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たったひとつの反抗
蒼茫の道をぼくは歩いた。
ただ黙々とその道を歩いた。
灰色の空には凶兆を告げる鳥が舞い、
軋んだ音を奏で続けるものたちの
亡者のようなまなざしの下をぼくは歩いた。
るつぼの中から紡ぎだされた妖艶なるものは
道の上で美しく弾けては泥と化し、
そのたびにぼくは道端に
石を積み上げ続けた。
混濁した世界からのこだまのような声が
この大地の上に降り注ぎ、
踏みしだかれたぼくたちの夢は、
ひっそりと置き去りにされていた。
でも、天を打ち砕こうとする鬼神たちの咆哮は
今なお響き続けているし、
涯てることなく押し寄せる挽歌の嵐は
ぼくの心を泡立たせ続けているのだ。
この世界を見下ろしているものたちよ、
一切が噛みこまれる時間の渦の淵に立って
時間が作り出すこの世界という幻影を打ち壊してみるがいい。
風が舞う空の下で
ぼくたちの喜びは燃え尽きているかもしれないが、
この遊星の上にうずくまっている石たちの声は、
今なお、荒れ騒いでいるのだ。
ぼくは道端の色褪せた祠に
石をまた一つ積み重ねた。
それがぼくのたったひとつの試み、
ぼくのたったひとつの反抗なのだ。
この世界を創ったものに対する
ぼくの唯一の叫びなのだ。
その声はどこにも届かないだろうが、
でもぼくは明日も石を積み重ね続けるだろう。
未知なるものがこの世界の根底にある限りは。
(2016.9.16)
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向殿充浩 (こうでんみつひろ) / 第6詩集『石に刻まれた小さな夢』