質問2 どんな本を読むのですか

 私の友人が、木下作品の魅力のひとつに「詩の選定のすばらしさ」というのを挙げていました。詩がよくて、なおかつ曲がそのよさを損なわず、心の内側にあるものが表面に自然に現れてくる、というふうに言っていたかと思います。それを思うと、木下さんってどんな本を読まれる方なんだろう、というのも非常に気になるところなのですが、これってQ&Aでお答えいただけるんでしょうか?一応質問としてあげておきます。

奈良県 大よしこ

解答
 こういうご質問にお答えするのは、とてもこわいものがあります。本棚を見れば、どんな人間か、だいたいわかるといいますからね。だから、断片的に、全体像が見えてしまわない程度に、お答えしてみようと思います。(ちょっとずるいかな)

 まず、詩の選定が素晴らしいといっていただけるのは、とてもうれしいことです。私が詩を選ぶ基準を2つ挙げるとしたら、その詩に惚れ込むことができるか、一読したとき、頭の中に音楽が鳴るかどうかです。だから、どんなに優れた詩でも、好きになれなければ対象外ですし、どんなに好きな詩でも、音楽の介入の余地のないものは選びません。詩集は、今300冊くらい持っていて、ジャンルの偏りはあまりなく、児童詩から難解な現代詩までいろいろです。ときどき詩の専門店「ぽえむ・ぱろうる」で新しい詩集をチェックしたり、神保町で古本を探したりして、すこしずつ買い足しています。好きな詩人はたくさんいますが、いま一番素晴らしいと思うのは、蔵原伸二郎の晩年の作品でしょうか。

 この質問を下さった大さんは、きっと小説のことを聞いておられるのでしょうが、それにふれると、さらに自らを暴露してしまいそうですね。小説はほとんど節操のない読み方をしますが(一番最近読んだ小説は宮城谷昌光の「重耳」です)、ひとつ好きなジャンルを挙げるとしたら、幻想文学ですかね。ノヴァーリスとかホフマンとか。病的な熱を放つ、死と夜と夢想の世界は学生時代からずっと好きです。そういえば、昔もろに「幻想文学」というタイトルの文芸誌があって、その中で読んだ、若き村上春樹さんとか、まだお元気だった中井英夫さんのインタビュー記事は、いまでも妙にはっきり覚えています。

2000.6.9