質問30 「春は来ぬ」(『春二題』より)に関する2つの疑問

 「春は来ぬ」の中盤、「樹々の梢を染めよかし」の所の、「を」と「そ」のあいだでブレスをしてはまずいでしょうか?2連符なのであまりしない方がいいのですが、息が続かないので・・。また、私はソプラノ2(女声四部の)なのですが、「樹々の梢をそめよかし」のあとに、「春は来ぬ」がたくさん繰り返されています。繰り返すごとに一つずつ何かを変えていくべきなのでしょうか?                                  大阪府 みのみの

解答 
 私の曲はワン・フレーズが長いので、どうしても休符まで息が持たないときは、音楽的におかしくない場所でしたらブレスを入れていただいて結構です。その場合、ブレスを入れたのが聴き手にわからないようにカンニング・ブレスにするか、みんなで揃えてブレスするかは、皆さんで相談なさって決めてください。統一のとれていないばらばらのブレスというのが一番よくないので。

 ご質問の「樹々の梢を」「染めよかし」の間でブレスしてもいいかということですが、
Sop2だけでしたら「染めよ」のあとでブレスするという手もありますが、ここではSop1といっしょに動いていますね。Sop1は「染めよかし」の「し」の音をかなりキープしなくてはなりませんから、「樹々の梢を」の後でブレスしておかないときついでしょう。Sop1がここでブレスするのなら、いっしょに動いているSop2だけ延びているのはおかしいので、そろえてブレスするほうがいいでしょう。

 「染めよかし」のあと52小節からは、ご質問の通りSop2が「はるはきぬ」を7回!Altoも「はるは」「はるはきぬ」「はるはきぬ」「はるは」と同じような言葉を何度も繰り返します。同じ言葉を繰り返す場面では、音楽が盛り上がりを見せることが多いのですが、この場合も「はるはきぬ」を繰り返す8小節の間に、pからfまでドラマチックにcresc.していきますね。「はるはきぬ」という言葉の意味はもう聴き手に伝わっているはずですから、さらに一回ごとに強調するとうるさくなります。言葉はごく自然に歌って下さい。それよりも、Sop1のメロディを支えつつ、じわじわとテンションを上げていく気持ちが大切です。「繰り返すごとにひとつずつ変えていく」というより、ひとつずつ積み木を重ねていくように、1回目より、2回目、さらに3回目と、だんだん気持ちを高めていくという感じで歌ってみてください。これはAltoも同じ事です。ここでのメロディはSop1ですが、Sop2とAltoの内声、低声が充実することによって、はじめて8小節間のcresc.が効果を現しますので。

2002.8.26