ヒイラギの小さな白い花

  公民館の庭のヒイラギが葉の蔭に白い花が咲かせていました。 家内から玄関前に
あるヒイラギに「花が咲いているわよ」と聞いたのはもう一週間位前でしょうか。 
枝が引き込んだ電話線にかかる程に伸びてしまい、枝を切られたり、また葉に穴をあ
けるハムシの類の食害を受けて、見るのも無惨なヒイラギになってしうのが毎年のこ
とで、花を見ずに終ることがことの多い木でした。 今年は剪定後に薬剤散布も行い、
何とか白い小さな花とほんのりとした香に出会いたいと思っていましたが、やっと思
いがかないました。

 ヒイラギは節分に悪魔除けとして門口にさす習慣が知られていますが、しかし、ヒ
イラギの葉も50年ー80年の歳を経るに従って鋭い鋸歯が円くなってくるといいま
すので、悪魔除けの霊験も次第に薄くなって来るのでしょう。 鰯の頭をヒイラギに
さすのは「寒村に迷い込んだ空腹の鬼が鰯のにおいに誘われて民家を覗き見ようとし
たところ、門口にさしてあったヒイラギの鋭い刺に恐れをなして、またヒイラギの葉
の刺で目をつつき何も取らずに退散した」とのことから、鰯の頭をヒイラギにさす習
慣が生まれたとあります。

 小枝の葉腋に小さな白い花を幾つかまとまって咲かせるヒイラギは香りの良い花で
す。 ヒイラギの花は訪れてくる寒い冬の先駆けでもありますね。

     ひひらぎの白き小花の咲くときに
            いつとしもなき冬は来むかふ   斎藤 茂吉

     柊の花すがすがし冬の来て
            さむさにむかふ朝日のさすも   岡  麓

と、晩秋から初冬への季節の花として美しく詠いあげられています。

                             うめだ よしはる

     表紙へ戻る

晩秋から冬の花へ