質問3 スキャットの歌い方は?
女声合唱とピアノのための「ファンタジア」という曲集には、「a-」「u-」「n-」「hum-」など、スキャットの部分がしばしば出てきますが、言葉のないものに意味を持たせて表現するのが本当に難しく、歌っているほうが時として飽きてしまうというか、だれてしまうというか。この頃はちょっとだけ感情移入が出来るようになった気がしますが・・。全体的にスキャットをどう歌えばいいのですか? 埼玉県 M.N. 解答 私は長年、合唱講習会などで必ずといっていいほど、詩の解釈についての質問を受けるのをとても不思議に思っていました。なぜ、作曲家を呼んでおいて、詩の解釈なのか?曲の分析について聞かないのかとね。たぶん合唱の世界の常識としては、まず声を作って、次に音取りをしたら、歌詞を分析、理解することで曲の構成を把握する代わりとし、後は、その歌詞に感情を移入して、音楽を仕上げる、というのが、一般的な曲の仕上げ方なのだと思います。だから、スキャット部分で、精神的支えを失ってしまうわけです。 ちゃんとした音楽なら、歌詞なしで、全部スキャットで歌っても、曲の力で聞かせるはずなのです。だから、私は、音楽を組み立てる順序として、声を作って、音取りをしたら、音楽を歌詞なしで(ヴォカリーズで)作ってから、最後に歌詞をのせるが理想だと思っています。歌詞に頼らず、まず音楽の構成をしっかり掴み、どこからどこまでがワン・フレーズなのか、どこに向かって緊張感を高めるのか、そのときどのくらいアッチェレランドをかけるか、山をどのくらい持続させるのか、などなど。そうやって、考えながら歌うことで、音楽が動きを持つことになります。動きを持ったフレーズの流れを生かしつつ、その上に歌詞を効果的に載せていくのが理想です。歌詞に音を寄り添わせるのでなく、音楽のフレーズの流れや勢いに、歌詞をはめ込むわけです。 だから最初にもどると、スキャットであろうが歌詞付きであろうが、漠然と一音一音歌うのでなく、フレーズの流れに乗り、旋律の山に向かって緊張感を持続し、気持ちを高めていけば、間延びすることはありません。 うーん、いいたいことがありすぎて、一言ではうまく表現できないのが歯がゆいですが。 2000.6.15 |