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神話『ブルーポールズ』
【あとがき1】
インドの古代叙事詩『マハーバーラタ』は、自ら、「ここに在るものはすべてこの世界に在り、ここに無いものはどこにもない。」と語っています。
この『ブルーポールズ』は、この世界の森羅万象すべてを盛り込むことはできていないかもしれませんが、可能な限り、この世界にある多様なものを盛り込もうとして描いたつもりです。
「はじめに」でも書きましたが、この物語は、当初、3巻構想で書き始め、第3巻で完成のはずでした。ただ、第3巻までの全体像が見えてきたころから、心のどこかに、「これですべてなのだろうか?この世界において重要なものはこれで語り尽くしたのだろうか?」という思いがくすぶっていました。パキゼーの聖なる悟りである「一切は空」という思想は、たしかに、この世界の根源的な真理であるかもしれないが、現実の世界は、それとはまるでかけ離れた世界で動いているという事実を無視することが適切ではないというような思いでした。
そんな思いに突き動かされ、第4巻〜第6巻が生れ、さらに、「真理は何か」という視点から、この物語の終結として第7巻を書きました。
現時点では、続巻の構想はありません。
(2026年7月)
【あとがき2】
ミカ・ワルタリの小説『エジプト人』(1945年)は、私がたいへん大きなインパクトを受けた作品です。この作品は、古代エジプトを舞台とした物語で、主人公シヌヘの手記という形をとっていますが、その冒頭部分に、次のようなで始まっています。
「センムトと、その妻キパの息子なるシヌヘ、すなわちかくいう私が、これをつづる。この手記はケムの国の神々の栄光をたたえて捧げまつったのではさらさらない。おお、神々にはまったくうんざりしているのだ。さらに、国王の栄光に捧げんためでもない。彼らの所業にもあきれはてている。とはいえ、わが未来への不安からでも、ましてや希望を抱いて書きしたためるのでもない。ただただ私自身のためにしるすのである。(中略)自分はただ書きたいだけだ。この点で、過去から未来への他の作者たちと区別してほしい。」[1]
私がこの神話『ブルーポールズ』を書いた基本姿勢は、まさにこれと同じです。すなわち、この『ブルーポールズ』は、この世界を讃えるために書いたのでも、人間たちを讃えるために書いたのでもありません。また、誰かに読んでもらうために書いたのでも、誰かに何かを訴えんがために書いたのでもありません。ただただ、私自身のために、そして、私自身が書きたいがために書いた物語です。
そして、『ブルーポールズ』と『エジプト人』はもう一つ共通点を持っています。それは、現代の人間が現代の感覚や価値観に基づいて作品を書くのではなく、舞台となっているその世界、その時代の者が彼ら自身の感覚や価値観で書き記すというスタイルをとっている点です。それゆえ、現代の感覚や価値観から言えば、ひんしゅくを買ったり、顔を背けたりしたくなるようなことが、平然と当然のこととして、そしてしばしば正しいこととして描かれています。この点について、不快に思う方もいるかもしれませんが、この物語はそういうスタイルで書かれているが故とご容赦願いたいと思っています。ただ、この神話に含まれる感覚や価値観が現代において正しいとか適正であるとか許容されるなどとはさらさら考えていないということだけはあえて申し上げておきたいと思います。
[1] ミカ・ワルタリ『エジプト人』, 飯島淳秀訳(角川文庫,
1989年11月15日発行第6版).
(2027年7月)
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向殿充浩 (こうでんみつひろ) / 神話『ブルーポールズ』