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モヘンジョ=ダロ・T

 

あまりにも明朗な光の中に廃墟はあった。

とてつもない静寂がそこを支配していた。

いったいどの時間が

この素焼きレンガたちの声を聞きとどけるのか、

そういう疑問が心を過ぎった。

 

緊張の解けた時間の中で

かつての街の賑わいが嘘のように

朗々たる日の光が

静かに数千年を照らし続け、

あまりにもあっけらかんとして、

あまりにも沈黙して、

壊れた褐色の土器の上で

青い空がひゅうひゅうと舞っていた。

 

ぼくはいったい時間のどの断片を

切り取ろうとしていたのだろう。

太陽と月と記号たち、

砂と素焼きレンガたち、

ぼくが見た都市の幻影、

時間の破片があまりにもゆっくりと

風の中に吹き払われていた。

 

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向殿充浩 / 第7詩集『架空世界の底で』