古英語 格変化表 定冠詞+名詞
ここでは、男性名詞の cyning、女性名詞の talu 、中性名詞の hus「家」を例に取ります。
また、それぞれの語を代名詞で表す場合の、三人称の代名詞のパラダイムも示しました。
ドイツ語を習ったことのある人たちのために、格の名前にドイツ語文法の名称も示しました。
定冠詞+名詞の部分をクリックすると発音が聞こえます。
なお、の文字はソーン (thorn)
という名前の文字で、現代英語のthの音を表します。
中英語の格変化表
この表を見てすぐにわかることは、まず、文字が現代英語と同じように th
で書き表されるようになったことでしょう。
また、
男性名詞の単数は属格形以外には格変化が見られないこと。
定冠詞に、男性名詞、女性名詞、中性名詞の区別がなくなったこと。
したがって、格変化も男性名詞のパターンを女性、中性名詞が一応に踏襲していること。
複数形も、古英語の男性名詞の複数主格/対格形語尾 -as が、あいまいになり -es となって、格変化がすべてなくなったこと。
が見て取れると思います。
次に注目すべきは、代名詞の形です。代名詞は、男性、中性、女性の区別が保持されています。けれども、女性代名詞は、まだ統一がとれていないこともわかります。
中性代名詞の属格形が、男性代名詞の属格と同じ形だと言うことも、まだ古英語の形が保持されていることがわかります。
複数形の代名詞のうち、主格だけが現代英語風になっていますね。目的格や属格(所有格)は、やや、音が曖昧になったとはいえ、古英語の形が保持されているのです。この主格の形は、北欧語の影響です。中世北欧語では、theirr というのが男性代名詞 複数形主格を表しました。英語は、古英語後期から中英語にかけて、文字に現れるまでに、北欧人の言葉が英語に混ざってきていたことがこれでわかります。
北欧語も英語もともにゲルマン語なので(印欧語表参照)、文法体系も似ていたために、混交はたやすかったであろうとも思われています。