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ぼくの領土
荒れ果てた褐色の荒野に
ふてぶてしい大木。
山はみなはげ山で、
大きな岩が日の光に焦げついている。
それがぼくの領土、
ぼくの呼吸する大地なのだ。
かつては僧院があった。
賑わいもあった。
読経の声が敬虔で、
一者への帰依があった。
でも今は、
砂埃の舞う平板な土壌に
汚いなりの子供が
ぽつんと牛を追いかけている。
犬たちは嘲りの笑いを浮かべ、
叡知の破片は硬い土に突きささったままだ。
神聖な像は風化してしまい、
空の色は生ぬるくなった。
そう、これがぼくの領土なのだ。
ぼくはこの領土で、この荒野のただ中で、
瓦礫を集めて祭壇を築く。
かつて生きていた文字たちや
星や生き物たちを供え、
炎を灯して
知らない神に祈りを捧げる。
.....
けれど狼たちの遠吠えと
鳥たちのけたたましい鳴き声が呼応するだけ。
ひび割れた遊星の一角で
この小さな領土で
ぼくはむなしく踊りを踊る。
だから、さあ神よ、新しい戦いを始めよう。
ぼくはこの領土に満足していない!
ぼくは錯乱と幻惑の渦巻く葬送の道に
カンダルヴァの光を刻印したいのだ。
ぼくは悪意に満ちたカーリーの踊りに
遠い宇宙の弔鐘を打ち鳴らしたいのだ。
だから、さあ、神よ、
呻いているぼくの祭壇に
あなたのハンマーを打ち降ろすがいい。
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向殿充浩 (こうでんみつひろ) / 第7詩集『架空世界の底で』