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ぼくは孤高の神に向かって

 

この広漠たる大地の上で、

ぼくはただ言葉を繋ぎ合わせ、ただ石を打ち鳴らしている。

神々の哄笑の響くこの小さな時の断崖で、

ぼくはただ沈黙し、ただ粘土を捏ねている。

この遊星の上で沸騰する饒舌から遠ざかり、

清澄の天使たちが踏みしだいた光の破片を

ぼくはただ拾い集め、ただ祭壇に捧げている。

 

遠い天空の彼方に潜む孤高の神よ、

この宇宙の中心に座る聖なる絶対者よ、

なぜあなたはこの混沌とした世界を

ただ存続せしめるのか?

なぜあなたは真理が具現すべくもないこの世界を

打ち壊さないのか?

 

求道者たちの祈りがあなたに届くことはないし、

石たちの声、風たちの声、

そして、何ものでもない存在者たちの声が

あなたの心を動かしたことも一度もない。

石たちはただうずくまり、

この遊星を覆う大気は張りつめたままだ。

 

曼陀羅の中に秘められた世界の秘密は

いったいいつ解き明かされるのか?

この宇宙の底に沈む大地の上には

いったいいつ真の音が鳴り響くのか?

 

でもぼくは明日も言葉を繋ぎ合わせ、

ただ、石たちを打ち鳴らすだろう。

孤独に、神々の声を聞くこともなく、

ただ、ひゅうひゅうというこの広漠たる荒野のただ中で

何ものでもないものたちの声を聞こうとするだけなのだ。

ぼくにできることは、ただ石たちの声、風たちの声に耳を傾け、

砂の上に結晶化させることだけなのだ。

 

ゼロと一、

それから無限、

光のあやふやなこの世界の向こうで、

けれど、神もきっと

孤独に石を削っているにちがいない。

 

2014.1.3 / 2016.11.3改訂)

 

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向殿充浩 (こうでんみつひろ) / 第5詩集『疾駆する風たちに』