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求道者たちの荒野で・V

 

たった一つの夢に灯明を灯し、

石たちの声に耳を傾け、

土ぼこりの舞う道を歩いた。

寺院では導師がしゃがれた声で朗誦し、

控えていた鬼神たちが次々に立ち上がって乱舞した。

 

風を砕き、

砕けた風の声を飲み込む

異界に依拠するぼくの仲間たち。

言葉が潰えた夢の枯れ野で

虚無に向かってただ炸裂する音の想念たち。

 

その荒れ野では、

生まれ出ることのなかった誰でもないものたちが

唯一者によって描かれた軌跡を拒絶し、

積み上げられた祭壇を打ち壊し、

無言のうちに円い月を仰いでいる。

 

叫び出さずにはいられない孤高者たちの声は

けれどなお荒野の上を駆けている。

未知なるものへのやむことのない試みは

けれどなお縹渺たる風の中で荒れ騒いでいる。

 

世界を突破しようとする求道者たちの夢は

いったいどこに結実するのか?

石に刻まれた求道者たちの言葉は

いったい何を指し示しているのか?

 

羅刹たちの歌が遊星の上の

この茫々たる大空に沁み込み、

ぼくは夢を石臼に放り込んで

ただ一つの言葉を捜す。

言葉とならない一つの言葉を。

土くれを蹴って。

 

Terry Riley “The Last Camel in Paris”に)

 

2009.10.2


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[付記]

 この詩は、神話『ブルーポール』に使われています。第5巻で、森に帰ってきたナユタにアシュタカ仙人が語りかける場面です。

 


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向殿充浩 (こうでんみつひろ) / 第4詩集『土塊を蹴り』