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喪の領域に・V

 

ぼくは再び喪の領域に足を踏み入れ、

天界から降り注ぐ真音の雫を浴びた。

荒ぶれる荒野の

その奥底から溢れ出す

語ることのできない声と

絶えることのない荒々しい叫び。

 

けれど神々の踏みしだく冷たい石たちの上で、

陶酔しきって踊り狂う鬼神たちの足元で、

おびえたまなざしで空を見上げる

ぼくの仲間だったものたち。

そしてぼくは、

この領域で光を浴び続ける空なる紋様に

そして、石を削る賢者たちのまなざしに

ただただ頭を垂れるのだ。

 

世界を砕こうとする超越的な神々が破り開いた喪の領域で

ひとりのぼくはもう一度、

未知なるものへの

小さなつぶやきを投げ入れる。

 

石たちの上に新しい夢を刻み込むために。

そして、求道者たちの声を

もう一度、この空なる世界に反響させるために。

 

2009.10.30

 


[付記]

 この詩は、神話『ブルーポールズ』第4巻(ルガルバンダの巻)に使われています。ヴィクートがベルジャーラのナユタを訪ね、再びともに戦うことを決意する場面です。


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向殿充浩 (こうでんみつひろ) / 第4詩集『土塊を蹴り』