質問39 「はじまり」演奏上のポイントは?

 「はじまり」を今回始めて歌うことになりました。とても美しくて雄大な曲だと感じました。漠然とした質問になるのですが、この曲を歌うとき、どのような点に注意して歌ったらよいのですか?

はじまり 福岡県

解答 

  「はじまり」のポイントを簡単におさえると「序での無伴奏のハーモニーをきっちり決めること」「8分の6でピアノ伴奏が刻みはじめても、メロディだけに気をとられず、たえず声部の音量バランスを考えること」「フレーズが長いので、べたに歌わずどこが山か絶えず意識して、山に向けて気持ちを盛り上げること」「71〜84小節間はもっとも堂々とした密度の濃い響きで」「曲調が一瞬で切り替わる所のメリハリを効果的につけて」あたりでしょうか。

「序での無伴奏のハーモニーをきっちり決めること」
 序のハーモニーで
一番大切なのはバスの支えです。Dの音程がしっかりしないと全体がハモリません。中学生くらいだと男声が安定していないので大変かもしれませんが、自分の声部だけ横に歌うのでなく、一小節ごとに変化する和音の中での自分の響きの位置を確認することが大切です。だからパート練習だけでなく、全員そろって縦の響きをひとつずつきちっと決める練習が必要です。根気がいりますけどね。無伴奏で、しかもpで歌い始めるのはこわいですから、どうしても萎縮してしまいがちですが、豊かなpの響きは大変難しいので、最初のうちは「小さく」と思わず「やわらかく」歌ってみましょう。

「メロディだけに気をとられず、たえず声部の音量バランスを考えること」
 
ピアノ伴奏が入ると、だいたいメロディ・パートの人が張り切って、内声はひっそり後ろにまわる、となりがちですが、この曲は特にハーモニーの厚いのが特徴なので、とりわけアルトやバスが正確なピッチで、たっぷりした音量でハーモニーを支えることが大切です。もちろんメロディより内声が大きくては逆の意味でバランスが悪いので、メロディがほどよく浮かび上がりつつ、低音の支えの効いた豊かな響きに聞こえるよう3〜4声の音量をいろいろ変えて、どうやったら密度の濃い豊かな響きになるか、試してみると良いでしょう。バランスひとつで驚くほど響きが変わります。

「フレーズが長いので、山に向けて気持ちを盛り上げること」
 
メロディを歌うときは思わず身が入ってしまいがちですが、いつもfで歌ってしまうと自分の熱い思いとはうらはらに、聴き手には変化のない平坦な演奏に聞こえます。大切なのは全体の構成がくっきりするように、メリハリの効いた演奏をすることです。一番たっぷりした音量で歌う場所はどこか、どのへんからクレッシェンドするか、では開始部分ではどのくらいの音量でといった大雑把な設計図を頭に描きながら歌うと、緊張感のある演奏ができます。

「71〜84小節間はもっとも堂々とした密度の濃い響きで」
 この曲で一番いいところですが、すでにかなり歌ってきたあとなので、スタミナがいります。こういう場面こそ内声の充実が求められます。練習は最初無伴奏でやるといいでしょう。

「曲調が一瞬で切り替わる場面のメリハリを効果的に」
 
この曲ではffから一瞬でmpに切り替わる所がかなり出てきます。でもただ音量を落とすだけでは意外なほど変化が出ません。ffからmpに切り替わる時に
ブレスしますね。そのとき音色や表情を変えることが重要です。ブレスする瞬間にフライパンを天地返しするような感じで自分の気持ちを切り替えてみてください。そういう意味で「ブレス」は単なる息継ぎの場所ではなく、音色や表情にメリハリをつけるために実に重要なポイントなのです。

2003.7.31