図書館員のコンピュータ基礎講座

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大容量記憶装置

ここでは、主にサーバなどのバックアップや補助記憶媒体として用いられる大容量記憶媒体(Mass Storage Media)をご紹介します。
この用途には、主に磁気テープ(Magnetic Tape)が用いられます。これは、ディスク型の媒体に比べ記憶容量に対する価格が安価であるという理由によります。しかし、磁気テープには、読み書きの速度が遅く、ランダム・アクセス(データの特定部分へのアクセス)が不可能であるという欠点もあります。

記録方式とリール

【2006-09-13更新】

磁気テープの記録方式には、ヘリカル・スキャン(Helical Scan = ヘリカル走査)とリニア(Linear)があります。
ヘリカル・スキャン方式は、テープの走行方向に対して斜めにヘッドを傾けてデータを記録します。ビデオ・テープでも採用されている方式で、高密度な記録が可能です。
リニア方式は、テープの走行方向に対して直線的にデータを記録します。一般的なオーディオ用のカセットテープでも採用されている方式で、高速な読み書きが可能で、耐久性にも優れています。

ヘリカル・スキャン方式 ヘリカル・スキャン方式
採用規格:AIT8mmデータカートリッジDDS/DATDTF
リニア方式 リニア方式
採用規格:MTCGMTVXADLTLTOQIC/Travan

多くの規格では、磁気テープはカートリッジに収められています。カートリッジ内にテープを巻きつけるリールの数には、1リールのものと2リールのものがあります。

MTとCGMT

【2006-09-13更新】

大型コンピュータでは、1950年代から1/2インチ幅(12.65mm)のオープン・リール磁気テープ(Open-reel Magnetic Tape)が標準的に用いられてきました。コンピュータ業界で、単に磁気テープやオープン・リール、MT(エムティー;Magnetic Tape)、ハーフインチ(Half Inch)と言えば、通常はこのテープのことを指す場合が多いです。MARCデータの多くは磁気テープで頒布されていました。長さは、2400フィート(リールの直径約40cm)、1200フィート(リールの直径約25cm)、600フィート(リールの直径約15cm)のものなどがありました。現在では、ほとんど使用されていません。
また、1984年にIBMが1/2の磁気テープを4×5インチのカートリッジに入れた3480という規格を開発しました。いくつかのバージョンが発表され、それらをIBM 3480ファミリー(アイビーエムサンヨンハチゼロファミリー;IBM 3480 Family)と呼びます。IBM 3480ファミリーは、後により高速かつ高密度なIBM 3590ファミリー(アイビーエムサンゴーキュウゼロファミリー;IBM 3590 Family)に取って代わられました。これらの規格および互換規格の磁気テープをカートリッジ磁気テープ(Catridge Magnetic Tape)と呼びます。英語の省略形はCMTですが、オーディオ用のテープを使用したものと同じ省略形になるため、CGMT(シージーエムティー;CatridGe Magnetic Tape)やCT(シーティー;Catridge Tape)と呼ぶこともあります。

オープン・リール磁気テープ カートリッジ磁気テープ
MT CGMT

ポイント
1980年代前半頃のパーソナル・コンピュータでは、データの記録にオーディオ用のコンパクト・カセット(Compact Cassette)を使用することもありました。コンピュータに使用する場合には、CMT(シーエムティー;Cassette Magnetic Tape)と呼ぶこともあります。また、コンピュータ専用の高密度データ・カセット(High Density Data Cassette)などと呼ばれるものもあり、大型コンピュータなどで使用されていました。形状は、オーディオ用のコンパクト・カセットテープに似ていますが、上部に約5mm四方の切り込みがあり、片面のみ使用できます。現在では、これらはデータ記録用にはほとんど使用されていません。

高密度データ・カセット
高密度データ・カセット

AIT

【2006-09-13更新】

AIT(エイアイティー;Advanced Intelligent Tape)は、1996年にソニーが開発した8mm幅の磁気テープの規格で、カートリッジに納められています。搭載されている2KBのフラッシュメモリに索引情報を保持することが可能で、データを高速に検索できます。AIT-1という規格では25GB、AIT-2では50GB、AIT-3では100GB、AIT-4では200GBの容量があり、さらに圧縮技術により約2.6倍の記録が可能です。1/2インチ幅の磁気テープを用いたSAIT-1は(Super AIT-1)は500GB(圧縮時は1.3TB)の容量があります。

AIT

8mmデータカートリッジ

【2006-09-13更新】

8mmデータカートリッジ(8mm Data Cartridge)は、Exabyte社が1987年に8mmビデオカセットをデジタル・データ記録用に改良した磁気テープの規格で、カートリッジに納められています。Exabyte(エクサバイト)やData 8(データエイト = D8)と呼ばれることもあります。初期の記録容量は300MB~7GB(圧縮時は約2倍)でしたが、Mammothという規格では20GB(圧縮時は40GB)、Mammoth-2では60GB(圧縮時は150GB)になっています。
同じ8mm幅の磁気テープの規格には、上記のAITや、1999年にEcrix社(2001年にExabyte社と合併)が開発したVXA(ヴイエックスエイ)もあります。VXA-1という規格は33GB、VXA-2は80GB、VXA-172は86GB、VXA-320は160GB、VXA-4は320GB、VXA-5640GBの容量があり、さらに圧縮技術により約2倍の記録が可能です。

8mmデータカートリッジ VXA
8mmデータカートリッジ VXA

DLT

【2006-09-13更新】

DLT(ディーエルティー;Digital Linear Tape)は、1984年にDigital Equipment社(ストレージ事業は1994年にQuantum社が買収)が開発した1/2インチ幅(12.65mm)の磁気テープの規格で、カートリッジに納められています。様々な規格が発表されており、DLTtape IIIという規格では10GB、DLTtape IIIxtは15GB、DLTtape IVは20~40GB、DLTtape VS1は160GBの容量があり、さらに圧縮技術により約2.6倍の記録が可能です。
Super DLT(スーパーディーエルティー;Digital Linear Tape)という上位互換規格もあり、Super DLTtape Iで110または160GB、Super DLTtape IIで300GBの容量があり、さらに圧縮技術により約2倍の記録が可能です。

DLT

DDS/DAT

【2006-09-13更新】

DDS(ディーディーエス;Digital Data Storage)は、1987年にソニーとHewlett-Packard社が開発した4mm幅(正確には3.8mm)の磁気テープの規格です。カートリッジに納められており、4mmデータ・カートリッジ(4mm Data Cartridge)とも呼ばれます。デジタル・オーディオ録音用のDATを基に作られたため、DAT(ディーエイティー;Digital Audio Tape)と呼ばれることもあります。DDS-1という規格では2GB、DDS-2は4GB、DDS-3は12GB、DDS-4は20GB、DAT72(第5世代からHewlett-Packard社とCertance社による開発)は36GBの容量があり、さらに圧縮技術により約2倍の記録が可能です。

DDS DAT
DDS DAT

DTF

【2006-09-13更新】

DTF(ディーティーエフ;Digital Tape Format)は、1997年にソニーが開発した1/2インチ幅(12.65mm)の磁気テープの規格で、カートリッジに納められています。同社のデジタルビデオ規格であるDigital BETACAMを基に作られました。DTF-1とDTF-2の規格があり、大きさもSとLの2種類があります。DTF-1は12GB(Sサイズ)または42GB(Lサイズ)、DTF-2は60GB(Sサイズ)または200GB(Lサイズ)の容量があり、さらに圧縮技術により約2.6倍の記録が可能です。DTF-1はISO/IEC 15731:1998として、DTF-2はISO/IEC 20061として国際規格になっています。ソニーの大容量データ保存システムであるPetaSite(ペタサイト)などで利用されます。

DTF DTF-2
DTF-1(Lサイズ) DTF-2(Sサイズ)

LTO

【2006-09-13更新】

LTO(エルティーオー;Linear Tape-Open)は、Hewlett-Packard社、IBM社、Seagate Technology社の3社が共同で開発した磁気テープの規格で、カートリッジに納められています。大容量指向のLTO Ultrium(エルティーオーウルトリウム)と、高速アクセス指向のLTO Accelis(エルティーオーアクセリス)の2種類の規格があります。LTO Ultriumは1/2インチの2リール方式で、2000年にLTO Ultrium1という規格が製品化され、2002年にLTO Ultrium2が、2004年にLTO Ultrium3が発表されています。LTO Ultrium1は100GB、LTO Ultrium2は200GB、LTO Ultrium3は400GBの容量があり、さらに圧縮技術により約2倍の記録が可能です。LTO Accelisは8mmの1リール方式で、1997年に開発されましたが、現時点では製品化されていません。

LTO Ultrium
LTO Ultrium

QIC/Travan

【2006-09-13更新】

QIC(クイック;Quarter-Inch Cartridge)は、1972年に3M社が開発した磁気テープの規格で、カートリッジに納められています。当初は1/4インチ幅(6.3mm)でしたが、より高密度な規格として8mm幅(0.315インチ)のQIC-Wide(クイックワイド)が1993年に発表されました。日本ではあまり普及していませんが、海外では人気があり、多くの規格があります。
カートリッジの大きさは、通常のデータ・カートリッジ(Data Cartridge = DC)とミニ・カートリッジ(Mini Cartridge = MC)があります。DC用のドライブは5.25インチのベイ(Drive Bay、周辺機器設置用の空間)に、MC用のドライブは3.5インチのベイに収まります。
1/4インチ幅のQICにはDCとMCがあります。QIC-WideにはMCのみがあり、QIC-Wide用のドライブではQICのMCも使用できます。
この他にも、Verbatim社から発表されたSLR(エスエルアール;Scalable Linear Recording)と呼ばれるDCサイズの大容量志向の規格もあります。
また、QIC-Wideと同じ8mm幅の磁気テープを用いた規格に、3M社が開発したTravan(トラバン)があります。大容量化のためにQICより多量にテープを巻いており、カートリッジの大きさはQIC-Wideより少し大きいですが、基本的にTravan用のドライブではQIC-Wideも使用できるため、TravanはQIC規格の一つとして扱われることが多いです。

QIC QIC-Wide SLR Travan
QIC QIC-Wide SLR Travan
参照・参考文献
<AIT> <8mmデータカートリッジ> <DLT> <DDA> <DTF> <LTO>
  • LTO [w] 2006.09.13
<QIC/Travan>
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CyberLibrarian : tips on computer for librarians, 1998-