危ない弁護士2:業者と組んだ提携弁護士
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更新 2015.5.29mf
融資の1本化は嘘
A子さんは、あちこちのサラ金合計20社からお金を借り、月に10万円以上の返済をしていました。ある日、折込みチラシに、「あなたの債務を1本化しませんか。融資します。〇〇〇ヘルパー」などと書かれているのが目に入りました。
A子さんがチラシに書かれていた番号に電話しますと、愛想の良い声で、会社に来るように誘われました。A子さんが会社に行って、融資の審査を受けると、5分ほどして、担当の男の人は、「あなたは審査を通りませんでした」言いました。
弁護士の紹介
男の人は、親切そうに、「債務を整理した方が良いですよ。良い弁護士を紹介します」と言い、弁護士を紹介してくれました。
A子さんが、紹介された法律事務所に行くと、弁護士には会えませんでしたが、〇〇法律事務所「事務局長」との肩書きが付いた男の人に会いました。事情説明をしてから、A子さんは事務局長から、「着手金20万円を支払うよう。毎月、サラ金に対する返済分として、法律事務所に対して15万円ずつ送金するよう」言われました。
A子さんは、言われるままに着手金を支払い、毎月のお金を送金しました。毎月のお金の送金が遅れたこともありました。6か月ほど経過しました。
電話の差押え
ある日、突然、サラ金業者がA子さんの電話を差押えました。このサラ金とは和解ができたと聞いており、毎月、法律事務所を通して送金しているので、A子さんはおかしいと感じ、法律事務所を訪ねました。しかし、A子さんは、弁護士には会えず、事務局長もはっきりと説明せず、和解契約書も見せてもらえませんでした。
紛議調停の申立
A子さんは、弁護士会に相談に行きました。そこで、アドバイスを受け、弁護士に対し、「債務整理の内容を明らかにするよう」求めて、紛議調停の申立をしました。
依頼の解消
この弁護士は地方の国立大学を出ている一見まじめそうな感じがします。しかし、弁護士会に、よく苦情が持ち込まれる弁護士でした。紛議調停委員会にもなかなか出頭しませんでした。
紛議調停委員会では、再三、この弁護士を呼びだし、相談者の代理人としてサラ金との間に成立させた和解契約書を提出させました。
電話を差し押さえたサラ金業者とは和解契約はできていましたが、支払がされていませんでした。
未解決の件が3件ありましたが、A子さんが、それを別の弁護士に依頼することにしました。約6か月後、、A子さんとこの弁護士は、紛議調停委員会の席上で弁護士報酬の清算をし、依頼を合意解約しました。
提携弁護士のシステム
この弁護士は、提携弁護士との疑いがあります。提携弁護士は、業者(紹介屋)と組んで、お客を集め、事務局長に名前を貸し、客の債務を整理をしています。しかし、事件処理が極めてずさんで、サラ金側の言いなりの(依頼者に不利な)和解をし、報酬も高く、仕事内容(金銭の明細)を明らかにせず、依頼人に対する報告も怠りがちでした。
冒頭の折込みチラシの融資は嘘で、目的は客集めです。弁護士は「〇〇〇ヘルパー」に対し、紹介された客1人につき20万前後の紹介料を支払います。
このシステムはときどき見られます。業者は、折込みチラシ(チラシはこの弁護士が提携弁護士である証拠の1つです。大事に保管しておくと後で役に立ちます)、スポーツ新聞(これも大事に保管しておいてください)などで融資(実際は嘘、融資はしない)の広告をし、サラ金で悩んでいる客を集めます。
チラシが弁護士が、所属している弁護士会の目に触れないようにするため、業者は所属弁護士会の所在地を避けてチラシを撒きます。本件の弁護士は東京の弁護士会に所属していましたので、業者は福岡と山梨県でチラシを撒いていました。
業者は客を弁護士に紹介します。法律事務所では、専門の事務局長が弁護士の名前を(借りて)使用して債務整理をします。事務局長は弁護士に対して名義使用料を支払います。弁護士が事務局長を監督しないシステムなので、ときおりトラブル発生します。
法律事務所のフロアが別れていて、別の階を債務整理専門の事務局長が使用していたり、法律事務所が2か所あり、別の事務所を債務整理専門の事務局長が使用していたりする例が多いです。
弁護士は非弁護士と提携してはならず、名義を貸すことも禁じられています(弁護士法27条)。違反すれば処罰されます。
相変わらず、弁護士会の、法律相談、苦情相談、紛議調停へ、相手方として提携弁護士が来ます。最近は、業者名でのチラシではなく、弁護士名でのチラシを撒いている例があります。さらには、業者がNPO法人を設立し、弁護士と提携している例もあります。
提携弁護士の仕事内容
業者と提携した弁護士に対する弁護士会の処分が新聞で報道されると、今まで依頼していた人が、弁護士会の法律相談センターに相談のために訪れます。また、弁護士会に苦情を申し出ます。提携弁護士(実際は、弁護士から独立した事務局員)の仕事の特徴は大体次の通りです。- 残債務を確認する際に、利息制限法を適用せず業者の主張通りの債務を認めます。手抜き仕事です。
- 和解内容、依頼者との間の経理内容等を明確にしない。すなわち、情報公開をしたがりません。
- 依頼者に弁護士に対し毎月、振り込みをさせ、これが遅れると、対応が厳しい。すなわち、弱いものに対して厳しい(依頼者の中には約束を守らない人がいても、資力がないなど同情すべき面もあります)。
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報酬は、不当に高いと言われていますが、私のみた限りでは、不当に高いものはありませんでした。弁護士会の報酬基準を使っています。しかし、東京の弁護士会の
クレジット・サラ金法律相談センターの基準
に比べると明らかに高い(約2倍、提携弁護士の報酬例)。
- 驚いたことに、以上は、日本の官僚と似た体質ですね。
提携弁護士対策
以前は、歳を取った仕事のなくなった弁護士が、このような提携をしていたようですが、現在は、歳に関係ありません。やはり、お金欲しさに業者と提携するようです。弁護士には相当な収入が入りますから、事務所も立派、身なりも立派です(そうでない人もいます)。
弁護士の仕事内容は、事務所の外観、体裁からは判断できません。法律違反の実態は外部にはなかなか明らかになりません。このような弁護士は避けた方が安全です。
自分が依頼している弁護士が提携弁護士ではないかと感じたら、弁護士会のクレサラ相談センター(相談は無料です)で相談すると良いでしょう。弁護士会も対応策を実施しています。
提携弁護士は、東京だけで、約50名から60名いるそうです。苦情相談、紛議調停事件を担当すると、相手の弁護士が(証拠はないが)提携弁護士ではないかと、疑問を感じることがあります。
非弁提携行為は、弁護士法27条で禁止されています。違反すると、2年以下の懲役または300万円以下の罰金が科せられます(77条1号)。
各弁護士会の非弁護士取締委員会が扱います。筆者も、リンク先の興信所が、非弁行為を行ったために、事情聴取を受けた経験があります。
まさに、ネット時代です。リンクにも気をつけないと、あらぬ疑いをかけられ、大変です。
サラ金会社の役員が経営する「新宿イプシロン」が、「低金利で500万円まで融資します」との広告を出し、融資を求めて来た客に対しては「あなたは借金が多すぎて融資できない。債務整理した方がいい」と誘い、提携した弁護士を紹介していました。
役員は、多額の収入を上げ、脱税がきっかけで摘発されていました。提携弁護士はこの役員に対し顧客1名につき12万円を支払っていたそうです。役員は、懲戒処分を受けたり、借金に苦しむ弁護士と提携していたようです(2000年2月28日読売新聞朝刊より)その後
A子さんが依頼した弁護士は、その後も、依頼人から何度も紛議調停(弁護士と依頼人間のトラブルに関する調停)の申立をされていました。
最近、その弁護士は、「受任した債務整理事件を放置し、依頼者に対して、完了したと虚偽の報告をした」との理由で、業務停止の懲戒処分を受けていました。提携弁護士である疑いがあるが、証拠がなかったのです。
判決
- 東京地方裁判所平成14年7月17日
判決
原告の主張する事実経過は,次のとおりである。
ア 原告は,平成10年6月9日,新聞の折込広告で知った「生活改善友の会」なる団体から,債務整理のために被告の登録事務所である平成法律事務所の紹介
を受け,同事務所を訪れた。原告は,同事務所で,事務員のCの指示に従い債権者一覧表を作成し,更に,「債務整理に関する委任契約書」に署名,押印した。なお,
同書面には,被告の氏名が印刷され,被告の職印が押捺されていた。
イ 原告は,その後,毎月11万4000円ずつ支払を続けたが,平成法律事務所からは債務整理の状況に関する報告は一切なかった。そのため,原告は,平成
法律事務所宛に状況の確認を求めたが,同事務所の回答は曖昧なものに終始し,また,送付された書面によれば,弁護士報酬は極めて多額になる一方で,同書面自体に
矛盾する内容の記載があった。なお,原告は,弁護士との面談も求めたが,実現されなかった。
ウ 原告及びBは,平成12年6月27日に被告に到達した書面で,被告を解任する旨を通知した。
エ 被告は,原告の各債権者に対して取引経過の開示請求を行ったり,取引経過に基づいて利息制限法による制限超過利息による元本充当を行うこともなく,単に原告の各債権者と,その主張する債権額に応じて分割払契約を締結したにすぎない。
(2) 被告は,本訴は,D弁護士を中心とする共産党系クレサラ弁護士一派が競合弁護士つぶしのため,原告訴訟代理人弁護士Aが原告の名義を借りて提起した
氏名冒用訴訟であると主張して,本訴請求に係る訴えの却下を求め,また,本案の答弁として,請求棄却の判決を求めるものの,請求原因については,被告が送付した
書面の内容,送付の事実のみ認め,その余の事実は否認すると述べるのみで,具体的な事実毎の細かな認否あるいは積極的な反論は全く提出しない。
これら認定の事実に弁論の全趣旨を合わせると,被告は,いわゆる非弁提携弁護士であると認められ,しかも,原告から委任を受けた債務整理に関する業務を専ら自己
の法律事務所の事務員に行わせ,しかも,その業務遂行の方法ないし内容は極めて不誠実であったということができる。そして,原告が,被告が弁護士として誠実に債
務整理業務を行うことを期待し,そのことを契約の内容として本件委任契約を締結したことは明らかであるから,本件委任契約は錯誤により無効であると解するのが相
当である。
そうすると,本件委任契約に基づく委任事務処理費用等として支払われた金員の一部の返還を求める原告の本訴請求は理由がある。
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