トップ 自己紹介・経歴 トピックス・近況など 文学作品 技術者としての活動 写真集 その他 お問い合わせ先 リンク集
呪術師たちの末裔
ぽっかりと浮かぶ丸い月の下で、
ビルディングが光り輝く都市の幻影。
けれど、そのきらめく明かりの下で、
世界は今なおきしみ続けているし、
ひび割れた夢は大地に堆積し続けている。
そんな世界の底で、
ぼくはただの囚われ人でしかなく、
惨めな気持ちで生きている。
この遊星は青春のしなやかさを失い、
喧噪と憎悪とひずんだ感情が
電子空間の中で渦を巻いている。
でも、かつて呪術師たちは
夢の閉じ込められた世界の殻を打ち砕き、
世界の裏側にあるかもしれない
妖艶であり、狂気でもあるような錯乱の中から
真理へ通じる響きを紡ぎ出してきたのだ。
その呪術師たちの末裔たるぼくは、
だから、この世界の底に立って
光り輝くビルディングを見上げ、
新たな軋みと怒りが押し寄せ、
あらゆるものが砕けるこの遊星の浜辺で、
もう一度石を積み重ね、
もう一度石を打ち鳴らす。
踏みしだかれたぼくの夢と
創造の意味の反照しないのっぺらぼうの大地。
顔をこわばらせて空を見上げる石たちの声を
でもぼくは道端に置き去りにしている。
トップ 自己紹介・経歴 トピックス・近況など 文学作品 技術者としての活動 写真集 その他 お問い合わせ先 リンク集
Copyright © 2020-2024
Mitsuhiro Koden. All Rights Reserved. 無断転載を禁じます。
向殿充浩 (こうでんみつひろ) / 第7詩集『架空世界の底で』