オペアンプ1段でできる、超シンプルなミッドブースト回路です。
入力側、出力側ともにインピーダンスの影響を受けないので、バッファを兼ねる事も出来ます。
この回路のシミュレーションと製作例について紹介します。
こんな回路を探していたという方、ようこそ。
おそらくは、「ミッドブースター」「回路図」でググってみたら、あの御大のギターに内蔵されている、
例のサーキットが大量にヒットしてしまい、検索にご苦労した事とお察しします。
guitarscience.net
というサイトに、オペアンプによるバンドパスフィルターと動作解説が記載されているpdfがありました。
「FUN WITH OP-AMP BAND-PASS FILTERS」
伝達関数の記載がありましたので、さっそく自作エミュレーターG★PLOTに
「Band Boostor」
としてモデルを追加してみました。
i-------------|+\ | >-+--o +--|-/ | | | +--Zrx--+--Zr1---+ | | +--Zc1--+--Zc2---+ | Zr2 | ~~~
Tブリッジ型のノッチフィルターが非反転増幅回路の帰還部に入っている形です。これで逆特性になってブースト側に働くのですね。
回路図
ブレッドボードレイアウト
入力バッファ不要のためオペアンプ1段で完結します。
尚、本来は使用しないオペアンプの空き端子は、+入力をグランドに、OUTと-入力を直結といった感じで、正常動作する形で末端処理しないといけませんが、ここでは放置です。
実物
実測
サインスイープでF特性を測定
グラフの目盛りの-30dBの所が±0dB位置に相当します。ほぼシミュレーション通りの特性になりました。
ボリュームを上げ切るあたりで急激にブーストされて、
最大時ではだいぶピーキー、ワウペダルっぽいサウンドになります。ピークのゲインが27dB位ありますので、
当然歪んでしまいます。
実用の回路とする場合には、もう少し定数を調整した方が良さそうです。
シミュレータの動作確認も兼ねて、最大15dB程度のブーストとなるような設計例をいくつか作成し、実動作を確認しました。
どれもシミュレーション通りの特性が得られました。
効きの幅を変えたり、ローブースト、ハイブースト特性とする事も出来ました。
ブースト量15dB
ブースト量を15dBに抑えたパタンです。
Zr2を大きくするか、小さい可変抵抗にするかでも、ブースト量を下げる事が出来ますが、この場合ピーク周波数も変わってしまい、コンデンサの定数を調整しないといけません。
可変抵抗とZc1の間に抵抗を入れる事で、ピーク周波数を変えずに最大ブースト量を下げる事が出来ます。
広帯域ブースト
効きの幅を広くしたパタンです。Zc1を大きく、Zc2をその分小さくすると効きの幅が広くなります。
狭いブースト
効きの幅を狭くしたパタンです。Zc1を小さく、Zc2を大きくすると、効きの幅が狭くなります。
しかし同時に最大ブースト量も低下します。
ローブースト
Zc1を極端に大きくするとローブースト特性になりました。
多分Zc1無くして直結とした場合も同様の特性になると思うのですが、その場合は、Zr2はグランドではなくバイアスに落とす必要があります。
ちなみにシミュレータでZc1に0Ωを入れると、伝達関数式の分母が0になる箇所が出てきてしまうため計算出来ないですね...。
ハイブースト
Zc2を無くして断線した形にすると、ハイブースト特性になりました。
これらのパタンの実測結果(最大ブースト設定でサインスイープで測定)
グラフの目盛りの-30dB位置が実際の±0dBに相当します。
どのパターンもシミュレータ通りの結果となりました。
うむ、この回路なかなか応用も効いて良いですね。
非反転増幅型なので、入出力バッファや中間バッファも兼ねる事が出来る所が嬉しいです。
使いでがありそうですね。
こんな回路を探していたという方、ご参考まで!。