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蒼茫の道
銅鐸の打ち鳴らされる蒼茫の道をぼくは歩いた。
打ち壊された石たちの声がぼくの心で軋んだ。
傷つけられた壁画の中に佇む都市の幻影、
ぽっかりと浮かぶ丸い月、
夢が夢を食い荒らす世界の底で、
冷たい光たちがただ交錯し続ける黒い宇宙で、
風だけが次々と砕け続けた。
でもぼくは石たちの声を拾い集め、
未知なるものたちの領域へ送り返そうとしている。
そして、軋んでいるこの蒼茫の道の上で、
ただ黙々と、
時間の轟音の中に掻き消された音たちを
もう一度打ち鳴らそうとしている。
ぼくたちの夢が何ものかによって踏みしだかれるとしても、
踏みしだかれたその破片の中から聞こえてくる響きが
ぼくをこの世界の外へといざなうだろう。
一切が噛みこまれる時間の渦の淵に立って、
ぼくは幾重にも積み重なったつぶやきの重みを見つめるだろう。
天を打ち砕こうとする鬼神たちの咆哮が
ぼくの心に共鳴しているのだ。
だから、かすかに響く異界からの声に耳を澄ますがいい。
天から降り注ぐ誰でもないものたちの声に耳を傾けるがいい。
荒野でうち捨てられた寺院では
今日も石に刻まれた仏頭が
久遠の瞑想の中にたたずんでいるのだ。
求道者たちの荒野で、
でも、まだ、石たちに刻まれた夢が疼いている。
(2016.3.12)
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向殿充浩 (こうでんみつひろ) / 第6詩集『石に刻まれた小さな夢』