質問27 合唱における3連符の演奏法は? 木下作品で好きなところは、盛り上がる時やフレーズ末などで1パートが高音等で伸ばしている際、下のパートの和声が先生ならではの進行で変わっていく所です。ぞくぞくっと来てたまりません。それとともに、声部パート&伴奏パートの3連符の用い方が好きです。個人的には、拍子と異なる連符が出て来た場合、自然と「ことば」を意識してしまったり、多少リズムを強調してしまったりしますが、先生は曲作りに際し、3連符をどのような意識のもとに用いているのですか?特に狙っている効果や演奏方法等がありますか? 神奈川県 匿名希望 解答 ピアノパートに三連符を用いてもそれは一拍に入る音の数が一つ増えるだけで、演奏法が変わったりはしませんね。「三連符の時だけテンポが速くなってアクセントがつく」なんてことはありません。でも合唱では匿名希望さんもおっしゃるように、かなりの高い確率で、三連符のリズム、シラブルをいつも粒立たせようとします。はっきり三連符のリズムを強調している部分ならともかく、かなりレガートに歌って欲しい場面でも三連符だけが奇妙にコキコキ立ってしまう感じです。おまけにテンポが走りがちです。ほとんどの合唱団がそうなので、声楽では三連符がものすごく演奏しにくいのだろうと、半分諦めにも似た気持ちでいるのが正直なところです。でも声楽のソロだと三連符だけ突出してしまうことはほとんどありません。合唱に、とりわけ男声に多く見られる症状といえます。 私が三連符を使うのは、だいたい次の2つの理由のどちらかです。 もうひとつは言葉をまとまりとしてメロディーと連動させたい場合。 でも実際は皆さん、あらゆる場面で三連符を強調する癖があって無意識にアクセントをつける上テンポが走るので「こっざっかっなっのっ」というように、肝心の音の実体は飛んで慌ただしい促音だけが残りがちです。たぶんこれは三連符の奏法が難しいというより、どういう場合にも持っている弱点が、三連符では特にはっきり出てしまうということではないかと思います。 その弱点とは、音楽を流れでとらえず、いつも縦割りに考えている、ということではないでしょうか。縦に三連符を揃えるのは大変という思いが強くて、いつも力が入ってしまう。でも音楽を横の流れでとらえれば、リズムとして強調すべき三連符なのか、言葉にまとまりをつけるための三連符なのかの区別がつくはず。たしかに合唱は大勢で演奏するため、縦の線を完璧に揃えた上で声楽のソロのように自在にフレーズを操ろうとしたらかなり難しいでしょう。しかしだからといって、「縦が揃う・・音楽OK」「全シラブル強調 以前しっとりした静かな曲をレコーディングしてもらったとき、かなり名の通った混声合唱団が演奏してくれたのですが、やはり男声はポクポクとした縦割りの音楽でした。ところが、私がフレーズの流れを指摘しただけで、劇的にいい音楽を歌ってくれるようになったことがあります。指揮者のかたが、音楽の流れについて的確な指示を与えてあげるだけで、ぐんと大人の表現ができるようになります。音楽はフレーズが命です。 こういう話題になるとやたらヒート・アップするのが私の悪い癖ですが・・。 2002.7.25 |