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勤行の声
茫漠たる時の断片を削り、
沈黙し続ける石を砕いた。
無音の領域に静謐の音を投げ入れ、
虚空に放たれる奔放な光を拾い集めた。
けれど、この遊星の上では
美しく飾ったあやふやなものへの試みが
飽くこともなく繰り返され、
石に刻まれた文字は荒野の瓦礫となり、
薄っぺらな真理への錯綜した思念が
硬直化して大地にへばりついている。
混沌と混乱が唯一の真理と言える世界、
光を発する存在はみなすべて粘土へと化する世界、
その世界の底で
求道者たちは荘厳な楽器の音と共に勤行の声を響かせ、
神々のいなくなったこの宇宙における
唯一の道を捜し求めている。
ぼくは勤行の声を砂っぽい風の舞う荒野で耳にし、
ときにはこの閉じ込められた世界を呪い、
またときには時間に潜む無意味な躍動を嘲る。
誰かが立ち去った。
無機質の形象がただ大地の上に置き去りにされ、
沈黙した大気が重々しい。
ひとつの真理がただ無表情にぼくに向かい合っている。
(2009.10.18)
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向殿充浩 (こうでんみつひろ) / 第4詩集『土塊を蹴り』