向殿充浩のホームページ
トップ お知らせ・トピックス 自己紹介・経歴 作品 技術者として活動・経歴 写真集 お問い合わせ先 その他
未知なるものへの祈り
勤行の声が空を覆う荒野で
ぼくたちは石を積み重ねて天に祈った。
殺伐とした乾いた風が流れ過ぎ、
絶壁の黒い山が迫っていた。
真っ赤な月はぽっかりと浮かび、
無数の星たちは巨大な沈黙を守っていた。
その荒野で、
ひとりの老いた導師が立ち上がり、
世界を呪う呪術的な言葉と
神に異を唱える詩句を朗誦する。
天を打ち砕こうとする求道者たちの怒りが
大地の慟哭と共鳴し、
顔をこわばらせた石たちは黙って空を見上げている。
大気に怒りが満ちていた。
だから、ぼくたちは祭壇の前に進み出て誓いを立てた。
真音の失われたこの荒野で、
一切が噛みこまれる時間の渦の淵に立って、
ぼくたちはこの閉じ込められた世界の幻影を打ち壊し、
未知なるものへの道を探り当てようとするだろう。
そして、今日唱えた未知なるものへの祈りは
決してぼくたちの心から消し去られることはないだろう。
石たちに刻まれた小さな夢が
異界に向かって微かに光を放っているのだ。
(2016.1.30)
トップ お知らせ・トピックス 自己紹介・経歴 作品 技術者として活動・経歴 写真集 お問い合わせ先 その他
Copyright © 2016-2022
Mitsuhiro Koden. All Rights Reserved. 無断転載を禁じます。
向殿充浩 (こうでんみつひろ) / 第6詩集『石に刻まれた小さな夢』