著作権・大阪東ティモール協会

エウリコ釈放、UNHCR殺害に軽い刑

松野明久


 裁判は長びき、そのうち世論の関心も薄くなっていく。それを見すかしたかのような軽い判決。ひどい人権侵害をしても大国の指導者なら捕まることはない。ユーゴスラビアのミロシェビッチ、チリのピノチェト、カンボジアのポルポト派指導者など外国の援助が欲しい小国の指導者は悪いことをすると裁判にかけられる。人権についてのダブル・スタンダードの恩恵を最も受けているのはインドネシアだ。

エウリコ・グテレス

 4月30日、北ジャカルタ地方裁判所は彼に扇動罪で6ヶ月の刑を言い渡した。最高5年の刑の罪に対して、検察も12ヶ月しか求刑しなかった。6ヶ月から拘束されていた期間を除くため、実際にはほとんど刑に服さないも同然。すぐに釈放されて、クパンに戻り、東ティモールを取り戻すための活動を再開しているようだ。
 彼は「反共連合」のリーダーとなり、イスラム原理主義グループと民族主義者をたばねている。そのグループの連中が、プラムディア・アナンタ・トゥルというインドネシアの元共産党系作家の作品をジャカルタの書店(グラメディア)から閉め出した。
 またエウリコはメガワティの携帯電話番号を知っているなどと豪語し、闘争民主党の青年部の指導者をしているようであるが、7月12日から14日にかけて開かれた闘争民主党の会議ではまだ「東ティモール支部」からの参加者が認められていた。(BBC Monitoring, July 13)
 また、はっきりしない点ではあるが、ワヒド大統領の大統領令で人権法廷の管轄が1999年の住民投票のあとにおきた人道に対する罪に限定される可能性がある。そうなった場合、エウリコは訴追リストからはずされてしまうことになるだろう。


UNHCR殺害

 さらに驚かせたのは5月4日、同じく北ジャカルタ地方裁判所が昨年9月6日にアタンブアでUNHCRスタッフ3人を殺害した6人の民兵に、10ヶ月から20ヶ月の軽い判決を下したことだ。アナック・アグン・グデ・ダルム裁判官は「3人の国連スタッフを殺害したのが彼らだとは証明されえなかった。群衆が彼らを殺したのだから」と述べている。(Reuters, May 4)
 これにはアナン国連事務総長、UNHCR、米国務省、EU、ニュージーランドなどが批判のコメントをしている。また、インドネシア国内からも人権関係者から批判の声が上がった。5月10日、ディリのインドネシア代表部前で、腕に黒いバンドをした外国人・東ティモール人国連職員が数十名、これに抗議する無言のデモを行った。(AP, May 10)
 インドネシア検察庁は控訴した。★


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