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神話『ブルーポールズ』
第6巻(未来の巻)
【まえがき】
第5巻において、創造された人間の世界が停止されて物語がいちおう完結したわけですが、「それでは、その後の神々の世界はどうなってゆくのだろうか?」という疑問が心に残っていました。そして、それは、私たちの人間の世界がこれからどうなってゆくのだろうかということとも相通ずるものでした。そのような視点から、未来を舞台とした物語を書こうと思い立ち、2014年春から書き始めたのが、この第6巻です。
未来を考えるとき、大きく2つの可能性があるように思えます。それらは現在の諸相に基づくものですが、一つは悲観的なもの、もう一つは楽観的なものです。
まず、悲観的な可能性は、人間たちの偏狭な心を元凶とする宗教や人種の対立、さまざまな格差が生み出す軋轢、さらには核の脅威や資源エネルギー問題、人口問題など、現代においてなお重い問題となっている問題を簡単には越えられないという可能性で、次の世界大戦すら思い描くことができるかもしれません。
もう一方の楽観的な可能性は、第2次世界大戦後大きな大戦が起きていない現実、さまざまな技術革新が人々をより豊かにしている事実、それらに連動して後進国の人々の生活レベルも着実にあるいは急速に上がっている状況などを踏まえ、将来、より明るい満たされた世界が実現するというものです。
私自身の思いとしても、その楽観的な可能性が開けることを期待していますし、また、別の視点で言えば、そのような世界になった時、人々はどう生きるようになるのだろうかという思いもあって、この第6巻では、楽観論に立った未来像を描くことにしました。
実際の未来世界が、この物語で描かれているようなフリーセックスも含めた安逸な世界になるかどうかは分かりませんが、ロボットやAIの普及も含め、これまでの世界とは根本的に異なる何かが生じてくるのではないかという思いで描いてみました。但し、ロボットやAIに関しては、ロボットやAIが自分の意思を持つという可能性についてはこの物語では封印しています。このような未来社会を描くにあたり、若い頃に読んだオルダス・ハックスリーの『すばらしい新世界』、ステント『進歩の終焉-来たるべき黄金時代』などから大きな影響を受けていることを付記します。
この第6巻の物語は、シャープを退社後、米沢の山形大学に移ってから書き始めたのですが、山形大学で取り組んでいたフレキシブル有機ELの将来像のようなものも物語に登場させています。ディスプレイに関しては、この物語では液晶ディスプレイが登場せず、ブラウン管の次は有機ディスプレイとなっています。これは、技術者としての有機ELへの思い入れと理解いただければと思います。
また、米沢や山形での生活で体験したものなどもところどころに入れ込んでいます。
【あらすじ】
第5巻において、創造された人間の世界が停止された後も、神々の世界は自律的な技術進展を続け、すべての神々が安逸に生きることのできる世界が実現する。その核となっているのは、ロボットとフリーセックスである。
一方、ナユタは森に籠り続けているが、今後の世界がどうなるかという関心と、首都ビハールのドレッシェル教授からの要請から、首都ビハールに行く。ナユタは、高層マンションでアミテスという最新式神型ロボットのいる住まいで暮らし、ドレッシェル教授、ロボット工学のトゥクール教授などとの交流も含め世の現状をさまざま再認識するが、彼の心を満たすものではない。そんな中、ナユタは、女流画家のリリアン、詩人のハーディ、音楽家のシュヴァイガーなどと出会い、1年数か月のビハールでの滞在の後、リリアンを伴って森に帰る。
森では、近くにレストランを開き土偶を作製するカウティリヤ、木を叩く女流打楽器奏者ナスリーン、写真家のサナムなどと知り合い、さらには、森に住むバラドゥーラ仙神、エシューナ仙神、ウパシーヴァ仙神、アシュタカ仙神などとの交流を続ける。ナユタは、この世界で生きる意味は何か、どう生きたら良いのかということ疑問と向き合いながら、高原で自分自身と向き合った日々を送る。
ある時、突然、ナタラーヤ聖仙がナユタの家を訪ね、ブルーポールを授ける。その夜、ブルーポールは強烈な光を大空に放ち、その光に呼び起こされて、ユビュはビハールに姉のシュリー女王を訪ね、『ナユタと仲間たち展』という芸術祭を行うことになる。その芸術祭は成功裏に終わるが、ナユタは満足したわけでもなく、ただ、再び森に帰る。
この物語の最後で、ヴィカルナ聖仙がやってきて、別れを告げる。あまりの突然のことにナユタは言葉を失うが、聖仙は、「では、わしは行くよ。」と言って姿を消す。
(2017年2月25日掲載 / 2026年7月25日改訂)
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向殿充浩 (こうでんみつひろ) / 神話『ブルーポールズ』 第6巻(未来の巻)