名古屋「青春を返せ」訴訟で請求棄却判決

1998.3.27登録

 統一協会による詐欺的勧誘とマインドコントロールによる人権侵害をうけた元信者6人が慰謝料などの損害賠償を訴えた「青春を返せ」訴訟で、名古屋地方裁判所(稲田竜樹裁判長)は3月26日、原告の請求を棄却しました。

 当日配付された判決要旨はつぎのとおり。
 本件の概要と判決要旨
一、事案の概要
 本件は、原告A、原告B、原告C、原告D、原告E、原告Fが、いわゆるマインド・コントロールによる違法な勧誘、教化行為により被告に入教して約1年ないし6年間にわたり貴重な青春を奪われ、霊感商法や偽装募金などの違法行為への従事、無償の労働、献金、物品購入などの出捐をそれぞれ強制されたとして、棄教した後、被告に対し、(1) 原告Aは、人格権及び財産権侵害の不法行為に基づく損害賠償請求として1144万4750円及び遅延損害金、(2) 原告Bは、人格権侵害の不法行為に基づく損害賠償請求として1294万5375円及び遅延損害金、(3) 原告Cは、人格権及び財産権侵害の不法行為に基づく損害賠償請求として335万2633円及び遅延損害金、(4) 原告Dは、人格権及び財産権侵害の不法行為に基づく損害賠償請求として972万0012円及び遅延損害金、(5) 原告Eは、人格権及び財産権侵害の不法行為に基づく損害賠償請求として1053万7662円及び遅延損害金、(6) 原告Dは、人格権及び財産権侵害の不法行為に基づく損害賠償請求として1257万8800円及び遅延損害金の支払をそれぞれ求め、これに対して、被告は、原告らを勧誘、教化したのは被告ではなく信者の組織であり、被告が右組織に対し勧誘、教化するよう指示をしたこともなく、原告らの主張するいわゆるマインド・コントロールによる勧誘、教化の実行性には疑問があり、宗教などの領域においては教団名などを明らかにしないでする勧誘、教化行為は違法でないと主張する事案である。
二、裁判所の判断(要旨)
 被告の信者の組織であるビデオセンターなどが、原告らに対して、被告が説く宗教を勧誘、強化するにあたり、教団名、教祖名を言わなかった点については道義的な問題は別として違法とまでは断定できず、また原告に対して薬物を使ったり、物理的、身体的な強制力を用いるなど違法な手段を用いた事実を認めるに足りる証拠はない。
 原告らの主張するいわゆるマインド・コントロールは、それ自体多義的であるほか、一定の行為の積み重ねにより一定の思想を植え付けることをいうと捉えたとしても、原告らが主張するような強い効果があるとは認められない。
 原告らが行った難民救済募金や因縁トークを用いた印鑑などの販売活動が、違法の評価を受けるかどうかは個別の事案に即して検討すべきであるが、道義上の問題がないとはいえない。しかし、原告らは、その当時、宗教上の意味を見出して、自ら決断して右の活動に従ったのであり、決断の課程において、宗教的な言説以上に物理的、身体的な強制力が介在したことを窺わせる証拠はない。
 原告らは、国際機動隊やキャラバン隊等において、宗教的な決断により厳しい生活の中で販売活動等に従事したが、原告らが、右生活を送るにあたり、物理的、身体的な強制力や、行き過ぎた制裁を背景にしてこれを強いられたことを窺わせる事情はない。
 原告らは、自分なりに信仰を深めながら献金、物品購入などを宗教上有意義なものと信じて行ったが、これについては宗教上の言説による勧誘、教化によるところが大きく、原告らの年齢、知識、経験、献金に至る期間、金額などからみても、社会常識に反したとみるべき特段の事情はない。
 以上の検討結果によれば、ビデオセンターなどの原告らに対する勧誘、教化行為は、その目的、方法、効果について総合的に判断するとき、なお社会的相当性を逸脱したとはいえず、原告らに対する不法行為とはいえない。
 よって、原告らの請求は、いずれも理由がないから、これを棄却する。
          名古屋地方裁判所民事第五部合議体

 判決後、弁護団は次のように述べました。
 判決は、統一協会を隠して否定して行っている点、霊感商法など違法な行為をしている点で、道義的な責任は認めているものの、被害の本質を軽視している。薬物を使用していない、物理的、身体的な強制力を用いていないなどを判断基準にしているが、起訴されたオウム信者でも、薬物などを使わないでマインド・コントロールされている。確かに、マインド・コントロールという概念は確立されたものではないが、このような被害を防ぐには、「マインド・コントロール」が判断基準に使用されるよう、この概念が確立するようにしたい。判決は、統一協会の行為を宗教的行為として見ているが、実態は金儲けの行為である。
 原告のAさんは、−私たちは多くの人のおかげで脱会できた。勧誘に応じた自分たちの未熟さはあったが、だます組織が存在しなければ、被害者となることはなかった。自分たちは脱会できてよかったと、この問題を忘れてしまいたいのだが、それ以上にこれから被害を受ける人をなくしたいという思いで原告となった−と述べました。
 支援会の杉本誠牧師は、−救出の相談を受けていくなかで、「洗脳」という問題ではなく「マインド・コントロール」の問題だと理解できてきた。原告の自己犠牲の上に成り立っている裁判だが、この裁判のおかげで、この問題が深まってきたと思う。これから闘いが始まるつもりでがんばろう−と述べました。
 再度、弁護団は、−マインド・コントロールの研究者が採用されていない。人間は一定の条件があればコントロールされるということを、今後の裁判で認識してもらいたい−と述べました。


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