「続・センサーの話」(2000/01/21〜01/26号)
センサーの話の続編である。

続編と言っても、前回は1998年の10月に出したから、
実に1年ぶりである。もっとも、これを書き上げたのはその直後ぐらいだから、
ネタを書いてから1年以上出されなかったことになる。
実はこういうネタは他にもある。
1回にもっと出せばもっと早く出てくるようになるが、それではネタを書くのが
追い付かないのである。う〜ん。

それはそうと、こういうこともあろうかという、あの話を書いた後に、
自らがその関係の会社に入ったので、そのあたりの知識がさらに入ったからである。

とは言っても、私自身はそのあたりの開発担当ではないので
聞きかじりの情報のみである。ということで、前よりかはずっと短い話になる
ことであろう。

        ・・・赤外線センサー・・・

1口に赤外線センサーと言っても、実際には大きく2つの方式がある。
1つは前に書いたとおり、熱を持っている物体は必ず赤外線を発生している
ということを利用したもので、これをPIR(Passive Infra Red;綴は適当)
と言い、もう1つは赤外線を放射してその反射もしくは透過を調べるもので、
これをAIR(Active Infra Red)という。

もう少し詳しく書こう。
PIRは単体で使われる。
普段の周囲の温度(による赤外線発光量)を記録し、それからある速度で大きく温度が
変化したときに人が来たと判断する。変化で調べるのは、長時間その温度で
存在する物は人ではなく、他の発熱物体(例えばヒーター)と思われるから
である。また、簡単なPIRでは温度そのものは解らないと言う理由もある。
この記録とか判断のために、中にはマイコンが入っている。
どういう変化があったら人が来たの設定こそがメーカーのノウハウである。

温度変化を元にするので、逆にいうと自然界の温度変化に弱い。
雨や雪、四季による温度変化だ。
特に日本は全ての条件が良く変わるので、対応が難しいらしい。
だから、設置する現場現場に合わせて設定を変えるのである。

PIRでは効率良い赤外線の収拾が必要なので、センサーの回りにトンボの目のような
複眼レンズを配置し、広い範囲の赤外線をセンサー上に集めて検知しようとしている。
虫眼鏡で光を集める原理である。カバーの下にレンズがあるので、普通は見えない。

        ・・・

AIRは光を出す装置と受ける装置の2つが1対になる(中には見かけ上1つで行う
ものもあるが、発光と受光の2つのを1つの装置に収めているだけ)。
この間に赤外線が走っており、これをなにかが遮ると報告する。
糸の替わりに光を張ったものを思えばわかりやすい。

この2つ、実はぱっと見で識別出来る。
窓が白のものはPIR、黒のものはAIRである。
また、PIRはほとんどが屋内、AIRは屋外という使われ方をする。
PIRはその原理上温度変化に弱いため+余り広い範囲を1つでカバー出来ない
ためで、AIRなら1対の装置の間の距離は何10メートルも離すことが出来る。

具体的な例をまとめてみよう。
PIR
        屋内警戒(郵便局や銀行)

AIR
        建物の外周警戒,自動蛇口(駅や高速道路の蛇口に増えている)
        自動水洗便所、
        自動ドア開けよ!センサー、
        自動ドアのドアの途中で人が止まっているセンサー

自動ドアは2つ書いているが、これはちょっと意味が違うので2つに分けた。
自動ドアを最初開けるのは扉の上側についており、
開いたドアの上で立ち止まっているときにドアを締めないようにしているのは
ドアの膝位の高さに小さな穴が開いているものが多いが、
ここにAIRが入っていて検知している。
(まあ、メーカーによっては違うかも知れないが、O社の物はそう。)

トイレの自動水洗は、男子小便器用は普及しているが、女性用は
実は一時普及しかけて、今はまた手動に戻っている。
理由は、あのセンサーの窓が除き窓に見えるから、だそうだ。
女性の心理は実に微妙である。

一般的見分け方としては、基本的に、黒窓のものはAIR、白窓はPIR。
最近はけっこう色々なところに使われているので、自分が近づいて何か自動的に
動いたりしたら、センサーがあるか見てみると面白いだろう。

        ・・・

ちなみに、防犯用センサーというか人を認識するセンサーには他のタイプもある。
超音波の反射によって調べるもの(PIRに近い)やカメラによって得た画像を
分析してその中に人が写っているかを調べるもの(人間の判断に近い)などがある。
前者はPIRと組み合わせたものが使われ始めている。
後者はまだ出始めたばかりで高価だが、人の認識においては他の方法より
確実度が高いので、特に重要な部分に置ける警戒には使われ始めている。

いずれの場合も、まだ100%完全な人間だけの識別は不可能なので、
誤報というものが問題になっている。人以外に反応してしまうのだ。
虫によるものが多いが、雨・雪、気温の変化だけで誤報することもある。
実際、警備会社に来る発報の3〜4割までもが誤報という結果も聞く。
自動ドアに使われる位なら誤報も構わないが、警戒中では誤報は困る。
(それによって経営が危うくなるほど、誤報による出動というのは、
警備会社に取っては重大な問題なのである。ちなみに、故意に誤報を出すと
ペナルティーを取られる。会社なら1回15万位か?)

将来は、2つ以上の方法の組み合わせや、もっと別の方法での識別が行われるように
なろう。もっとも、防犯業界というのはけっこうケチな部分なので、
「安くて確実に」と言われる。
このあたりはメーカーの苦労どころである。

防犯機器についての話も、いつか書くことがあろう。
ここだけの話だが、今私が設計しているのが正しくそれである。

        ・・・

ということで、予想どおり短い話であった。
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