55 京都半日散歩

 最近はどこへ出掛けても用事がすむとさっさと東京に帰ってきてしまう。広島あたりまでなら半日滞在しても日帰り可能だからだ。だが先日演奏会で作曲家のC氏と雑談したところ、氏は(私と同世代だが)今でもどこかへ出掛けたら、かならず前後に時間を作って周辺各地をまわって帰るとのこと。しかも移動時間に読む本を用意し、ホテルでの仕事の仕込みもしていくので、時間を無駄にすることはないとのお話を伺って、最近の自分の怠惰を大いに反省したのだった。それで先週神戸で用事を済ませたあと、さっそく京都に途中下車して翌日半日観光することにした。

 京都にオフで行くと好んで泊まるのがブライトン・ホテル。部屋がゆったりしているのがいいです(加湿器もついてるし)。夕食後ホテルの部屋でくつろいでいると、周辺案内のしおりが目に入った。「まだ朝靄の残る早朝の京都御苑でバード・ウオッチングを!」。これだ、ということで翌朝6時半に起きて京都御苑に散歩にいく。ホテルのすぐそばなので気楽だ。御所の庭だけあって道幅がものすごく広いうえ、丁寧に玉砂利が敷き詰めてあるので格調高いがとても歩きにくい。もっとも大通りをさけて林の中の小径などをうまく通っていけば、立派な木々に池に鳥たち、自然がいっぱいでとても気持ちがいい。それにしても敷地が広大なため苑内一周しただけで2時間かかってぐったり。

 ホテルに帰って朝食をとったら元気回復し、チェックアウトして今度は近くの京都府立植物園に行く。わざわざ京都へ来て植物園もないだろうと思ったが、ここは大ヒット!すばらしいです。冬なので花は何も咲いていないのに、園内の設計がいいせいか、木々のトンネルの中を歩くのが本当に気持ちいい。京都御苑も素晴らしいが広大すぎて途方に暮れる感があるが、ここはほどよくまとまり、鳥の声も身近に感じられる。それでいて立地がいいので、周囲の山々が見渡せて広々と開放的。道の両脇の木々の葉がアーチを作り(特にクスノキ並木がすばらしい)空気のオゾン度がとても濃厚。さわやかに通り抜ける空気の味が違う。木陰が多いので夏行ってもさぞ気持ちいいだろう。

 

  植物園の入り口にあるキュートな「月夜の力士」像       気持ちいいクスノキ並木

入場料と別に熱帯植物館の入館料が200円かかるが、ここも見所あるので立ち寄る価値は充分あります。

  

 感動しつつ外に出ると、そこは賀茂川沿い。ここでまたまた大感動。ゆったり流れる賀茂川の北側も東側も広々開けて向こうに山が見える。こんなに気持ちいい河原があったとは。

 ユリカモメがたくさん浮かび、ヒドリガモもいる。ときどき大サギが中洲にじっとしている。そして空にはトビが「ピーヒョロロ」と鳴きながらグライダーのように風に乗って飛んでいる。かなり低空飛行するので、羽の模様まで見えて感激。釣りをする人の後ろにのっそり青サギが立って魚を待っているのにも驚いた。ああ、こんないい光景が広がっているのにちゃちなコンパクトカメラしか持ってこなかったのが悔やまれる。

 

 そんなこんなで川沿いにかなり歩いてしまい、気づくともう足が棒のようだ。京都駅に直行しようとタクシーを捕まえ、乗ってやれやれと思ったのもつかの間、運転手に「お客さん、ここまできたら下鴨神社見とかなきゃだめだよ。」と強引に勧められて再び北上、神社前でおろされる。泣く泣く重い足を引きづって神社へ参拝。

 糺の森という有名な原生林で、京都で一番おそく紅葉が色づく森とのこと、今がベストシーズンらしく京都のカメラ小僧が集結していたが、私はすでに京都御苑と府立植物園で紅葉をたくさん見ているので、感動より足の痛さが勝って人魚姫のごとく一歩一歩痛みをこらえながらよろよろ参道を往復したのだった。半日で10キロは歩いたと思う。次は絶対ウオーキング・シューズと望遠レンズを持ってこよう。

2004.12.18