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夜
黒い夜空がぼくの心に覆いかぶさり、
ろうそくの炎がゆらゆらと揺れていた。
キャンバスに焼き付いた赤い線、青い線は
存在の裂け目から噴出するかのように絵の具をほとばしらせ、
でも、室内には無音の領域が広がっていた。
ぼくが描き出したかった世界の真の姿は
けれど意識の闇に覆われており、
ぼくの喜びとなるものは
ろうそくの炎のように頼りなかった。
世界は壊れてしまうがいい!
そう叫んだ賢者の言葉は
空証文のように紙の上に刻印されているだけ。
そして巷では
世界の内に存在するものどもを称える声が
絶えることもなく氾濫し続けている。
外に出ると雪がちらついていた。
冷たい大気が張りつめ、
この世界に置き去りにされたものたちの怒りが
空の底に沈殿している。
魑魅魍魎たちが砂を食む大地の上で、
時が軋み続けているのだ。
カオスの中から浮かび上がってくる真理の断片。
そのかけらだけが
夢の醒めた
今日というトキの上に降り積もっている。
(2016.11.30)
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向殿充浩 (こうでんみつひろ) / 第6詩集『石に刻まれた小さな夢』