「グランディア」(2000/01/12〜01/19号)
{ゲーム紹介}

        「グランディア」
        GRANDIA

        SEGA SATURN用
        CD2枚組

        GAME ARTS
        定価    ¥4800(メモリアルパック)
        買値    ¥2980(中古)

これが今(再び)はまっているゲームである。
家庭用ゲーム機「SEGA SATURN」用のロールプレイング・ゲーム。

ロールプレイング・ゲームといえば、今まで同社のLUNAR1/2を紹介し
絶賛したが、このGRANDIAも負けず劣らずすばらしい出来である。
(ちなみに脚本は全部同じ人。)

プログラム的には、LUNARシリーズが古いゲーム機からの移植だったので
SATURNの機能を十分に活かしたとは言えなかったが、
GRANDIAは最初からそれ用に作られたため、その機能を十分活かしている。

        ・・・

このゲームでは舞台が完全に3次元で表される。
画面に奥行きと高さがある、というのもそうだが、このゲームでは画面を
回転させられるのだ。画面の真ん中に主人公がいると、それをどの方向からでも
見ることが可能なのだ(上下は無理だけど、周り360度は一部の場所を除き可能)。

これは一見簡単そうで実はすごいことだ。
画面上の全ての物が3次元データを持っているということなのだ。
これに付いて詳細を書くと長くなるので省略するが、
要するに、全てのページが飛び出す絵本になっていると思えば良い。
それだけ凝っているということだ。

最初慣れない内はキャラクターが見えなくなったりしてうざったいが、
慣れるとおもしろい。回り込まなければ入れないような場所もあり、
3D表示はうまく使われている。
高さもちゃんと使われており、登り降りが必要な場所もある。
上空への大きなジャンプはないけど(これがあると「酔う」原因になるから
困ったもんではある。とあるジャンプ3Dゲームで酔ったことがある)。

        ・・・

さらに、このゲームでは効果音にも凝っている。
音の出る物に近づいたら音が大きくなり、離れれば小さくなるし、
左右への移動のある音もある。ステレオをちゃんと使っているわけだ。
非常に細かい作り込みだが、テレビに付いている普通のスピーカーでは
まず解らないだろう。ちゃんとしたステレオにつなぐかヘッドフォンで
聞かないと。ゲーム機をそんなんにつないでいる人がどれだけいるか、
―寸疑問であるが(もったいない)、こういうメーカーの姿勢には好感が持てる。

その一方で、このゲームではムービーがほとんどない。
その3Dを活かしたプログラムによるアニメーションがほとんどだ。
このゲームの場合はこれで良いと思う。
アニメーションでは3D感覚がでないので、世界観の統一が出来ないから。
少なくあるムービーは、3Dアニメでは表現しにくいところを補間してあるが、
ちょっと浮いた感じもある。
実のところ、オープニングは全てムービーだが、そこで見ることの出来る映像が
ほぼ全てのムービーである。オープニングではそれらを見ても何のことだか
解らないけど。

また、このゲームでもLUNARシリーズと同じく声優が喋るが、
ここまでするならもう少し喋った方が良いのでは?と思うところがあり、
ちょっと残念(ちなみに、ムービー内では一切喋りはない)。

でも使っている声優はなかなかすごい。
日高のり子/井上喜久子/納谷六郎/久川綾と書いても解る人にしか
解らないだろうが、けっこう有名どころのアニメの声優である。
特に井上喜久子さんの当てているキャラクターがぴったりで良い。
実はこの人の声が好きなので、わざと喋らせたりして、あぁ、幸せ(^_^;)。
(しかぁし、雑音が入るのはいかんぞぉ!)

戦闘シーンは半リアルタイム戦闘という新しいやり方。
最初は戸惑うがこれも慣れの問題。
戦闘後には獲得経験値などを表示する部分があるが、ここはちょっとうざったい。
LUNARの方がシンプルで良かったのだが。

システムでその他の話はLUNARとほぼ同じ。
迷路で迷わせて時間を稼いだり、セーブが面倒だったりということはほとんどない。
物語にのめり込めるようになっている。

見た目に凝ったゲームは中身がカスなことが多い中、
このGRANDIAは物語も非常に良く練られている。

        ・・・

GRANDIAの主眼は「冒険」である。

        「一人の少年の純粋な冒険心が世界を変える」

LUNARシリーズがどちらかというと、先が見える物語を追っていくという感じで
あったのに対し、GRANDIAでは最初は主人公の冒険のみが語られているよう
である。それが後々全てが結び付いてゆく。

最初に物語のきっかけは解るものの、それより先の話はなかなか見えてこない。
毎回毎回のイベントをクリアしていくことでほんの少しずつ見えてくる。
その中では、登場人物との出会いと別れもある。

話の展開は、一言で言えば意外な展開である。「ここまで来るか!」と言う感じ。
小さな、一見関係なさそうな話から最後の話、全部のエンディング迄の
持っていき方は見事である。
エンディング後の10年後・・・も良いけど。
話の見え方が余りにゆっくりなので、いらちな人は我慢出来ないかも知れないけど。

実は物語の主題的にはLUNAR1にちょっと似ている。
くわしくは書かないが「人間に期待する」と言う話である。
「そこまで期待出来るか?」などという突っ込みはともかく、
良い話ではある。

もはや映画の域にまで達しているのではないか?と思えるほど優秀な作品であるが、
そう言えば、全体的に宮崎駿の作品に似た感じがある。
映像的にも物語的にも、音楽的にも似てるかな。
風の谷のナウシカ+天空の城ラピュタという感じ。
感覚的に言えば、LUNARが長編アニメでGRANDIAは映画だな。
音楽もオーケストラ演奏だし。

終えるまでにかかる時間は60時間以上。
しかも、ムービーほとんど無しの正味の時間だ。
その気になれば少しは短く出来るだろうが、逆に話に直接関係なさそうなところも
回ったりするとこれ以上かかる。

けっこう作り込みが細かいので、そういうのを楽しんでるとそうなるわけだが、
最低でも50時間はかかるだろう。60時間でもけっこう短い方らしい。
平均は80時間位とか。100時間を越える人も聞く。
普通にやれば1月はかかるだろう(私も4週間べったりかかってる)。
じっくり腰を落ち着けてやる必要がある。
それだけの価値はある。

実はエンディングのところをビデオに録画してあって、
ときどき見ているが、何度見ても感動する。

        お勧め度        99%

100%でないのは、LUNARシリーズに比べて前半において物語が今一
見えにくいところで。まあ、ここは評価の分かれるところ。
シナリオの大きさや細かい作り込みを始め、非常に大作なので、
現在のゲームのレベルを知るにはもってこいかも。

ちなみに、「GRANDIA2」がSEGAの新ゲーム機DreamCast
に発表されることとなった。名前上は続編のようだが、
内容的・舞台的には全く異なるらしい。
どういうものになるか。
買いたいような気もするが、うちの家はゲームに対する風当たりが強いから
果たしてどうなるか。

追伸:
PlayStationにも移植された。
それを持っている人もぜひ買うべし。

        ・・・

で、この連載を始めた―寸前から、ほぼ1年ぶりにGRANDIAの
2回目のプレイを開始した(1/4〜17。60時間くらいで終了)。

1回目はシステムに慣れるのに苦労したとか、途中からは早く終わりたいがために
すっとばしたとかがあったが、今回は慣れていることもあって、
物語に集中出来たし、前回出来なかった登場人物の成長というのも
やってみた(いわゆる経験値稼ぎ)。

物語についてであるが、やはり良く出来ている。
2度目でも感動は変わらない。むしろ一層感動した。
(これ以降、これから始めようと言う人がいたらネタばらしになってしまうので
注意。)

GRANDIAの前半の主題は前にも書いた通り「冒険」であるが、
後半はこれである。

        「そのもの青き衣を着て、金色の野に降り立つべし。
         失われし大地とのきづなをつなぐ」

おっ、どこかで聞いた台詞ですな。
そう、宮崎駿の映画、「風の谷のナウシカ」の台詞である。
(細かいところは―寸違うかも知れない。)

「かつて人間が精霊と語り合えた時代、大いなる発展をしたが、
その強欲故に生み出した物によって滅んだ。
その後人はばらばりとなり、お互いの間のやりとりもなく、その種族の中だけで
閉ざして生きるようになった。
そんな時、1人の冒険者の純真な行動が失われた種族間の心を通わせ、
復活させられたその「強欲の象徴」を倒す・・・いや、全てのものの運命を
変えていく。」

あまりネタばらしをしないように書けば、このようになるのだが、
なんとなくナウシカに似ていると言うところはわかるだろう。
でも話自体は全く違うが。
わかりやすい基本コンセプトの上に実際の話があるので取っ付きやすいのかも
知れない(わかりやすい基本コンセプト」と言いながら、本当はこういう話って、
真剣に話すべきことでもあるのだが)。

前半は単なる冒険だったのが、後半この大きな主題へと結び付いていくのである。
その過程が素晴らしいし、細かい話もいいのである。
音楽の素晴らしさは書いたが、話的にもまさに映画並みのゲームである。

今回は不覚にもいくつかの場面で涙してしまった。
この感動をぜひ味わって欲しいものである。
1月位の時間を用意してでも。
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