枯れてゆく葉に紅のカラスウリ

 秋も深まり周囲の木の葉が徐々に色を変える時期になってきました。 近所の散歩
で真っ赤に熟したカラスウリの実が3つ、4つ、枯れた葉を付けた蔓にぶら下がって
いるのを見つけると、何か大発見をしたような気持ちになります。 しかし、カラス
ウリの実が真っ赤に色づく頃は夕風が冷たい季節でもあります。

     蔓枯れて赤(アケ)目立ちたる烏瓜
            夕の風のとみに冷えける  安田 稔郎

 先日、ある園芸家の講演をお聞きした折「我が家では晩秋の頃になると毎年きまっ
て真っ赤なカラスウリを玄関の脇に吊下げておきます。 枯れ枝があればそれに吊下
げておくと、クリスマスから正月過ぎまで、赤い実の輝きと、素朴な趣は見る人の心
をなごましてくれます」と語っていましたが、まったくその通りだと思います。

     烏瓜かれなんとして朱を深む       松本 澄江

 ただ、よその家の庭の木に絡みついているものを取り外して持ち帰るわけにもゆき
ませんので、いつものようにカメラに納め写真でその姿を眺め、心をなごませていま
す。 カラスウリは毎年同じ場所に蔓を伸ばし、木をすっぽりと覆い、夏の夜には幻
想的な花を咲かせてくれます。 まさかこんなレースで編んだような花が真っ赤な果
実を結ぼうとは想像も出来ませんが、夜に花を咲かせるカラスウリは人目に立たず、
もっぱら赤い果実が青空を背景にぶるさがっているのが話題の中心です。

 御岳の川合玉堂美術館の脇のスギに木にからむキカラスウリを家内と歩いて見つけ
ましたが、果実はまだ黄色に熟れてはいませんでしたが、大きさはカラスウリの倍は
あろうという立派なものでした。  年配に方にはおなじみのてんかふん(天瓜粉)
はこのキカラスウリの根に含まれる澱粉が用いられたもので、夏の湯上がりにあせも
防止にてんかふんをパタパタと身体中にふりかけられた懐かしい思い出をお持ちの方
も多いと思います。
                            うめだ よしはる

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晩秋から冬の花へ