向殿充浩のホームページ


トップ  自己紹介・経歴 トピックス・近況など  文学作品 技術者としての活動 写真集  その他 お問い合わせ先 リンク集


 

閉路

 

道が閉ざされているのを知らないわけではない。

ぼくたちの存在というものが

唯一者の戯れにも等しいものだということから

目をそらしているのでもない。

 

でもぼくは耳を澄ましたいのだ。

重い大気の中にポツンと置き去りにされた声、

世界の絶壁の上で荒れ騒ぐ風の声に

耳を澄ましたいのだ。

 

誰もがいつも夢を見ているわけではない。

無人の遊星の上の光のかけらが

時間を飛び越えて骨たちを照らしているのでもない。

けれど閃光によって廃墟となった都市の全景が

月明かりの下の残虐な祭壇が

希薄な大気に向かって呻いているのだ。

 

大地は怒りと哀しみとに満ち、

海は乾燥した宇宙に向かって波を泡立たせている。

小さな一枚のキャンバスに張り付いた

星や記号たちの他には

笑いをたたえているものとてない。

 

ゼロと一、

それから無限、

漂泊者の魂の焼けつく荒れ野で

神がひとりぼっちで

石を削っている。

 

(ヴォルスに捧ぐ)

 

戻る

 


トップ  自己紹介・経歴 トピックス・近況など  文学作品 技術者としての活動 写真集  その他 お問い合わせ先 リンク集


 

Copyright © 2019-2024 Mitsuhiro Koden. All Rights Reserved. 無断転載を禁じます。

向殿充浩 (こうでんみつひろ) / 第7詩集『架空世界の底で』