「シャカシャカ音の秘密」(1997/03/26〜03/27号)
3月5日
        某安売りの店にてKENWOODのヘッドフォンを買う。
        定価5500が1980円である。
        ヘッドフォンが欲しかったこともあり、買ってしまう。
ヘッドフォンといっても、耳に入れる、今流行のタイプではなく、
頭から被るような、密閉型という耳をすっぽり覆ってしまうものだ。

あぁ、それなのにそれなのに、これは完全に食わせものであった。
ハッキリ言ってカスである。
いや、正確に言えば、私には合わないものであった。

このヘッドフォン、周波数特性(前にやったよね)的には悪くはない。
自分で持っている耳に入れ型に比べても各周波数の音はよく出ている。
しかし、音は良くない。それはなぜなのか。

それは、音のバランスが良くないのだ。
このヘッドフォンは低音ばかり表に出て、中広域が隠れてしまう。
よく聞けば出ていることはわかるのだが、低音が異常に出すぎているために
聞こえにくくなってしまい、それがバランスを崩しているのである。

最近はやたら低音ばかりを強調するラジカセ等があるが、
このヘッドフォンもそういう時代の流れによって出てきたのかも知れない。
しかし、ハッキリ言って私にとって、この音の出方は「不快」であり
聞くに耐えない。
結局、1回聞いただけでお蔵入させてしまった。

そうそう、誤解の無いように言っておくが、密閉型だから低音ばかり出るのではない。
密閉型でも全域の音がバランス良く出る物ある。もちろん値段的にははるが。
密閉型は低音域を出るようにしやすい、だけである。

        ・・・余談・・・

KENWOODは通信機メーカーとしては世界有数のメーカーだが、
ことオーディオとなると、私の好みの音を出さない。
ステレオにしても、このヘッドフォンにしても駄目。
バランスが悪いとか軽いとかで、満足できない。
高級なものはどうか知らんが、普及価格のKENWOODは、私は絶対に薦めない。
こんなものでも、メーカー名をあげて「いい音でしょ」等と言う店員もいるが、
そういう店では絶対に買わない。音は(別に音に限らないけど)ブランド名で
決まるわけではないのだ。

やはり、オーディオ製品は、自分の耳で聞いて判断して買うのだ。
「そんなに音にはこだわらない」という人でも、悪い音と良い音の区別は、
実は両方聞けばつくものである。そして、―寸位高くても、長く使う気なら、
いい音の物を買った方が良い。
今回は、まったくもって大失敗の例である。

        ・・・

さて、耳入れタイプヘッドフォンは、中高音はよく出ているが低音域が弱い。
これは構造的に仕方の無いことである。
低音というものは、広い振動板でなければ出にくいからだ。

スピーカーを見ても、低音域のスピーカー(ウーハーという)は、
高音域のそれ(ツイーター)に比べて何倍も大きい。
周波数の低い物=波長の長い音を再生するには大きな振動板がいるということだ。

その理屈で言えば、スピーカーに比べ、小さなヘッドフォンでは低音は出ない
はずだが、必ずしもそうではない。私自信、今1よく理解していないのでうまく
説明できないが、耳に直接音を運ぶことができるヘッドフォンでは、
大きな振動板がなくても低音域を伝えることができる・・・のはずである。
スピーカーのように、人の耳に入るまでに距離がある場合には低音域の音を強く出す
必要があるためスピーカーが大きくなるが、ヘッドフォンでは不要である、
ということだったと思う。

そう、ヘッドフォンステレオに良く低音を強くするためのスイッチが付いているのは、
実はこのような耳入れタイプの欠点を補うためにあるのだ。

それでもやはり弱いと感じるなら、それ以上にするにはどうしたら良いか。
これはもう「音量をあげる」しかない。
弱い音も音量をあげればそこそこ出てくる。
実は、ヘッドフォンステレオからのシャカシャカ音の洩れる原因がここにある。

低音を出すために音量をあげる。そうすると、当然中高音も出る。
中高音という物は、一般的に人の耳に聞こえやすい。
さらに、物体を透過しやすいという特徴も持つ。
高音ほど遠くまで聞こえるのだ。
したがって、シャカシャカ音が気になってしまうのである。
そして、それは回りに人間に迷惑をかけてしまうことになる。

低音好きの人には、あの耳入れタイプのヘッドフォンは構造的にだめなのだ。
あの音の原因は、回りの迷惑を気にせず自分買ってな空間を楽しもうとする
人間が増えたという嘆かわしい問題の他に、物理的な問題もあったのである。

こういう時、密閉型は良いが、最近は男でも髪型を気にする人が多いので
頭から被るようなそれは敬遠され、さらに、密閉型はサイズが大きいという
点もあり、持ち運びには適さないのは事実だ。
(それでも最近は、密閉型をしている人も見るようになった。)

何とか密閉型の良さと、耳入れの良さを兼ね備えたヘッドフォンはできないものか。
それが、すべてを解決すると思うのだが。
耳をすっぽり覆うというのはどうだ?
密閉型耳の部分だけを取り外し、それを何とか耳にくっつけられるようにするのだ。
どうするか?そうさなぁ・・・

なんにしても、ヘッドフォンを買う時には、こういう違いがあるのだ、
ということ位、頭の片隅において、方を選んでもらいたい。
変に選ぶと、回りに迷惑をかけることになる、ということも考えて。

追伸:
ついでに、あのいやな携帯電話の音も何とかして欲しいけど、
あちらは「喋る」声もあるからなぁ・・・。
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