネットをはっただけのゴルフの打ちっぱなしがあって、道のそばにティ・グラウンドが並んでいます。人もいないし、勝手に誰でも遊べそう。

木工のアトリエだったらしい山小屋風の家がありますが、人の気配はなく、荒れています。誰かの夢の後でしょうか。

左手の広い斜面は元は畑だったのでしょう。今はぼうぼうと雑草が生えています。ここで農業をやっていくのも大変なのでしょう。でも、もったいないな、と思います。

民宿が並んでいる場所まで行って、坂道がきつくなってきたので戻ります。本道に帰ってくると、アベックがいて、写真を撮ってくれと言います。何にもない景色をバックにお互いに撮り合いました。

ホテルに戻り、新聞を読んで時間をつぶし、7時半に食堂に行ったら、行列が出来ていました。これだったら、時間前に来て並んでればよかった・・・

朝食は洋風バイキングで、薄味でおいしかったです。

 

今日は夕方の札幌オフに間に合わないといけないので、さっさと出かけます。午前中に北海道のハイライト、上富良野から美瑛にかけての花見を済ませようと思います。

38号を逆走、237号に入ります。

「5年前と変わってるかなあ、変わっていないかなあ・・・時期もずれてるし、花があるかどうか・・・」と少し心配です。

上富良野駅を過ぎたところで、前に泊まったホテルを発見しました。

富良野ホップス」です。

観音像と同じ敷地で、十勝連山を望むきれいな丘の上にあります。ホテルの窓からの眺めもすばらしかったのです。懐かしくて、思わず駐車して丘を歩いてしまいました。

この次来るときは、絶対このホテルを指定しようと思います。

富良野ホップスの丘

美瑛町に入り、午前中なので比較的空いている道を走って行くとカンノファームが見えました。前よりは小さいようですが、紫の花があります。

道の反対側でもあり、ガソリンを給油する必要もあったので、通り過ぎて北美瑛まで進みます。

最終目的の「ぜるぶの丘」にも花があるのを確認し、交差点で給油してから引き返します。「ぜるぶの丘」は5年前のひまわりに変わって、コスモスが咲き乱れていました。ビクトリア(遅咲きラベンダー)を含めた花壇もありますが、あまり大きくはありません。

それより、店の裏の芝生が目に美しく、芝生の先には池があって水蓮が咲いていました。意外だったので、これも得した気分です。

 

左:水蓮を見る    右:ひまわりの種をむしる

かみさんは、数少ないひまわりの花にとりつき、種をむしりとっていました。

 

さらにカンノファームまで戻り、ビクトリアや他の赤や黄色の花々を楽しみます。次々と観光バスがとまり、人々が降りてくるので、丘はたちまち観光客でいっぱいになりました。(自分もその一人なんだけど)

かみさんは丘の稜線を歩きます。

「前は柵があって、山羊がいて、干し草の上で写真とったよね」

と言うのですが、今はその時の形跡はありません。遠くの干し草は茶色に枯れています。

数枚の写真を撮り、小物を買って先へ進みます。

カンノファーム

来るときに道から見えた大きなビクトリア畑を目指して脇道に入ります。

回り道して着いたところは、入場有料の「フラワーパーク」でした。ここはヘリコプターまで飛ばす、大きな観光産業花工場という感じの所でした。当然、私たちは入らずに戻りました。

「ラベンダーの森」とか、他にも行きたい場所はありますが、時間が少ないのでやめにして、夕張経由・札幌目指して237号を南下します。

 

南富良野町を過ぎ、金山峠を越え、湯の沢温泉らしいところに来ました。

時間は12時、空腹感も感じてきました。

道路標示に「占冠(しむかっぷ)市街」と書いてあるのがおかしかったです。

「占冠って、村だよね・・・市街地って言うのかな?」

 

市街地に入る前に「占冠物産センター」という建物の二階が食堂だったので、車を停めて入りました。

食堂はまったく普通の食堂で、さすがにこの山の中では北海道らしい食事というのは難しいようでした。私たちはおとなしく、生姜焼きとチキンのトマトソース煮定食を頼みました。

食堂は普通でも、ここの物産センターはけっこう充実していました。

赤色1号・2号で紫になっている富良野のおみやげと違って、素朴な独自の色合いのものが沢山ありました。

かみさんは「よもぎ羊羹」などを買い、私は竹の皮で作った梟の人形を買いました。

 

物産センターを出て、少し走ると占冠「市街」が見えました。

占冠中央交差点ですが、数個の建物が並んでいるだけ。西部劇の書き割りみたいな街でした。

この交差点を右に曲がると夕張への近道です。でも、曲がったとたん、不吉な予感がしました。前後に一台の車も走っていません。

「貸し切り道路だね・・・これが突然ダートになったりして・・・」

私がそう言ったとたん、道は未舗装のジャリ道(ダート)に変わりました。戻って274号まで進もうかとも思いましたが、これも話の種だと思い、先へ進みます。左側にはバンケニウ川の美しい流れがあります。

 

ダートは延々と続きました。80キロでとばしていたさっきまでと違い、せいぜい50キロしか出せません。スピードオーバーすれば谷底へ転落する事になりかねないからです。

一方、これ以上快適な道はないほど、緑がきれいです。緑陰にもれる日差しがキラキラと輝き、川の水は空の色を映して青く光っています。

「3年分の森林浴だね」

「オープンカーだったらよかったのに」

そんな会話を交わしました。

道道610号に入ってもダートは変わりません。結局、30キロの道を1時間かけて走りました。デミオは車高が高めで、未舗装の道も底着きすることなく走ることが出来ました。

えんえん続くダートとバンケニウ川 

福山でようやく274号に乗り、舗装道路に復帰します。

紅葉峠を越えると夕張ですが、市内見物はまたにして、内輪で話題になっていた「ハイジ牧場」に向かいます。

牧場のそばのマオイ・道の駅に着いたのが午後3時、しるばぁ男爵に電話を入れて、ハイジ牧場に入ります。

・・・実は牧場がどう見ても貧相だったので、入ることをためらったのですが、結局話題作りのために入ることにしたのです。

 

左:山羊と語る    右:牛舎

たくさんの動物たちがいました。山羊・牛・馬など家畜だけでなく、数種類の犬、ダチョウ・孔雀などの鳥類、カンガルーに白犀までがいました。

「これだけの動物、冬は大変だねえ」

「こうして公開できるのも春・夏の短い間だけじゃないかな」

動物たちの疲れた様子と手入れされていない畜舎を見ていると、いやでもそう考えざるをえません。

機関車「ヨーゼフ号」が走りますが、客は誰も乗っていません。坂の上の公園部分を見ると「シンデレラ城」「オランダ風車小屋」のミニチュア、「ハイジ砦」なる迷路などがあります。どれもペンキがはがれ、わびしい気分に満ちています。

 

左:ヨーゼフ号   右:ミニ建造物

「子どもを遊ばせるぶんにはいいけど、このへんでどのくらい学校があるかなあ」

と、かみさん。例えば千葉のマザー牧場なら、関東の大都市圏周辺で客には困らないでしょうが、(暖かいし)この土地では採算が成り立つかどうか、難しいものがありそうです。

 

ハイジ牧場でしんみりして、北海道最後の地、札幌へ向かいます。

 

午後4時、ハイジ牧場をあとにした私たちは、もたつきながらも274号から国道36号に入りました。そのまま直進すれば札幌市内中心部に入ります。まだラッシュアワーには早いかと思いましたが、もたつく間に時間が過ぎ、豊平区に入ったあたりから混雑が始まりました。

信号2回待ちでも渡れないようなラッシュです。裏道を行こうかな、と思いましたが、初めての街で迷ったりしたら、それこそアブハチ取らずで、遅れた上に目的地にも着けないことになってしまいます。

じっと耐えていると、豊平川を渡ったとたんに流れるようになりました。

 

ホテル到着は予定の5時を5分だけ過ぎていました。

札幌国際ホテルは、名前に比べると小さなホテルです。でも、アールデコ調のデザインはなかなかシックです。回転ドアもついています。私たちは立体駐車場にデミオを収め、フロントに回ってチェックインします。

部屋は6階で、並みのツインよりは一回り小さい感じです。眺めと言っても、周りのビルの壁が見えるだけです。それでも二日間の合宿所みたいな部屋に比べればずっと快適です。ユニットバスも付いています。

とりあえず、バスタブにお湯を満たして急いで入ります。シャワーだけよりも、少しは疲れが取れるかもしれません。今日の山越えも腕が疲れました。

 

身支度をしてロビーに降りて待っていると、窓の外にしるばぁ男爵と美穂さんの姿が見えました。両手にいっぱいのお土産を持っています。

メロン、地ビール、お菓子、その他です。

持って歩くのも大変なので、挨拶もそこそこにお土産を部屋へ上げに戻りました。美穂さんに兄の土鈴を渡しますが、代金を払うと言ってききません。謝絶するのも客としてどうかと思い、受け取りました。

気前のいい、鷹揚なお二人に感謝です。

 

「札幌オフライン」の会場は、ホテルからまっすぐ一本道を歩いて行く居酒屋「いろはにほへと」でした。

音に聞こえた繁華街ススキノのほぼ中央を歩いて行くと、風俗店と一般商店がごちゃごちゃに並んでいます。中には「インターネットのアダルトホームページ見放題、1時間千円」などという店もあります。どういう店なんだろう、とお互いの推測を述べ合ったりしました。

 

「いろはにほへと」に入り、とりあえず乾杯します。

美穂さんはハイサワーを、他の三人は生ビールを飲みました。最初はぎこちなかった四人の会話でしたが、お酒が回り、メートルが上がるにつれて盛り上がりました。

ワインボトルを2本開け、その上私とユミ子で日本酒をガブガブ飲みました。

つまみもバクバク食べているのは私たち夫婦で、向かいの二人はほとんど手を付けません。代わりのようにタバコをバカバカふかします。

パソコンやインターネットの話が中心でしたが、次第に快気炎を上げたのは美穂さんで、後半は彼女の独壇場でした。

「お泊り確定だな」

しるばぁ男爵が腕時計を見ながらつぶやきますが、帰ろうとはしません。話はとめどもなく盛り上がり、午前1時の閉店時間となって「蛍の光」が響いてきて、やっと収まりました。

左から・しるばぁ男爵・美穂さん

表へ出ると激しい夕立です。傘をさしても両肩がぬれてしまうほど。

「じゃあ、おいら、美穂ねえを送っていくから」

しるばぁ男爵が手を振り、私たちも「二人とも帰れるのかなあ?」と心配しつつ反対側に歩き出しました。

歩いていても雨は激しくなる一方で、ビニール傘一本の私たちはたまらず閉店した飲み屋のビルで雨宿りします。5〜6分して、雨脚が衰えたところでビルの入り口から歩き出しました。

その夜は、なんだか興奮してなかなか眠れませんでした。

       *      *      *

最終日、目覚めたのは7時ころでしたが、なかなかベッドを離れられません。8時近くなってようやく這い出し、風呂に入って身支度し、地下の朝食会場(夜はショーをやるパブ)で和食を食べました。

かみさんは夕べの酒が残っていてほとんど食べられません。

 

9時半にチェックアウトし、車を出しますが、このホテルは宿泊客からも駐車料金を取りました。以前行った盛岡ホテルでもそうでしたが、せこい話なので、私的にはブラックリストに載せてしまいます。

フロントで「北海道の物産センターみたいなものありませんか?」と聞いたところ、

「ススキノ市場なんかよりは、中央市場に行ってみれば・・・」

という返事だったので、北上して中央卸市場へ向かいました。

 

市場はすぐ見つかりました。しかし、すごい混雑です。

大型トラックが道を二重・三重にふさぎ、自走式の台車が市場へ向かう小売商を乗せて洪水のように流れています。「一般車進入禁止」の札もありました。

やむなく、そばにある場外市場へ回りました。共栄水産という店の前で、「駐車場ありませんか?」と聞くと、「そこに停めていいよ」とのことなので、店頭に駐車して店の中を覗きました。

まず、花咲蟹を品定めします。まずまずの大きさ、まずまずの値段です。

店員が黒くなりかけたのを薦めると、かみさんが文句をつけて、奥の方から別のを引き出しました。重さを量るようにして、「これ、どう?」と聞きます。メスで、卵を持っているようです。メスの方が身が詰まっている、という話だったので、それに決めました。3キロ近くで1500円でした。

(後から全日空の通販パンフを見たら、このクラスは倍の3000円でした・・・まあまあかな?)

 

蟹を保冷ケースに入れてもらう間に、九州と新潟に送るメロンを品定めします。5個セットで6000円、4000円、3000円、とありますが、どれも見分けがつきません。生産地と大きさで値段が決まるそうですが、微妙な問題のようです。素人にはわかりません。

結局、中クラスのを二個づつ送りました。どちらも送料の方が高かったようです。

(なま物・壊れ物として特別便で送るそうです)

 

親孝行をすませ、肩の荷を下ろした私たちは、残りの時間を自由に使えます。でも、集合時間は午後3時ですから、たいして残っていないというのが実態です。

とりあえず札幌市街が一望できるところに行こう、という事になって、円山公園に向かいました。緑深いジャングルのような公園の途中に、円山動物園がありまして、ちょっと覗こうか、と思いましたが、駐車場が有料だったのでやめました。そのまま走って行くと山の上に来ました。展望台はなくて、かわりに大倉山シャンツェがありました。ジャンプ台の上に登れば札幌市街は一望でしょうが、工事中でした。

意外に狭い所だと感じました。その次に迷い込んだ宮之浦シャンツェの方が広く見えました。

 

車が多く、交通マナーも悪いので市内では落ち着けない、と思った私は南下して真駒内公園に行きました。スケートリンクのあるところです。

ここは静かで芝生も花も美しく、風も涼やかでした。夕べの雨で芝生が濡れているのが残念でしたが。

ベンチでぼんやりしていると12時近くなり、北海道最後の食事に向かいます。36号に入り、見つけたのは道産子ファミレス「北海道楽」です。ここで私は天ぷら・刺し身定食、かみさんはネギトロ巻定食を食べました。かみさんは「食欲がない」と言っていましたが、うまかったのでけっこう食べました。

 

あとはひたすら千歳を目指します。またも雨が降ってきました。おまけに雷も鳴っています。前後左右をダンプに囲まれて嵐の中を走るのは気分のいいものではありません。

ようやく雨がやんだころに千歳駅そばのレンタカー営業所に着きました。

飛行機は10分遅れただけで無事出発、暑い関東へ帰ってきました。

メロンも地ビールもうまかったこと、花咲蟹もうまかったけど、足が一本欠けていたこと、などは余談です。

(おわり)

戻る

トップへ戻る