新発田の花あやめ

花菖蒲の室内栽培法

鳥取県 山脇信正 
1 この栽培方法の三つのねらい。
① 花菖蒲の大衆化(インドア・プランツ)をめざして。
従来、花菖蒲園に行って観賞するひとはア多いのですが、家庭で育てて楽しむ人は極めて少ないです。温室がなくても窓辺で手軽に育てることが出来れば、花菖蒲がより身近な花となり、もっと愛好者が増えると思います。また、開花を待ちながら花菖蒲の魅力の一つである剣状の葉の成長を身近で観賞し、暖かい室内で春の息吹を感じることも楽しみの一つになることでしょう。

② 観賞期間の延長
通常、花菖蒲の開花期はとても短いものですが、この栽培方法を取り入れることにより、早春より花を咲かせ観賞期間を延ばして楽しむことが出来ます。
③ 株分け作業の分散化
株分け作業は、花期の終わる六月下旬から七月下旬に集中して行われますが、栽培家にとってこの時期はたいへん多忙な時期となります。開花を早めることにより、3月下旬頃から株分け作業が可能となります。3月~5月に株分けした苗は、活着もよく2ヶ月あまりで立派な苗に育ちます。

花菖蒲は、休眠期に入りすぐに温度、日照を与えると目を覚まし生長し始める特性があります。この栽培方法は、その特性を生かしたものです。

2 本植えの時期
春に株分けしたポット苗を九月末~十月頃までに本植えします。鉢に直接本植えしてもかまいません。早咲きで、草丈の低い品種を選びます。品種としては、影法師、早春、桃杖、麦秋、愛娘等々。鉢は五~六号鉢を用い、土は荒木田(無肥料)を使用します。固形発酵油かす(骨粉入り)を十五~二十粒鉢の上に置き肥をします。直接本鉢に植える場合は、肥料は活着してから与えます。

3 鉢を室内に取り入れる時期
十二月の中頃に室内に取り入れます。以後、少しづつずらして室内に取り入れると三月中旬頃から順次花を咲かせ続けることができます。鉢を室内に取り入れる時期は、葉が枯れて休眠期に入った頃が目安となります。

4 鉢の置き場所
室内の日当たりの良い窓辺に置きます。夜間ストーブを焚き、蛍光灯を使用する窓辺が最適です。花菖蒲は長日植物ですから日照が必要です。夜間のストーブは、温度を補い、蛍光灯は日照を補います。夜間の室温は十六℃位。昼間は加温しませんので十℃以下になります。夜間の照明は、十時頃までとします。

蕾が膨らみ色づき始めたら、室内の好みの場所で咲かせましょう。蕾が色づくと室内のどこでも、蛍光灯(電灯)の明かりで見事に花を咲かせます。

5 水と肥料の与え方
受け皿に水を張って与えます。やや深めの受け皿を用い水は、切らさないようにします。花菖蒲は特性として常時水に浸っていても根腐れを起こしません。そこが他の草花栽培との大きな違いです。(水陸両用植物です。)
花の時期が終わるまで十分水を与えます。この時期の水は花芽を作るのにとても大切です。

肥料は、九月、十月、十一月、十二月に一回、固形の発酵油かす(骨粉入り)を鉢の表面に十五~二十粒置き肥をします。十二月以降は与えません。肥料は鉢の上から、水は鉢の下からを原則にして与えます。

6 花の咲く時期
露地植えより約三ヶ月早く、三月下旬頃から四月に花が咲きます。この時期は気温が低いため、ゆっくり開花し、一番花、二番花と二週間以上花を観賞することが出来ます。室内なので風もなく花も完全に伸びきって咲き、特に肥後系の大輪花はみごとに咲きます。

7 その他の手入れ
鉢に満遍なく日光が当たるように、時々鉢を回してやります。
メイチュウ、アブラムシ等の発生には、オルトラン粒剤を散布します。
株元の枯れ葉を取り除き、株元をすっきりさせましょう。

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その他

「菖蒲」の漢字はショウブともアヤメとも読むことです。色々調べまして、ちょっと理解し難い所もありますが、中国では、サトイモ科の蒲(がま)の穂に似た花を咲かせる石菖(せきしょう)の事を「菖蒲(アヤメ)」と呼んでいましたが、これが日本に伝わった時、同じ仲間で同じ様に蒲の穂に似た花を咲かせ、根が白い現在のショウブである「白菖」に「菖蒲」の漢字が当てられ、アヤメと呼ばれていたようで、万葉の時代は、「菖蒲(アヤメ)」は、現在のショウブを指します。そして、葉の形が似ており綺麗な花を咲かせるハナショウブを「花菖蒲(ハナアヤメ)」と呼ぶようになりました。平安時代からは字音で「菖蒲」を「ショウブ」と呼ぶようになり、「花菖蒲(ハナアヤメ)」も「花菖蒲(ハナショウブ)」の呼び名になります。現在のアヤメですが、葉が並列して立っており美しい文(あや)があるという意味で「文目」、さらに花の模様から「綾目」と呼ぶようですが、こんなことから最終的にこの植物に、「菖蒲(アヤメ)」の名前が残ったようです。

万葉集の花   花勝見 萬葉集總索引單語編 正宗敦夫編(白水社版)972頁 中臣女郎贈大伴宿禰家持歌五首 娘子部四咲澤二生流花勝見都毛不知戀裳摺可聞   をみなべしさき澤におふる花がつみかつても知らぬ戀もするかも 花勝見は野生の花菖蒲にて日光にては赤沼アヤメといふ。 あやめより小さく五六月頃に花咲くものにて花の色は紫赤にて今も或地方にては花ガツミといふとぞ。 カツミは菰にて花カツミと同物にはあらず。又花勝見の花は三瓣にて四瓣にあらず。 萬葉集新考第二・巻4 井上通泰著(國民圖書)759頁より (http://www21.ann.co.jp/senka/hana3-3.htmより引用)

昔から「いずれあやめか杜若」と美人の形容詞にされているように,野に咲く紫色の花は優雅で美しい花です。また,これは,アヤメとこれに似た他の花を区別することが,一般的に難しいことを言っているのです。  アヤメは花菖蒲(はなしょうぶ),杜若(かきつばた),鳶尾草(いちはつ)などを含むアヤメ属の総称で,植物学上ではシベリアアヤメをさします。狭義のアヤメは,本州,北海道,シベリアに分布しており,ハナショウブやカキツバタに比べればやや地味な花をつけます。湿地には適さないので,昔から庭などにも植栽されています。ふつうにアヤメと私たちが言っているのは,ハナショウブです。 アヤメの名前の由来には諸説がありますが,剣のような形をした葉が繁るようすが文目(あやめ)模様に似ているという説や花のつけ根に網目状の模様があるからという説などがあります。ちなみに,あやめ属の属名はIrisですが,ギリシア語で虹を意味します。花が虹のように美しいことに由来しているのでしょう。 「伊勢物語」で在原業平(ありわらのなりひら)が「かきつばた」の五文字を詠みこんだ歌は,あまりにも良く知られています。 唐衣(からころも)着つつなれにし妻しあれば はるばる来ぬる旅をしぞ思ふ  ハナショウブやカキツバタは,湿地や水辺をこのんで生育しますが,イチハツは日当たりのよい場所を好み,乾燥にも耐えますから,庭植えに適しています。 ところで,菖蒲(しょうぶ)が出てこないと思われるでしょう。万葉時代からショウブをあやめ草などとして歌に詠まれています。これらは,アヤメの仲間ではなく,サトイモ科ショウブ属の仲間で,アヤメとは無関係のものです。花は,見るべき美しさはこれといって何もありませんが,葉や茎,根などに香りがあり,葉も美しいことから古くから親しまれています。この仲間でやや小型のセキショウがありますが,中国では,菖蒲といえば,この植物を指します。  ショウブ(あやめ草)には,強い香気のあることから,この香りが邪気を払うとして,5月5日の端午の節句には,風呂にいれたり,頭に巻いたり,屋根の軒先にさしたりして、古くから用いられてきました。各地の水辺にふつうに見られる身近な植物です。 「万葉集」では ほととぎす厭(いと)うふ時なしあやめぐさ 縵(かつら)にせむ日こゆ鳴き渡れ 作者不詳 (巻十:1955) 「古今集」恋一の最初にあるよみ人知らずの歌は有名です。ほととぎす鳴くや五月(さつき)のあやめ草 あやめも知らぬ恋もするかな よみ人しらず (これは,恋は盲目という心情を詠んだ歌です。) いずれにしても,これらに詠まれているあやめ草は,アヤメではなく,ショウブ(菖蒲)です。 それにしても,ショウブは別として,アヤメの仲間は美しいけど,本当に区別の難しい花ですね。 なつかしきあやめの水の行方かな高浜 虚子 にさんにちむすめあづかりあやめ咲く 室生 犀星 (二三日と書かずに平仮名をもちいているところ,少々詠みにくいところなど"犀星"らしい芸の細かさがあると思います。) (http://www.cc.it-hiroshima.ac.jp/gh/gh390/gh390_kusa.htmlより引用)

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