秋のゼフィランサス/タマスダレ

 春にピンク色の花を咲かせるゼフィランサスと同じ仲間で、馴染み深い花にタマス
ダレがあります。 花の期間が長く、群れて咲く花、ヒガンバナ科の植物です。 終
ったかなと思うと、またたくさんの白い花を咲かせる不思議な性質を持った花です。

 タマスダレの名のほかに学名から附されたしゃれたゼフィランサスの名でも紹介さ
れていますが、タマスダレのほうがなんとなく馴染みのある名です。 タマスダレの
名は球根がタマ状を呈しているのと、細い葉がすだれのように並んでいるのからきた
名でとのことです。

 近所の道に沿った塀の際に10メートルの余にもわたって植えられたタマスダレは
今年も長いあいだ花を楽しませてくれます。 丈夫な植物らしく毎年のように道端で
冬を越しては夏から秋にかけて花を見せてくれています。 庭の水道栓の傍らに植え
ておいた株がいつの頃からか大きくなって、一昨年ころから花を咲かせてくれます。

 「この花は何と言うの。」「タマスダレ」
 「この間は良く咲いていたのに、一度に花が終ってしまったみたいね。」
 「あれ、今日はまた一度に咲き始めて、なにか咲くのに周期でもあるのかしら。」

こんな家内の質問が私を悩ますのですが、いろいろと調べると、そうした疑問に対し
・・英名をレイン・リリーといい、雨の後に花茎を伸ばして咲く性質をもっているの
で、雨の周期に合わせて咲くことが多い・・などという記述に行き当たります。

 そういわれてから、気をつけて花の開花を眺めますと、雨が降ったあとに一時に沢
山の花がみられるようです。 

 イギリスで見た植物のことをまとめるために、手元に置いているプラント・ハンタ
ー物語の中に、イギリスに負けてはならじとフランス政府は派遣したプラント・ハン
ターの一人、フィリーベル・ド・コメルソンが、南米ブラジルへの植物採集の旅でタ
マスダレを観察した日誌の一節は、

 「タマスダレを見たときに、1513年にスペインの探検隊が、それになぜ銀の川
  という名前をつけたのか、その理由が直ちにわかった。無数の白いタマスダレが
  開花して、水面が銀色に輝いていたのである。」

であり、この花が群生している様子を「銀の川」と表現したスペイン探検隊を紹介し
ています。「銀の川」の表現はなんとなく日本名の「玉すだれ」に類似の発想です。

                             うめだ よしはる

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