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野の廃墟で(モヘンジョ=ダロにて)
膨大なレンガの道、
ほこりっぽい砂の道、
野ざらしにされた土器の破片。
かつて夕食の鍋が煮られた土間にぼくは立ち、
人々が行きかった道の上をぼくは歩いた。
かつて水が入れられた壷の破片を拾いあげ、
侵略者によって破壊された土塀に手を触れた。
いったいどの時間が
この廃虚の意味を具現するのに必要なのだろう?
そういう疑問が心を過ぎった。
だからぼくは描かれた文字を解読し、
刻まれた図形を判別しようと試みた。
けれど野の向こうの広大な大地が、
そしてそのまた向こうの大きな夕日が教えてくれた、
この時間が外へは流れ出していないのだということを。
ちっぽけな遊星の上の
ほんの一瞬の栄華を誇った都市の残骸、
冷たい宇宙の法則はそっぽを向いたままなのだ。
だからぼくは石を一つ積み上げた。
砂の上にぼくの足跡が残った。
(1986.12.27)
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向殿充浩(こうでんみつひろ) / 第7詩集『架空世界の底で』