「EPSON PM−770C」(1999/03/08〜04/05号)
{パソコン周辺機器紹介}

インクジェットカラープリンター
        PM−770C
        EPSON
        定価    ¥59800
        買値    ¥43000(税込み)

エプソンの出した最新のA4インクジェットカラープリンターである。
SPEEDというグループの女の子が宣伝しているので、
CM位は知っている人もいるかも知れない。

年末と言うのは、おそらく、カラープリンターが一年で一番売れる時期ではないかと
思う。目的はもちろん年賀状。
そういう事情もあってか、各社ともこの時期に合わせて新機種を出してくる。
このPM−770Cもそういう中の1つである。

今のプリンターは、モノクロはレーザープリンター、カラーはインクジェットが
主流である。もちろんこれ以外のプリンターもあるが主流ではない。
特に個人で買うプリンターは、カラー以外を探すのが困難なくらいである。

価格的にもA4で3万円台までが普及機で、6万円までが高級機という感じである。
非常に安い上に普及機でもそこそこきれいなのだから、技術の進歩と価格の低下は
すごいものだ。しかもそれがここ2〜3年位のことだから驚きである。

前置きはともかく、このプリンターの紹介をしよう。

このエプソンのプリンターはインクジェットでカラーを出すものである。
インクは6色使い、疑似的にフルカラー(1670万色)を表現する。
解像度は横1440*縦720dpi(ドット/インチ)ある。
現在の画質の基準は「写真画質」と言うことで、各社とも見た目が写真と同程度と
いうことが売りものだが、このPM−770Cももちろんそうである。

        ・・・

実はこの機種の前の前のモデルであるPM−700Cの印刷を見たことがあったが、
本当に写真画質である。よくよく見ると細かいドットが見えたが、50センチも
離れればもう見えないだろう。「プリンターでここまで出来るようになったか」と
感心したものだ。

770Cはその後継機種であるから、当然画質はそれ以上である。
実際の印刷を見ればわかるが(オタカレ'99を見てもらえばわかる)、
まったくドットが見えない。オタカレは元が写真でないのでわかりにくいが、
それでも逆に元絵の荒さがわかってしまう位に細かいところまできれいに出てしまう。
これはまったくすごい。
画質という意味では「まったく問題無い」と言うよりも、非常にきれいだと言える。
この面だけで言えば、まさに一押しのプリンターであるといえる。

        ・・・ところが・・・

このプリンターにはカタログでは語られないいくつかの問題がある。
そのうちいくつかは、場合によっては致命的とも言えるものである。

        ・・・

1、インクが裏映りする
カラー印刷された部分の紙の裏側を見るとわかるのだが、インクが裏側まで
染み出ている。そんなにひどくはないが、見える。
これはどういうことを意味するかと言うと、「薄い紙では両面印刷が出来ない」
ということである。
悪い紙を使ってなら文句も言わないが、メーカー純正の、しかも相当に良い紙を
使ってでもこうなのだ。これはいかん。
今まで使っていたキャノンのプリンターではこんなことはない。

ちなみに、今年から官製年賀状の一部がインクジェット対応用紙を使ったものに
変わったが、これ位の厚みがある紙でも若干映る。
(この対応紙の年賀状にはきれいに印刷出来る。さすがは「対応」と書くだけは
ある。普通の年賀状とはかなり印刷結果に違いが出る。ただ、ペンでその上に書く
のには引っかかりがありすぎて良くないが。)

これは、エプソンのインクが浸透性が高いのが原因であろう。
キャノンやHP(ヒューレット・パッカード)のプリンターはインクと
プリンターヘッド(印刷するところ)が一体型なので値段が高い反面、
インク交換時にヘッドも交換出来るので、粘性の高い=目詰りのしやすいインクを
使えるが、エプソンはインクのみの交換でヘッドが交換されないため、粘性の高い
インクは使えない。そのための弊害だといえるが、コピー用紙で裏映りが出る
というのは困る。両面印刷が必要な用途では絶対に使えない。

        ・・・

このエプソンのプリンターは、相当に紙を選ぶ。
先に書いた通り、年賀状では対応紙かどうかで大きな違いが出るし、
スーパーファイン用紙という専用用紙とコピー用紙でも大きな結果差が出る。
それは主に紙のきめの細かさによるインクの滲みの差によるものだが、
白のきれいさにもよる。専用/対応用紙は元々の白がきれいなのだ。
これにより、細かいドットがはっきりすると同時に白がくっきりするので
全体の絵がきれいに出る。
「普通紙も専用紙も超写真高画質を実現」と書いてあるが、それは嘘だ。
紙の違いによるが質の差は歴然だ。

また、エプソンのインクは耐水性の無いインクらしい。そのため、ちょっとでも水に
濡れるとインクが染み出してしまう。キャノンやHPのものは耐水性インクなので
そんなことはないらしい(キャノンでは、さらに薬品を塗布することで耐水性アップ
処理もする機種がある)。これもインクの質を選べないエプソンの弊害である。
まあ、印刷物が濡れると言う状況はそうはないにしても、葉書ならありえること
なので、耐水性はあった方がよい。

        ・・・

2、印刷コスト
1枚当たりの印刷コストはインクカートリッジの値段を印刷出来る枚数で割ることで
わかる。カタログ値比較ではエプソンのプリンターが一番安いと書いてあるが、
これも印刷設定によって大きく変わるので、あてに出来ない。
(大体、カタログ上の数値と言うのは自社の製品に良いように書いている
=公平な設定でないので、話半分で読む必要がある。)

最高の画質モードを使っているオタカレ'99を印刷した場合に何枚位印刷出来るか
と言うと、60枚である(インクの減り具合からの推測)。
1枚当たりを算出すると、
        1300/60=15円/枚
        (1300=カラーインク1本の値段)
位かかる。
オタカレはA4の半分だけがフルカラーである。ということは、全面に印刷すれば
倍かかることになる。
カタログ値では「きれい」の設定で15.8円/枚となっているので、本当はざっと
倍かかるということになる。昔のプリンターに比べれば十分安いが、
それでもカタログ値はいいかげんである。
美しさを得るにはインクの消費は仕方無いとは言えるが、もっと事実に即した
データを書いてもらいたいものである。
(余談;私が始めてカラープリンターを買った時は、熱転写型ではあったが、
1枚打ち出すのに軽く200円位かかったと思う。1本のインクリボンで3枚しか
打てないのだ。次に買ったキャノンのBJC−400Jでこれは100円位か。)

        ・・・

また、先に書いた通り、このプリンターは用紙を選ぶ。
従って、きれいな印刷をしようと思ったら、紙代もかかることになる。
専用用紙はコピー用紙の10倍高い。1枚8円近くもするのだ。
(コピー用紙なら500枚450円位で手に入るが、専用用紙は安くても100枚
800円だ。)このことも頭に入れておく必要がある。
インク消費量であるが、専用紙を使う方が普通紙を使うより少なくなるような
気がする。オタカレテスト時は普通紙に印刷していたので、
印刷できた枚数がもっと少なかった感じだ。

アルプス電気というところの出しているプリンターMD−5000という機種では、
特殊処理によって普通紙の目を塞いで高画質印刷を可能にしている。
こういうプリンターなら普通紙でも良いので、インク代は高くても紙代で
稼げるので、かえって安くなるかも知れない(MD−5000はカタログ値では
インクは1枚30円)。MD−5000はそれはそれで別問題もあるようだけど。

        ・・・

3、色の再現性
これがこのプリンターの最大の欠点だが、実は画面に表示されている色と印刷の色が
かなり異なってしまう。プリンターではこういうことは良くある話なのだが、
前のキャノンのプリンターの方がよほど再現性が良かったので、これは納得いかない。
ようするにプリンタードライバー(ソフト)が悪いということだ。
折角のプリンターのハードの高性能さを不当に評価を下げはしないかと思ってしまう。

どこが悪いかと言うと、「オートフォトファイン!3」というエプソン独自の
ドライバーを使うと色がごてごてになってしまう。色のめりはりが付きすぎるのだ。
特に赤色が強調されすぎる。
逆にWindows95の持っているICMという色合わせ機構を使うと、色が薄くなりすぎる。
もちろん、細かく設定を変えていけば合うようになるのかも知れないが、
そのために何枚も打ち出さなければならないのでは話にならない。
オタカレ'99は、オートフォトファインでは色がむちゃくちゃになるので
結局ICMを使っているが、ちょっと色が薄めなのが満足いかないところである。

他社のプリンターは、キャノン以外は実際に使ったことは無いが、店頭の印刷サンプル
などを見る限り再現性は良い感じである。

        ・・・

4、おかしな動作
実は、買って1週間目でプリンターがまったく動かなくなった。
Windowsからの印刷はもちろん、状態チェックも出来ない。
自己チェックをさせても動かない。こりゃ、いきなり故障かよと思っていたところ、
インクを交換したら動くようになった。

確かにこの時インク切れのランプは点いていたのだが、それが点くとまったく
動かなくなるのである。自己チェックする時にも印刷をするがインクがないから
駄目、ということである。

でも、インクがなくてもプリンターの状態チェックは出来なければおかしい
ではないか。さらに、前日、電源を切るまではそのランプが点いていても印刷
出来てたし、状態チェックではまだ少しインクが残っているようだった。
これはどういうことだ?

結局、こういうことらしい。
印刷途中でインクが残り少なくなったら、電源が切れるまではそれを使うことを
許すが、一度電源が切られたら絶対に使えなくする。
また、インクがない時は、そこでプリンターが完全に動作を止めてしまうので
Windowsからの状態チェックにも反応しなくなる。

今のプリンターは本体の価格が下がりすぎたために、それでは利益が上がらずに、
消耗品である紙やインクで儲けているという事実がある。
これはコピーも本体では儲からず、トナーや保守で儲けているというのと同じである。
だから、本体の値段は急激に下がったのに、インクは余り下がらないのである。
そして、メーカーとしては出来るだけインクを買わせたいのである。

これって、はっきり言って、非常にせこくないか?
インクが残ってても使えなくするなんて、詐欺にも近いことだと思うぞ。

        ・・・

5、添付ソフト
添付ソフトはほとんど使いものにならない。半分これを目当てに買ったのだが、
期待はずれ。

画像処理プログラムは高機能な割に説明書がないのでわからない+遅いし、
カレンダー作成プログラムは95に正式に対応してないのでファイル名で
ロングファイル名が使えないし、年賀状作成プログラムは細かい印刷位置や
フォントの大きさの設定が面倒(元の設定ではちゃんと印刷出来ない)+住所を
一から打ち込む必要ということでだめ。

結局、画像処理プログラムは別のフリーウエアを使用。カレンダーはExcel97を
駆使して作成、年賀状はWORD95で画像を印刷、住所は自作プログラムで
キャノンのプリンターで印刷である。

かろうじて使えたのは画像をサムネイル=縮小画面で一覧表示するするものだが、
これもフリーウエアで同様のものが出ているので、あえて必要ではない。
結局何1つ使えるものはなかったのである。

そうそう、年賀状そのものが3枚付いていた(もちろんインクジェット対応用紙の
もの)。これ位だろうか、使えたのは。

        ・・・

6、その他
これは悪い面と言うより、その他の性能の話。
印刷速度は、一番きれいなモードにしない限り遅くない。
HPのプリンターのようにものすごく速くはないが、十分な速度である。
葉書半分位(年賀状位)なら2分以内、オタカレで1枚5〜6分くらいか。
(DOS/V,Windows95-OSR2.1,K6-200MHz,64M-Memory,Excel97で16bitカラー画像を
張り付けて印刷した時の値。)
以前使っていたキャノンのプリンターといい勝負のような気もするが、
こちらの方が解像度が8倍高いことを考えると、8倍速い計算になる。
オタカレ2部(26枚)を印刷するのにかかった時間は4時間。
途中停止無しである。一応それくらいの時間は連続動作させても問題ないようだ。
この時の1枚あたりの印刷時間はおよそ10分。
1枚づつより遅いのは、Windows95のメモリースワップというもののせい。
一度に大量印刷はせん方が良いということだ。

ちなみに、試し印刷ではむちゃくちゃ速い。A4 1枚30秒位か。
しかし、試し印刷は本当に試し印刷なので、細かいところや発色性が
まったくわからない。単に印刷場所があっているか位のチェックにしか使えない。
それから、このプリンターはモノクロでは速くないので、モノクロ印刷も重視するなら
キャノンやHPを絶対にお勧めする。エプソンのプリンターは基本的に
カラー専用機だ。

        ・・・

印刷音は静かではない程度。うるさいと言うほどでもない。
高音の多い動作音である。

図体の大きさは普通。ただ、前面の紙受けを折り畳めるので、
利用時には幅を取るが、収納時には小さく済む。これは良いところ。
ちなみにキャノンのBFシリーズはA4なのにとてもでかい。
HPのは全面給排紙しなので場所を取らない。
前面給紙はスペース的には有利だが、印刷する時に紙を大きく曲げなければならない
のが欠点にならないか。この点PM770Cは後ろ給紙・前排紙だが、ほとんど水平
なので紙が折れ曲がらない。これも良いところ。

・・・という代物である。
良い面もあるが、悪い面も多くある。特に悪い面が目に付くところだけに
困ったものである。
いくらドットが細かくてきれいであっても、色がおかしければどうしようもない。
動作がおかしい、添付ソフトが使えんのも問題である。
こういう面で、このPM770Cは手放しではお勧め出来ない、と言わざるをえない。

もしカラープリンターを買うのであれば、宣伝に踊らされず、実物の印刷を
見て決めていただきたい。そして、多くの場合添付ソフトは役に立たないので、
他のプログラムでちゃんと使えるかを確認した方がよい。

ちなみに、定価/性能的に見て、このPM770Cと同クラスの他社の製品としては
        キャノン        BJ−F600/800
        HP            DeskJet 895Cxi
などがある。店頭デモを見る限り、HPのが良さそうであった。
(これらは最近値崩れしているようである。EPSONは崩れてない。
やはりEPSONが売れているということか。)

出来れば買い換えたいという気持ちがすでにあるが、ひょっとするとHPやキャノンも
買ってみると荒が見えるかも知れない。誰かに買ってもらってレポートして欲しい
ものである。

くれぐれも焦って買って後悔しないように。
くそぅ(←お下劣)!!

        お勧め度        70%

余り色の再現性を気にしないが、印刷がきれいであって欲しい人向け

        ・・・終わり・・・

追伸:1年で壊れてしまった。耐久性に思いっきり問題あり!!
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