質問29 「ネロ」(「地平線のかなたへ」終曲)における促音の扱いは?

 「ネロ」の出だしでソプラノの歌う「もうじき又夏がやってくる」というメロディは、その後も何度か再現されますが、最初ソプラノが受け持つメロディでは「や」と「っ」が「付点八分音符」と「十六分休符」に分かれているのに、次に37小節(Tempo I の所)でテノールが同じ主題を再現するときには「八分音符」と「八分休符」という割り方になっています。それには意味があるのでしょうか?それとも誤植なのでしょうか・・?
 次に基本的なことですが、この曲では促音の「っ」が休符に付いていることがとても多いですが、それはやっぱり言葉を十分に聞かせるために音を延ばすという指示ですか?

 富山県 メレア

解答 
「Q&A」コーナー常連のメレアさんからのご質問ですが、さすがチェックが細かい。最初のご質問、ソプラノとテノールで同じメロディなのに記譜法が異なることに関してですが、んん、これは作曲者が書法を統一しそこなっただけですね。テノールも「や」は付点八分音符、「っ」は十六分音符で割るのが正解です。もう10版以上しているのに、今まで誰も指摘してくれなかった・・。次の版で直すようにします。

 この曲に限らずいつも促音の扱いには苦労します。私の場合、促音はなるべく短いのが好み。促音が長くなると、メロディラインに穴が開いて音楽が痩せるので、言葉の意味がはっきり聞き取れる範囲で「やーーってくる」のように促音の前のシラブルを長めに歌って欲しいのです。「ネロ」を書いた頃までは、それをなるべくリアルに音符と休符の長さで指示し、休符の長さ分だけきっかり促音を発音してもらおうと努力していたのですが、それでは却って歌いにくいし、混乱を招くことに気付いたので(自分の意図とは逆に、極端に促音を強調されて「やっっっってくる」みたいな歌い方をされて戸惑うことも多い)最近は歌い手に任せたほうがいい結果が得られるということで、結局休符を入れない書き方(四分音符の下に「やっ」と書く方法。)に戻ってきました。作曲家だって試行錯誤を重ねるので、年月とともに、楽譜の書き方も微妙に移り変わっていくものなんです。

 ちなみに今年のNHK課題曲「なぎさの地球」にも促音がたくさん出てきますが、ここでもなるべく促音は短めに歌ってほしいので、休符を入れない上、「やーっ」という風に促音の前のシラブルに「のばす」指示までしてダメ押ししています。でも、もちろん促音が聞こえなくては困るんですよ。「やーてくる」ではなく「やーってくる」と効果的に短く促音を歌うようになさってみて下さい。

2002.8.5