数限りない無数の石たちが砕ける荒野で
数限りない無数の石たちが砕ける荒野で、
ぼくは縹渺たる風たちとともに、
時間だけがただ流れ去るのを見つめた。
その荒野では、
絶望の淵に立って神に祈りを捧げる求道者たちが
かすかな燈明を求めて黙々と歩き、
けれど、空を見上げて呪いの言葉を発していた。
無垢の女神のまなざしは巨大な時空を駆け、
けれど、荒れ果てた寺院では、
今日も老いた導師が呪術的な言葉を唱えていた。
虚無の中へと転化される真音への道、
そして、形となることのない真理への道。
空なる世界の上では、
宇宙の風がびゅうびゅうと吹きすさび、
顔を歪めた石たちの声がぼくたちを駆り立てている。
ぼくが刻んだ石、
そして、ぼくが描いた錯綜する線の領域。
けれど、天使たちは
もはやこの荒野に降り立ちはしないだろう。
神々はきっと、この沸騰する世界から離れ、
無垢なる夢の中に還っているのだ。
だからぼくは今日も石を砕いた。
そして、疾駆する風たちの中に、
石の破片をそっと投げ入れる。
新しい風を呼び起こすために。
小さな灯りを灯すために。
(2014.3.28)
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向殿充浩 / 第5詩集『疾駆する風たちに』