図書館員のコンピュータ基礎講座

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マイクロフィルム

ここでは、マイクロフィルム(Microfilm)について簡単に紹介します。
マイクロフィルムは、紙文書等の情報を縮小撮影したフィルムです。一般的な写真撮影用のフィルムに較べ、高い解像力(0.2~0.5μm)を持っており、小さな面積に多くの情報を記録することが可能であるため、省スペース性に優れています。また、ISOやJISなどで標準化されており、適切な保存を行えば100~500年持つとされており、保存性にも優れています
読み取りには、マイクロフィルム・リーダ(Microfilm Reader)(プリンタ付きのものはマイクロフィルム・リーダ・プリンタ(Microfilm Reader Printer))と呼ばれる専用の機械を使用します。

マイクロフィルム・リーダ・プリンタ

フィルムの形態

【2007-05-11更新】

マイクロフィルムは、その形態からロールとシートに分けられます。さらに、ロールにはリール式のものとカートリッジ式のものがあり、シートにはマイクロフィッシュ、マイクロフィルム・ジャケットおよびアパーチュア・カードがあります。

マイクロフィルムの種類の分類

ロール・フィルム

ロール・フィルム(Roll Film)はロール状のフィルムで、リールに巻いて保管されるためマイクロリール(Microfilm Reel)などとも呼ばれます。幅は35mmと16mmのものが、長さは30.5m、40m、65.6mのものが一般的です。30.5mの1ロールに1×1.5の比率の資料を撮影した場合、16mmで約2,500コマ、35mmで約650コマを記録することが可能です。
35mmや16mm幅のほかに、主にCOM(コム;Computer Output Microfilming)と呼ばれる、コンピュータのデータを文字や数字に置き換えて記録するための105mm幅のものもあります。
また、カラー・マイクロフィルムというものもあり、銀塩フィルムと比較すると画質は多少硬調ではありますが、高精細かつ比較的安価であるため、主に貴重書などの撮影に用いられます。

35mmマイクロフィルムの画像 16mmマイクロフィルムの画像
35mmマイクロフィルム 16mmマイクロフィルム

カートリッジ式フィルム

カートリッジ式フィルム(Microfilm Cartridge)は、ロール・フィルムをカートリッジに収納したものです。取扱が容易かつ安全で、ほとんどの場合、コマの自動検索が可能になっています。

カートリッジ式フィルムの画像

マイクロフィッシュ

マイクロフィッシュ(Microfiche)は、シート状のフィルムに画像を碁盤目状に配置したものです。一般に30コマ、60コマ、48コマ、98コマ、244コマ、270コマなどの種類があります。上部に見出し欄が設けられています。

マイクロフィッシュの画像

マイクロフィルム・ジャケット

マイクロフィルム・ジャケット(Microfilm Jacket)は、ロール・フィルムを数コマ単位でカットし、透明ポケットが付いたシート(ジャケット)に入れて、マイクロフィッシュのように使用できるようにしたものです。35mmフィルム用と16mmフィルム用のものが一般的で、マイクロフィッシュと同様に上部に見出し欄が設けられています。
フィルムジャケットは、 JIS規格で5種類の形式が標準化されており、1形(16mm、5段)、2形(16mm、4段)および3形(35mm、2段)が一般的に使用されています。

35mm用フィルムジャケット(3形)の画像 16mmフィルムジャケット(2形)の画像
35mm用フィルムジャケット(3形) 16mm用フィルムジャケット(2形)

アパーチュア・カード

アパーチュア・カード(Aperture Card)は、35mmのロールフィルムのコマを1コマから数コマ切り取り、窓状に切り抜いてあるカードに貼り付けたものです。カードに情報を書き込んで整理することができ、新聞や図面などのファイリング用に用いられることが多い形態です。

アパーチュア・カードの画像

ポイント
不透明な紙のシートにマイクロ写真をプリントしたものをマイクロ・オペーク(Micro Opaque)と呼び、印画紙に焼き付けたものをマイクロカード(Microcard)と呼びます。マイクロカードは通常、目録カードの大きさと同じ7.5×12.5cmで、目録カードとの混配も可能です。読み取りにはマイクロカード・リーダ(Microcard Reader)を用い、カードに当てた光の反射をスクリーンに拡大して表示します。日本ではあまり普及していません。

マイクロ・カードの画像
マイクロ・カード

フィルムと現像の特性

【2005-03-19更新】

調子

調子は、英語ではコントラスト(Contrast)ですので、画像の明暗や色彩の差を意味します。マイクロフィルムには、一般に軟調、中間調、硬調のものがあり、さらに現像方法も軟調と硬調があります。撮影資料の特性や目的によってフィルムや現像方法を使い分ける必要があります。図書館で一般的に用いられているのは、硬調なフィルムを使用して硬調な現像を行う方法です。この方法は、文字や線が鮮明になるため、文書資料等の撮影に向いています。軟調なフィルムや現像で作成した場合は、濃淡の再現をより忠実に再現できますので、絵や写真等の広い階調表現が必要な資料の撮影に向いています。
一般的に、軟調・硬調の違いをより決定づけるのは、フィルムの特性よりも現像方法によると言われています。
実際のところ、硬調で作成したフィルムにも、かなりの階調が記録されています。マイクロフィルム・リーダ・プリンタの印刷はモノクロ2階調で出力されるため、十分な階調は得られませんが、グレースケールでスキャニングを行った場合はかなりの階調表現が可能です。ただし、より自然で繊細な階調表現を必要とする場合は軟調で作成する方が良いでしょう。

複製

撮影したフィルムが破損・汚損することを防ぐため、通常はオリジナル・フィルムは保存しておき、複製(デュープ)を作成して利用に供します。撮影後の白黒のオリジナル・フィルムは、マスター・ネガティブ(Master Negative)などと呼ばれるネガティブ・フィルムになります。これをネガティブの状態のまま複製することも、ポジティブに反転して複製することもでき、ネガティブの状態のまま複製したものをダイレクト・デュプリケーティング・フィルム(Direct Duplicating Film、別名:DDフィルムまたはDDネガティブ・フィルム)と言います。
電子化も、スキャニング時のフィルムの破損・汚損を防ぐために通常は複製から行います。マイクロフィルムは非常に解像力が高いため、複製からスキャンしても画質にはあまり影響ないと言われています。

ポイント
マスター・ネガティブは保存用、DDネガティブ・フィルムを複製作成用のマスターフィルムと位置付け、利用提供にはさらにその複製を用いるケースもあります。

ポイント
フィルムの撮影条件にもよりますが、マイクロフィルム1コマをスキャンした場合には、16mmフィルム(15×21mm)で最大1,260万ピクセル、35mmフィルム(32×45mm)で最大5,760万ピクセル程度になると言われています。

保存

【2005-03-19更新】

フィルムの長期保存に影響を与える要素は、フィルムの素材、現像等の処理、保存状況です。

ベース素材

マイクロフィルムは、画像を記録するための感光乳剤がベース(支持体)に塗布されてできています。ベースの素材は、1890年頃からニトロセルロースが使用されるようになりました(NCベース(エヌシーベース;Nitrocellulose Base))。しかし、NCベースは可燃性で自然発火することもあったため、1950年代初頭からはセルローストリアセテート(セルロースエステル)が使用されるようになりました。これをTACベース(タックベース;Triacetyl Cellulose Base)と呼びます。1980年代後半にTACベースは経年により変質することが判明し、1990年頃から全面的にをポリエチレンテレフタレート(ポリエステル)が使用されるようになっています。これをPETベース(ペットベース;Polyethylene Terephthalate Base)と呼びます。ただし、カラーフィルムは現在でもTACベースが一般的です。

マイクロフィルムの断面図

ポイント
図書館で用いられているマイクロフィルムのほとんどは、撮影・複製の両方に使用される銀-ゼラチン・マイクロフィルム(Silver-Gelatin Microfilm)です。他にも撮影用の熱現像銀フィルム(Thermally Processed Silver Film)や複製用のジアゾフィルム(Diazo Microfilm)およびベシキュラフィルム(Vesicular Microfilm)などの種類があります。

処理

現像等のフィルム作成時の処理は、JIS等の規格に準じて行えば、まず問題はありません。

保存環境

フィルムの素材や処理方法がJIS等の規格で定めれている現在では、保存環境がフィルムの状態に最も大きな影響を与えます。マイクロフィルムの長期保存には、低温、低湿、ホコリの少ない環境が適しており、乾燥剤を入れた保存箱や保存庫など施設が必要となります。国際規格「ISO 18911:2000」では、長期保存のための条件は下記のようになっています。適切な環境のもとで保存されたフィルムは、TACベースで100年、PETベースで500年の寿命が期待できるとされています。

画像 ベース 最高温度(℃) 相対湿度(%)
白黒 TAC 2 20-50
5 20-40
7 20-30
PET 21 20-50
カラー TAC -10 20-50
-3 20-40
2 20-30

ポイント
ロール・フィルムは、中性紙で作られた帯で固定し、中性紙で作られた箱に収めて保管します。

関連の資格とJIS規格

【2005-03-19更新】

マイクロ写真およびデジタル化に関連する資格には、経済産業省の認可団体である社団法人日本画像情報マネジメント協会が認定する文書情報管理士があります。この資格は、文書資料をカメラで撮影・保存するための資格であったマイクロ写真士に文書情報をマネジメントする知識・技術を加えて改めたものです。上級、1級、2級にランク分けされており、マイクロフィルムの撮影・電子化作業を発注する場合には、専門的な知識や技術力が要求される1級以上の有資格者に担当させるのが望ましいでしょう。

マイクロフィルム関連のJIS規格(最新版)は下記の通りです。

規格番号 タイトル ステータス 備考
JIS Z 6000:1996 マイクログラフィックス用語 有効
JIS Z 6001:1999 A6判マイクロフィッシュ 有効 JIS Z 6002:1979「文書用マイクロフィッシュのヘッダー」およびJIS Z 6007:1982「計算機出力マイクロフィッシュ」を統合
JIS Z 6003:1979 16mmマイクロフィルムのドキュメントマーク(ブリップ) 廃止
JIS Z 6004:1989 図面用35mmマイクロフィルム撮影方法 廃止
JIS Z 6005:1989 図面用35mm処理済み銀-ゼラチンマイクロフィルムの品質 廃止
JIS Z 6006:1995 図面用35mmマイクロフィルムのアパーチュアカード 廃止
JIS Z 6008:1982 マイクロ写真用解像力試験図票とその用法 有効
JIS Z 6009:1994 銀-ゼラチンマイクロフィルムの処理及び保存方法 有効
JIS Z 6010:1984 マイクロフィルムの濃度 廃止
JIS Z 6011:1985 輪転式マイクロフィルムカメラ用試験標板 廃止
JIS Z 6012:1993 16mmマイクロフィルム用カートリッジ 廃止
JIS Z 6013:1991 16mm及び35mmマイクロフィルムのA6判マイクロフィルムジャケット 廃止
JIS Z 6014:1995 マイクログラフィックス―ディジタル用試験標板及びその用法 有効
JIS B 7186:1997 マイクロフィルムリーダ及びマイクロフィルムリーダプリンタ 有効
JIS B 7187:1997 16mm及び35mm銀-ゼラチンマイクロフィルム撮影方法 有効 JIS B 7188:1983「16mm及び35mmマイクロフィルムのリールへの巻き方」を統合
JIS B 7189:1983 16mm及び35mmマイクロフィルム用リール 廃止

※廃止になった規格は、使用されなくなった等の理由によるもので、規格を利用してはいけないということではありません。

参照・参考文献
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CyberLibrarian : tips on computer for librarians, 1998-