カテキン渋味成分の破壊効果を実証
緑茶を飲んで胃がん細胞退治!?


緑茶の渋味成分「カテキン」が人間の胃がん細胞を破壊して死滅させること
を、三重大学医療技術短期大学部の樋廻(ひばさみ)博重教授(生化学)
らの研究で明らかになった。
今後、抗がん剤への応用も期待される。研究結果は、25日から国立京都国際
会館(京都市左京区)で開かれる「日本癌(がん)学会」で発表される。
研究メンバーは、樋廻教授のほか、生物資源学部の小宮孝志教授(農産物
利用学)と阿知和弓子博士(同)。

カテキンは、胃潰瘍の原因で、胃がんとの関係が指摘されるピロリ菌の除去
に有効とされ、発ガンを抑制する効果があると言われてきたが、今回、
胃がん細胞そのものを破壊することが分かった。
樋廻教授らは、培養した人の胃がん細胞に、緑茶から抽出したカテキンを添
加したところ、細胞核のDNA(デオキシリボ核酸)がフラグメンテーション
(断片化)を引き起こし、プログラム細胞死(アポトーシス)させることに
成功した。
実験の結果、カテキンの中でも、主成分のエピガロカテキンガレートが最も
有効だった。
胃がん細胞への効き目は、煎茶とほぼ同濃度の1リットル当たり0.05グラ
ムの抽出量で、完全に死滅できたという。
これまでカテキンについては、がんを発症させたネズミなどの動物を使って延
命効果をみる実験が行われてきたが、顕著に効くというデータは得られていな
いという。

今回の研究は、緑茶の産地、静岡県中川根町の男性の胃がん死亡率が全国
の5分の1だったことから、研究グループが緑茶の成分に着目した。
三井農林食品総合研究所(静岡県藤枝市)が緑茶から抽出したカテキンを使
い昨年12月から実験を繰り返していた。
樋廻教授は「胃の中に緑茶カテキンができるだけ長い間存在するよう、緑茶を
たくさん飲めば、予防になるのではないか」と話している。


アポトーシス
細胞内の遺伝子に組み込まれたプログラムによって、細胞が自然に死ぬこと。
これまでにコンブやワカメに含まれる多糖類の「フコイダン」が、がん細胞に
アポトーシスを起こすことが知られている。

平成9年9月23日 中日新聞より

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