ドウダンツツジ

路に沿った家々の生け垣に植えられているドウダンツツジがスズランの様な可憐
な花を咲かせていたのがついこの間のようでした。 そして、緑の葉だけになってい
たドウダンツツジも、ここ二三日の冷え込みで、日に日に、その葉を紅色に染めるよ
うになりました。

 植物名彙辞典を見ますと、ドウダンツツジの漢名として満天星の名が与えられてい
ますが、これは、昔、中国の太上老君が仙宮で霊薬を練っているうち、誤ってこぼし
た玉盤の霊水が、たまたまこの木の枝に降り注ぎ、かたまって壷状の玉になり、あた
かも満天の星のように輝いたからだといわれています。

     どうだんの花のこぼれのしろじろと
              月夜になりし庭松の露    太田 水穂

 牧野植物図鑑では、ドウダンツツジは灯台ツツジの意味で、分枝の形が結び灯台の
脚に似ていることに由来したものであると記されています。 結び灯台とは木の枝や
竹を三本交叉させて結び合わせ、上端の三叉状の台架に灯明皿を置いた灯火台のこと
で今では特別な場所以外では見かける機会がないでしょう。 ドウダンツツジの枝が
よく分かれて、その先端がこのような形をしていることからつけられたです。

 以前に、長野県の小布施を訪ねた折に「日本あかり博物館」に足を止め、灯火の歴
史を見るように数多くの「あかり道具」を眺めてきましたが、その中に上端が三叉状
の灯明皿の台架を見つけたときには、ああこれなんだと妙に納得したものでした。

 春には花と新緑を愛で、秋には紅葉を愛でるドウダンツツジは生け垣に用いたり、
庭の片隅に円形に育てるには適した植物ですね。 真紅に色づいたドウダンツツジの
美しさは忘れられない晩秋の光景の一つです。 高地では昼夜の気温格差が大きく、
ハゼノキやニシキギにも負けないほどの鮮紅色を呈します。 家の周辺のものはあれ
ほどの鮮やかはありません。

     どうだんの葉のくれなゐは日に濃くて
              手の負へざりし雑草も枯れぬ  清水ちとせ

 ドウダン紅葉の頃には、あれだけはびこっていた庭や道端、空き地の草も霜に打た
れ、急に元気を無くしてしまいます。 冬越しの準備に入ったキク科のロゼット状の
タンポポ、ハルジオンやヒメジョンの緑が目立つようになりました。

                            うめだ よしはる

サルビア
   花ヤツデ
   ハナスベリビユ
   ツワブキ

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