チラシ:

画像はバーン・ジョーンズの

天地創造の日々・第5日

  「ウィンスロップ・コレクション」

2002年9月某日、上野の国立西洋美術館へ出かけました。
午前11時自転車で駅へ。常磐線経由11時50分に上野駅公園口着。
久しぶりの西洋美術館です。いつもの通りにロッカーに荷物を置いて「ウィンスロップ・コレクション展」に入ろうとしますが、入口が分かりません。一階にあるのは出口で、入口は階段下にあるのでした。ちゃんと書いておけよ、と言う感じです。ガードマンに聞いたけど、ガードマンもよく分かっていないらしく、「そっち」と奥を指差すだけでした。

私は美術展ではいつも前書きや解説などはまったく読まないで、シンプルに絵画を眺めることに徹するのですが、この「コレクション」に関しては素性がよく分からないために、とりあえずその正体を探るべく読んでみました。
するとどうやら『グレンビル・ウィンスロップという金持ちが、金にあかして集めたコレクションをアメリカ・ハーバード大学の付属美術館(フォッグ美術館)に寄贈したもの』のようです。どえらい金持ちだったようですが、審美眼もなかなかだったようでそれだけは評価したいと思います。
中は平日なのにかなり混んでいました。それというのも近頃これだけの展示は珍しいと思うほどの濃い内容です。分かっている人が多かったという事でしょう。

 

 

 
 


  ロゼッティ「海の呪文」

 


  ロゼッティ「祝福されし乙女」水彩

 


  モロー「出現」

 

私としてはギュスターブ・モローの大作が2点、小品が数点あっただけで感動でした。このレベルの作品はパリのモロー美術館でしか見られないでしょう。ロゼッティの代表的作品も数点ありました。これでもう満点です。
しかし、この展示会は気を利かせたつもりなのか妙なジャンルに分けられており、作者ごとにまとまって見ることが出来ません。モローならモロー、バーン・ジョーンズならバーン・ジョーンズをまとめて見たかった、というのが正直なところです。
ラファエル前派を主として、象徴主義絵画作品が多い中にアングルやジェリコー、ドラクロアなどのフランス近代絵画を混ぜているため、それに違和感を感じさせないようにテーマ別展示という苦肉の策をひねり出したとしか考えられません。それにしても似たようなテーマが並んでいるために区別がつかないのが笑えます。

そうしたヘンチクリンな構成を別にすれば、中身は最近の絵画展にしてはびっくりするくらいに歴史的傑作が揃っていました。
ロゼッティなら「祝福されし乙女(水彩版と油彩版)」「ベアータ・ベアトリクス」「パンドラ」「海の呪文」「窓辺のレディ」あたりは最高傑作群でしょう。他にも小品やデッサンがたくさんありました。
モローの方は有名な「キマイラ」「聖セバスチャンと天使」「出現(3点以上ある中の一つ)」や「ヤコブと天使」「若者と死」の大作二点。これだけでも満足なのに、「セイレンたち」「キリストの埋葬」などの小品までついているという大サービス(?)です。


  モロー「ヤコブと天使」

 
バーン・ジョーンズやJ・E・ミレーホルマン・ハントについては一々あげません。この他にもブレイクリケッツビアズリーの版画、F・ワッツS・ソロモンが目に付きました。いっそ「ウィンスロップ・コレクションのサンボリズム」として、こちらの作品だけを集めた方がずっと楽しめたと思います。アングルがいないと集客力に自信がなかったのかもしれませんが……。
そのアングルとモローはともかく、他のフランス画家たちはまったく違う雰囲気を持っていて全体の構成を壊していたことは言うまでもありません。


  バーン・ジョーンズ「パーンとプシュケ」

 
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