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はじけとんだ空の破片を
はじけとんだ空の破片を拾い集めるぼくの仲間たち、
そして砕けた破片をさらに小さく砕き続ける君の仲間たち、
久遠の韻律の響く碧色の空の下で
砂粒を一粒一粒数え続ける神の使者たち。
けれど、小さくなった地球の上では
機械文明の申し子たちが我が物顔で闊歩し、
その隙間では、
今なお魑魅魍魎どもが跋扈している。
そして、虐げられた者たちの思いは
大地の上にべっとりと沈殿し、
天を呪う呪術者たちの祈祷は
今日もやむことなく響き続けている。
そうだ、よりどころとなる言葉は
黄ばんだ古文書の中に忘れ去られ、
清澄の人の透徹した洞察は
古い石碑の上で風化している。
くったくのない笑いが
のっぺらぼうの電子空間の上で賛美され、
滔々と流れる時間の濁流は
もはや人々の心には響かない。
かつて一人の楽師が真音を奏でたことがあった。
かつて一人の仏師が真像を彫ったことがあった。
賢者から発せられた真実の言葉は
この大地の向こうにある世界をも突破したはずだった。
ヤージニャヴァルキャよ、
もう一度、汝の言葉を
この大地の上に刻印するがいい!
ヴォルスよ、
もう一度、カシスの夢を
小さなキャンバスの上に殴り描くがいい!
タージマハル旅行団を率いたあの天才音楽家は
今どこにいるのか?
キャンバスにペンキを投げつけた孤独な画家は
今、何を見下ろしているのか?
神話の中の賢者の言葉だけが
今なおかすかに光を放っている。
りん光を放つ金色の魚だけが
キャンバスの上でぼおっと真理を灯明している。
夢が潰えたわけではない。
ダルマが壊れたわけでもない。
ぼくを見つめている何ものでもない者たちが
今日もなお、石をたたいているだけなのだ。
神と対座した求道者たちが
今日もなお、曼陀羅を描き続けているのだけなのだ。
音の想念たちが
風の舞う夢の枯野で
炸裂している。
(2007.3.4)
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向殿充浩 (こうでんみつひろ) / 第4詩集『土塊を蹴り』