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ぼくは風を飲み込んだ
ぼくは風を飲み込んだ。
ぼくは声を飲み込んだ。
ぼくは途方もなく砕破を繰り返す
小さな虫たちの時間を飲み込んだ。
それから世界の壁をぼくは見た。
白い壁に描かれた文字をぼくは読んだ。
神々の死に絶えた時代の
光り輝く文字だけが朗らかだった。
たとえカシスの夢が朽ち果てても
大理石でできた透明な魚は
絶望の淵で燐光を放つだろう。
天使たちに忘れ去られた鳥は
無限円の空間で踊り続けるだろう。
でもまだ言い知れぬ何かが
無気味に横たわっている。
存在の根源にまつわる謎が
べったりとぼくの心にへばり付いているのだ。
だから、ぼくは石を打ち鳴らし、
風を飲み込み続けるだろう。
だから、ぼくはぼくの夢をすりつぶし、
道の上で虫たちとともに空を仰ぎ続けるだろう。
世界の謎が解き明かされる日が来ないとしても。
(1988.4.24)
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向殿充浩 (こうでんみつひろ) / 第3詩集『求道者たちの祭儀』