季刊・東ティモール No. 25 June 2007

巻頭言

フレテリンの敗北と避難民

 大統領選でフレテリンが敗北した。人々は昨年来の危機の責任がフレテリン政権にあると判断したと言えるだろう。
 しかし、避難民問題は依然として解決を見ない。カトリック系の難民救援団体(JRS)によれば、ディリで発生した避難民のうち、現在3万人がディリ周辺のキャンプにおり、7万人が東部の出身地に帰っているという。東部出身者は一般にフレテリン支持者とみなされており、フレテリンが敗北した結果、ますます不安を募らせているのではないか。
 東部では選挙キャンペーン中も、非フレテリン系の候補者に対する反発が強い。議会選に向けてシャナナがロスパロスに出かけた時、元外相のジョゼ・ルイス・グテレスが支援の演説をした。その時、フレテリン系の聴衆によって会の進行が遮られてしまったという。
 危機によって生じてしまった東西人の対立は、どうにもなっていない。一時的に鳴りを潜めているものの、またいつ噴出するかわからない。この間行われてきた大統領府主導の「和解集会」はあまり効果がなかったようだ。
 この問題に関して、どの候補者たちもこれといった妙案がないようだ。誰もが和解の達成について述べるが、具体的ではない。
 まず、なされるべきことは、そもそもの発端となった問題、すなわち国防軍内部の待遇差別問題の真相究明とその説明だ。政府は、自らの機構の内部においておきたことが発端となってこれほどの事態を招いたのだから、事実を公にし、責任の所在を明らかにし、処置する責任がある。請願者たちもこのままでは宙に浮いたままだ。
 次に、司法プロセスをもっと進めなければならない。ロジェリオ・ロバトの実刑判決のあと、誰も起訴される気配がない。ロバト一家の声明にもあるように、それではあまりに不公平だ。国連独立調査委員会の報告書は100名以上の訴追を勧告している。少なくとも、国防軍兵士による警察官射殺事件は裁かれる必要がある。
 そして、避難民たちが帰還できるよう十分な保護を与えなければならない。避難民たちの住居の復興を治安部隊の監視下で行う、地区住民の集会を開いて受け入れる、地区の治安について住民の協議機構をつくる、警察がパトロールを定期的に行うなどの措置が考えられる。市場の管理機構、治安管理システムを構築しなければならない。政府指導者は暴力をふるう者に対する断固たる措置を言明し、かつ実行しなければならない。
 中期的には、政府機構の脱政党化をはからなければならない。つまり公務員、および(当然ながら)軍人の政党活動(党員となる、直接的に選挙活動に従事するなど)を禁止すべきだ。また、役人の汚職を防ぐために、情報公開法を早く制定しなければならない。そして、軍人が国防問題以外のことでマスコミなどに対して発言を行うことを控えるよう、規律を涵養することが大事だ。
 さらに、青少年対策の推進、雇用促進などさまざまな社会政策を行う必要がある。とくに重要と思われるのがポルトガル語政策の見直しだ。ポルトガル語は排除のメカニズムの構築に一役買ってきた。これからは言語政策も参加のためのもの、包摂のためのものとして再考される必要がある。(ま)


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