「電子辞書」(2003/04/07〜04/28号)
{商品紹介}

        「電子辞書
         セイコーインスツルメンツ SR−9600L」
        定価    ¥38000(税別)
        買値    ¥24800(税別)

        「電子辞書 キャノン IDF−4000」
        定価    ¥38000(税別)
        買値    ¥22800(税別)

以前から電子辞書が欲しいと思っていた。

その理由は、会社で英語文献を読むときに辞書として、
もう1つは、オタクラの語彙を増やすためである。
(まずそうな表現に対し、他の表現を捜すためもある。
意外と表現には気を付けてるんよ、これでも。)
後者に関しては、家で書いているから必要なときに辞書を引いていたのが、
前者については紙の辞書を持っていくのもおっくうで、しばらくはインターネットの
辞書変換サイトを使ってはいたが、やはり面倒なので電子辞書を欲していたのだ。

しかし、いざ買うとなるとこれがまた大変であった。
最初はよくチラシなどに書いてある安い10000円以下のでも良いかと思ったが、
私が必要とするくらいの機能を持ったものになると、やはり3万近くする。
そうなるとボーナス時期を待たなくてはならなかった。

また、いざボーナスが出て買う段になると、今度はどれを買ったらいいかで
悩んだ。カタログだけではわからないのだ。
辞書の違いがある分にはわかりやすいが、ある程度の価格になると、
入っている辞書はほとんど同じ。
そうなると何を決め手にすればよいのか。

そう思っている中でインターネットで調べてみると、下記のサイトに
非常に詳しい電子辞書の紹介があった。
        http://sekky.tripod.com/icdic1.htm
電子辞書の紹介サイトでこれ以上のものはないだろう。

日本で電子辞書を出している会社は、セイコーインスツルメンツ(以下SII)、
キャノン、シャープ、カシオ、ソニーだけと思って良い。

私が必要とする機能は
        国語辞典
        漢和辞典
        英和・和英辞典
であり、これらの辞書を持ったもので、機能的な優劣を見て、
このサイトを読んで調べていく内に、候補は3つに絞られた。
それが、
        SII          SR9600
        キャノン        IDF−4000
        シャープ        PW9100
である。

これで店で触ってみて、また価格を見ることで、まずシャープが落ちた。
値段が少々高いこと(定価42000円/売値26000円)と、
キーボードがゴムでちゃちなこと、漢字辞書に意味が入っていない
(オタクラではこれが必要)ことが問題となった。
逆に、「家庭の医学」という本が入っているのには惹かれたが、
今回の目的には合わないのであえて無視した。

店頭で悩むこと1時間くらい、残った2機種の中で「まず」最終的に選んだのが、
SR9600であった(Lはラベンダー色の意味)。
IDF−4000に比べ、画面が少々広いこと、検索途中に
語句の意味の表題が表示されること、漢字辞書表示が横であったこと、
キーボードがしっかりしてそうなのが決め手であった。
価格的にはSRの方が2000円高かったのだが。

ここで「まず」と書いたのは2機種買ってしまったからではなく、
今手元にあるのがIDF−4000だからである。

なぜそうなったか。

        ・・・

これらの電子辞書の紹介をする前に、先に紹介した電子辞書サイトについて
書いておかねばなるまい。

このサイトの中でも、SIIの辞書やIDF−4000に付いては
        http://sekky.tripod.com/siinewdic.html
        http://sekky.tripod.com/revidf4000.html
にまとめられている。シャープPW9100についてもある。

非常に役に立つ紹介ではあるが、少々評価内容偏りが感じられた。
それは、
・初心者向けというよりパワーユーザー向け評価である
 初心者にそこまでいるか?と言う内容がありすぎ、選択しにくくしている。
・あまり本質でないようなことを重要視しているように思える
 (私が初心者だからそう思うだけかもしれないが)
 「例」クロスワードパズルが解けるか
 そんなことのために電子辞書をわざわざ買うやつがそんなにいるのか?
・外国人が使う上でどうだとか、英語を中心に考えている。
 作者の職業および住んでいる場所=沖縄という状況によるものであろうと
 推測される。これは、このサイトで書籍の英語の辞書に対する評価が
 充実していることからもわかる。
 別のこのような評価が悪いわけではないが、私のように日本語が主で英語が従の人
 には、この評価は当てはまらない。
・特にSIIに対して評価が甘い。

最後の件については、特に買ってから気づいたことであるが、
結構使いにくい点でも良さげに書いてあったりする。
本人曰く「SIIが好き」と言うことなので、思いこみがあるのだろう。

これから書く私の評価と問題にしている点が大きく異なる点も多くある。
人それぞれの評価という意味で比較してもらうと良かろう。

だから、このサイトで情報を得て絞り込んだとしても、最終判断の前には
必ず店で十分さわってから買うことが重要である。
そういう意味では電子辞書はインターネット通販だけでは買いにくい。
まあ、店頭で短時間触ってもわからないこと多いけど。
カタログスペック上「出来る」と書いてあっても、実際には使い物にならない
ことも多いから。

        ・・・

電子辞書の紹介に戻る。

まず一般論だが、同じ名前(の同じ版)の辞書がある機種では、
メーカーによらず内容は全く同じである。
これは、辞書そのものは辞書メーカーが作っているからである。

また同じ価格帯の辞書は、およそ大きさや重さ電池寿命も同じである。
(重さは少し違うこともあるが、100gは違わない。)

ということは、各機種間の違いは、画面(文字)の大きさ、縦書き横書き、
検索機能(辞書間参照)の充実ぶり、キー配置/入力しやすさ等によってくる。
特に検索機能の充実が鍵となると言っても良いだろう。

ここで、いくつかの点で両者の比較をしていこう。
なお、以下の説明では機能の名称については一般的名称にしており、
各メーカーが付けている名前とは異なる場合がある。
ますは似ている点から。

*辞書
SR9600(以下SR)とIDF4000(以下IDF)は辞書的にはほとんど
同じである。
        広辞苑第5版(逆引き付き)
        ジーニアス英和辞典
        ジーニアス和英辞典
        漢字源(漢和辞典)
        英語類語辞典
ここまでの辞書は名前的には両者全く同じだが、SRがジーニアス辞書が
第3版なのに対し、IDFは第2版である。これは、SRが2002年春発売の
最新機種なのに対し、IDFが2001年春の機種だから出た差であるとも言える。
第3版の方が内容が新しいのは間違いなく、新しい単語がよく出るらしいが、
すべての面で3版が2版を上回っているというわけでもなさそうである。
好みの問題、と言う感じでもあるそうだ。詳細は比較できなかったが。

類語辞典は両者内容が大きく異なる。SRはROGET IIという単独の辞書
を搭載しているが、IDFのは英和辞典を再構築しただけのものらしい。
どちらが良いかはSRでは使わなかったのでわからない。

あと、SRにはパーソナルカタカナ語辞典が付いている。いわゆる略語だけを
集めた辞書で、カタカナとは書いてあるが、アルファベットの略語も引ける。
FIFAやDVDも当然入っている。これは知識的には結構おもしろいものである。
しばらく眺めて遊べる。もっとも、一部は広辞苑でも引けるので、
単に牽きやすくなっただけ、とも言えるが。

一方IDFだけにあるのは広辞苑で図面が出ると言うことだ。
一部の語に対して図面が入っている(2600枚ほどらしい)。
動物名などを牽くとその絵が出てくるわけだ。所詮は低い解像度の白黒液晶なので
きれいさは望めないが、おまけとしてはおもしろい。

と言うことで、辞書的には両者の差は少ない。これは他のメーカーを見ても同じで、
辞書的に見て特徴があるSHARPだけである。
(英英辞書だけは各社違いがあるようだが、他の辞書はほとんど同じ。)
これは、同じ辞書にしておけば安心となのか、単に語数比較で一番多いものを
選んでいるのか、電子編集されている辞書の中では選択肢が少ないのか。
内容の比較というのはしにくいので、どうしても語数比較になりやすいから、
たぶん語数だとは思う。でも、実際には語の数え方によって語数は変わるし、
語数が多いほど1語1語の意味説明がすくなるかもしれないし、
辞書間参照が有効に出来れば語数以上に意味が出てくることもある。
だから、あまり語数の比較には意味がないと思うのだが。

SHARPは単独の電子辞書では後発のメーカーだが(電子手帳に辞書カードは
あったが)、その分他機種を研究しており、新機種毎に確実に良くなっていくことと、
辞書の良い意味での違いが売りだと思う。
もしもう1台買うとすれば、辞書の違いからSHARPを買うであろう。


*大きさ&重さ
両者とも小さいが思ったより重い。
カタログ上は電池を含めて約IDFが200g/SRが250gとなっている。
奥行きや幅はほぼ同じの両者だが(およそ15*10cm)、
薄さではIDFの方が薄い(14ミリ/SRは21ミリ)。
このおかげで、IDFの方が幾分小さく感じるが、大差ないと言うところ。

200gというのは微妙な重さで、手のひらで操作するには重くはないが
軽いとも言えない。そう、大きさ的には、両手のひらにのせて
キーを打つのが良いと思う。

筐体は両者とも金属で、強度的には問題ないと思う(というか「良い」)。
電子辞書は持ち運びも多いと思うので、この筐体強度というものは
重要である。


*電源
電池は両者とも単4電池2本(しかも両者ともPanasonicの同じ電池だった)。
持ちは25℃における連続使用で110(SR)/100(IDF)時間とあるが、
実際には両者ほぼ互角、連続使用はないのでもっと持つだろう。
SRにはACアダプタのオプションがある。デスクトップで連続使用するほどの
パワーユーザーにはいるかもしれない。

電源と言えば、IDFは電源キーを押さないと電源が入らないのだが、
SRでは辞書選択キーを押しても電源が入る。ちょっとした違いだが、
使い勝手にはかなりの差がある(もちろん後者の方が良い)。


*キーボード
SRはポータブルPCに近い結構本格的なキーボード、IDFは一見ちゃちそうで
その実結構押しやすいキーである。両者ともプラスチックキーなので
ゴムキーのようなふにゃふにゃ感はない。
両者ともタイプライター配列である(IDFには50音配列のIDF−4000J
もある)。

この両者、実は操作性というか打ち込みやすさに関しては大きな違いがある。
SRのキーはしっかりしているが、意外に打ちにくい。
その理由は、PCのフルキーボードと比べてみたとき、手前の1段目に文字キーと
全く同じ形で操作キーがあり、また数字キーがない分配列が上になっているため、
感覚的に位置があわないからだ。だから慣れないと(慣れる前に手放したけど)
打ち間違いが多発する。これは結構ストレスが溜まる。
キーが良いだけにブラインドタイプしたいのだがそれが出来ないからだ。
このあたり、操作キーが手前にあっても違う形であるIDFと大きく異なる。

操作キーの配置だけから言えば両者とも使いやすい場所にある。
しかし、形を変えたIDFの方が圧倒的に良いと言わざるを得ない。
少なくとも、そんなに早打ちしないのなら。

早打ちと言えば、SRにはいわゆる2キーロールオーバー機能があるので
2キーまでは同時押ししても受け付けられるらしい。
IDFはキーの早打ちはだめ。1キー1キーゆっくり押しが必要。
ちょっとストレスがたまることもある。
ゆえに、キー配置はIDF、キーの受付はSRが良いと言える。

        ・・・

*説明書
はっきり言って両者ともわかりにくい。
SRは説明が簡略化されすぎ、IDFはちょっとごちゃごちゃしている感じ。
よく読めばIDFの方が良いか。

説明書はどちらも結構な量があるが、実は後半半分(以上)は
紙の辞書にはあって電子辞書には入らなかった図面や表が書いてある。
これを見るためにわざわざ説明書を持ち歩く奴がどれほどいるか?
という気もするが、どちらも書いてあるということは、
辞書メーカーからの要請なのかもしれない。


*その他
いきなりその他機能の紹介であるが、まとめておく。

                        SR            IDF
クリック音ON/OFF   メニューから    メニューから
液晶濃度調整            メニューから    ボリューム
ロ−マ字/仮名入力      メニューから    メニューから
文字ドット切り替え      キー            メニューから
自動電源OFF          固定            メニューから可変
電卓機能                あり            なし
リジューム              あり            あり
オンラインヘルプ        なし            あり

キーを押したときのクリック音のON/OFFは当然のごとく両者にあり。
クリック音自体はSRの方が大きいか。

液晶の表示濃度調節は、SRとIDFで方法が異なる。どちらが良いと
比べるほどの差はないが、SRは電池交換すると毎回リセットされるのに対し、
IDFはボリュームなのでそういうことはない。
液晶の表示濃度は周囲温度で結構変わってしまうのだが、こういう時の調整が
IDFの方が楽というのはある。

文字ドット数は、見やすさや1画面の表示文字数を変更できるので
結構重要な機能である。SRはその場でキーで切り替えできるので
良さそうに思うかもしれないが、実際にはそんなに切り替えはしないので
メニューでも問題ない。一部文字をその場で24ドットに拡大する機能は
両者ともあるし。
この文字ドット数に関しては実はSRには隠れた問題もあるのだが、
それに付いては後述。

文字入力をローマ字と仮名で切り替えることは両者とも出来る。
ところがどっこい、この仮名入力は全く使い物にならない。
PCの様に1つ1つのキーに仮名が振ってあるなら良かったのだが、
キーの数が足りないからか、1キーでア行ならアイウエオすべてを入れる方式なのだ。
そのキーを何度か押すことでその行で変わる入力方法だ。
MDのリモコンによる仮名入力方式と同じだが、どうも携帯電話も同じらしい。
まああっても良いが使うことはまずないだろう。
IDFには先にも書いたとおり50音配列モデルが別にある。
50音配列なので、PCの様な仮名ではないのが残念ではある。

一定時間キーを押さないと電源が切れる自動電源OFFは両者ともある。
IDFではさらに時間が可変出来る。
差と言うほどの差ではないが、こまめに電源を切りたい人には
IDFの方が短時間設定できるのでよいかも。
電池の持ちはIDFの方が若干短いが、この自動OFFを有効に設定すれば
事実上同等以上の持ちを実現できるであろう。

電卓機能は、SRにだけあるが、「ある」と「使える」は意味が違う。
数字の入力がノートPCのテンキーと同じと書けばわかるだろうか、
結構打ちにくいのだ。しかも機能的には普通の電卓と全く同じ程度なので、
不意に電卓が欲しいことはあるから、あれば結構だが、
果たして入っていることにそれほど意味があるかと言われれば?である。
個人的には机の上には電卓はいつもあるので、電卓くらい別に持ってるから
いいよなぁ、とは思う。

リジュームは、電源を入れたときに最後の画面に戻るかどうかである。
これは両者ともある。ただし、SRでは辞書キーで電源が入るが、
この時リジュームせずに辞書入力画面に飛んだと思う。
これも使い勝手の上では良い。

ヘルプはIDFだけの機能だが、はっきり言って暇つぶし以外には見ない。
場所場所で見ることが出来ないためだ。
ないよりましってもんだが、あまり見やすくもない。
使い方は頭にたたき込んだ方がよい。

        ・・・

ここまでの機能(機構)は両者ともほぼ同じであったが
(同じ価格帯でそんな大きな差があったら売れないとは思うが)、
これから先は大きな違いが出てくる。
要するに、これからが「自分に合った」電子辞書を選ぶ上でのポイントとなる。

*画面表示
液晶の見た目の大きさはSRの方が若干大きい程度だが、解像度的には倍も大きい。
IDFが240*160なのに対し、SRは240*320もある。
その分一度に見られる情報量が多い。
特に英語表示における情報量の差は圧倒的である。
ただ、これも詳しくは後述するが、SRは検索中も画面下半分に常に
訳語を表示するので、検索対象候補の表示数は両者とも変わらない。

表示文字は、どちらも12ドット・16ドット切り替え可能であることは書いたが、
SRは日本語辞書に入ると強制的に16ドット表示になってしまうので
(12ドットに出来ない!)、結果IDFが横240/12:20文字*縦160/12:13文字
=260文字:1画面なのに対し、SRが横240/16:15文字*縦320/16=20=300文字と
差が減ってしまう。ちなみに、12ドットでも可読性は下がらない。
(むしろ急に16ドットになることの方が違和感がある。)
また、スクロールをすれば良いだけなので、両者それほど大差はないとは思う。

しかし、日本語辞書表示において両者には根本的な違いがある。
IDFは縦書きになってしまうのだ。SRでは英語も日本語もすべて横書きで、
見た目統一されていて良い。ところが、IDFでは英語は横書きなのに
日本語は縦書きなってしまうのだ。確かに紙の辞典はそうなっているが、
わざわざあわせる必要はなかったと思う。
「縦書きの方が見やすいというご意見でそうした」と書いてはあるが、
下位機種のIDF−3000では縦横変換できるというから、明らかに
手抜き仕様ある。
それともIDFは縦の解像度が低いので横にした方が情報量が増えるとの
判断だろうか。

また、縦書き横書きが変わると言うことは、スクロールキーも変わると
言うことである。まあ、これは画面を見ていれば自然と押すキーも変わるので
それほどの問題ではないが。

この縦書き表示のさらに困った点は、その中に含まれる漢字コードの数字や
英語綴りなどは横書きのまま縦表示されると言うことである。これは見にくい。
今後の機種では是非に切り替え可能に戻して欲しい。
IDFの最大の欠点がここにあると言っても過言ではない。


*検索機能:語句検索
検索と一口には書くが、実は電子辞書における検索には2つの側面がある。
1つは最初の語句検索で、もう2つは辞書間参照である。
語句検索にはワイルドカード検索という機能もある。

最初の語句検索では、両者ともすべての辞書でインクリメントサーチとなっている。
インクリメントサーチとは、1文字入れる毎に、そこまでの綴りが一致すつする単語を
表示する方法である。
だから、全文字打ち込まなくても目的語が探せる場合も多々ある。
これは便利だ。

一致する候補の選択は、カーソルキーもしくはIDFではSHIFT+数字キーで
直接選択出来る。たくさん候補があるときはページ送りも出来る。
SRには電卓用以外の数字キーがないため、たぶん直接選択は出来ない。
このあたりはIDFの方が上か。

英語検索の場合、SRでは画面下半分に一番上の候補の訳も表示されている。
画面ドット数の多さを有効に生かした機能である。
これをプレビューというらしい。
そこそこ役に立つが、それが出ないIDFが劣っている、と言うほどでもない。
また、この表示のためにキー入力への若干レスポンスが遅く感じる。
2キーロールオーバーは実はこのためにあったのではないか?と思う。
(表示処理中のキーの取りこぼしをしないために。)

英語検索ではスペルチェックというか、曖昧スペルに対する補完機能も
重要視されるらしい。IDFでは入力して目的の語が出ない場合は
そのままスペルキーを押せばよい。SRでも同様なのだが、残念ながら
スペルキーがないので、メニューからスペルチェックモードにする必要がある。
ちょっとした違いなようで大きく異なるところである。
英語重視のSRにしては片手落ちな仕様である。

SRでは英語の例文検索というものもある。
単語を引くと例文が出てくるが、逆にある単語を使った例文だけを拾い上げる
と言う検索が出来るのだ。英語作文をする人には便利かもしれない。
(私には不要。)
日本語でこれが出来ればいいのだが。

これは別に成句検索というのもある。これは両者にあるのだが、
ある単語を使った決まり文句を捜すものである。
英語は読むのがほとんどの私にはこちらだけで十分である。
これによく似たものに慣用句検索があるが、これは日本語のみで
入力した言葉を含む慣用句を広辞苑の中から調べるものである。
成句と慣用句、英語の日本語の違いなのだが、呼び名を何とか1つに
まとめられんものか(参照の場合のキーは同じになっている)。
検索対象の辞書が違うというのはわかるが、使う側からすれば同じようなもの
なのだが。

漢和辞書における検索では、紙の辞書と同じ音訓読み、部首画数、総画数はもちろん、
両者とも部品検索で出来るので読みのわからない漢字も楽に引ける。
部品検索とは、漢字の中の読める部分の組み合わせで指定する方法で、
たとえば「硯」という漢字なら「いし」と「けん(みる)」で捜すのである。
ちなみに、一般的に訓読みの方が絞りがきつく効くようである。
また、このときにもインクリメントサーチは有効である。

ただし、SRでは1つこの漢和辞書検索に問題がある。
先に述べたとおり、ここではいろいろな情報から検索可能であるが、
SRでは一番上の欄が部品検索になっているのだ。
これは、「漢和辞典で牽くほどの漢字は読めないに違いない」ということだろうが、
はっきり言って大きなお世話だ。やはり一番使うのは読みからの検索だ。
IDFでは読み、画数、部品の順であり、使いやすい。
(SRは部品、画数、読みの順。)

そういえば、検索の時にあれとこれと両方含む語句を調べることはよくある。
この場合は「&」を使って指定するのだが、SRが&キーが独立してあるのに対し、
IDFはシフトキーを押しながらのキー押して入力する。
ちょっと面倒である。
(SRには1つのキーに複数の機能が割り当てられていてシフトで切り替える
ようなことがない。)

IDFでは広辞苑、漢字源、英和、和英辞書すべてから探すという機能まである。
ただ、今1つ有効な使い方は思い浮かばない。
もう1つ、IDFでは図面だけの検索も出来るので、何が入っているのか見ていても
楽しい(図面から広辞苑のへのジャンプも出来る。)


*辞書間参照
両者ともジャンプ機能と呼んでいるが、ようするに
これは一度牽いた辞書の検索結果の内容に対して、別の辞書で牽き直すという
機能である。
たとえば、「新潟」と検索して、その内容の中に「中部地方」とあった
場合、「中部地方」で再検索する出来るかどうかである。
この機能は「いろは2001」のネタ調べにも重宝した。
(「潟」と「瀉」ね。)

IDFでの辞書間参照は、すべての辞書に対して行える。
先に例を挙げたような同一辞書内はもちろん、広辞苑から和英、英和から広辞苑
等も当然のごとくできる(もちろんその後に対する項目があればの話だが)。
広辞苑の図面表示や英和における例文参照などもこれによって行う。

その参照設定は、ジャンプキーを押してからカーソル語句を選ぶだけと
至って簡単。
(ただし、カーソルが移動するからといって、すべての語句で辞書間参照
出来るわけではないし、語句の間に成り立ち上切れる場所に入る"-"があると
その前後をまたいだ語を選択出来ないなどの問題もある。)

また、同じ言葉を英語ではどういうのか、難しい単語の意味を
詳しく知るときなどにも重宝する。単語の意味の中に出てきた別のキーワードを
持って検索をするなど、言葉のつながりを選んでいくだけでもおもしろい。

一方SRでは同一辞書間参照はかろうじて出来るが、
語句が限られている(出来る部分にだけカーソルが動く)。、
他辞書間は広辞苑から漢和が出来るのと、他の辞書から英和辞書への参照が
出来るだけで逆は不可能である。
これで「ジャンプが出来ます」などと書かれては、
はっきり言って「困る」。

この辞書間参照に関してはIDFが圧倒的に優れている。
IDFに比べればSRは出来ないにも等しい。
だからこそ最終的にIDFを買ったわけである。

辞書間参照の派生であるが、引いた単語を使った複合語、慣用句や決まった言い回し
(成句)がある時は、画面上にそれらがある印が出るので、
それらに一発で飛ぶキーが両者共にある。
それは良いのだが、なぜに複合語と慣用句・成句でキーが分かれるのかがわからん。
両方ある語なんて見たことないのだが。


*検索機能:ワイルドカード検索
一部の文字がわからない場合、その部分をワイルドカードにして検索する機能である。
PCを触っていた人になら、MS−DOSのファイル名検索で使ったあれと言えば
わかりやすいか。これも両者で差がある。

これについては件のホームページに詳しいが、同じようなことを区分けしてあるので
簡単にまとめれば、次のように言える。
IDFでは1文字ワイルドカード?も複数文字ワイルドカード*も両方使えるが、
SRは前者のみ。SRでは文字数がわかっている場合にしか使えないと言うことだ。
IDFでは、ワイルドカードを含むときの検索でもインクリメントサーチ効く。
ちなみに、広辞苑の逆引きはIDFではこの*を使うことで実現されている。
(SRは別処理だと思う。)

日本、英語ともに使える、慣用句、成句検索でも使えることでは差がない。
(そもそも、慣用句、成句検索なんぞワイルドカード検索そのもののような
気もするが。)

この機能が件のホームページで「クロスワードパズルが解けるかどうか」
と言われていることであるが、そういうことをする人には重要だろうが、
はたしてそんなに言うほど重要な機能なのか。

広辞苑の逆引き、慣用句、成句検索が出来るのであれば、
ワイルドカード検索なんぞ、そんなに多用する機能とは思えんのだが。


*履歴
一度検索した語句の履歴を取るのがこれである。
再検索の時に役立つ。

SRでは全辞書共通で記録され、IDFでは辞書毎に記録される。
どちらが良いかと言われたらSRである。容量的には辞書別に30のIDFの方が
上なのだが、履歴を見るのにわざわざどの辞書だったかと捜すのが面倒なのだ。
もっとも、複合検索を使った場合は複合検索の履歴に入るので、
常日頃複合検索を多用していればそこにまとめて入って同じなのかもしれないが。

それはそうと、この履歴には両者とも致命的な欠陥がある。
それは、参照した先は履歴に入らないと言うことである。
(参照だけでなく、前後見出しを牽いたときも、履歴に残るのは最初に検索した
語句のみ。)

これは非常に使いにくい。辞書を見る場合、最終的に欲しいのは最後に見た
語句の説明であることが多い。それなのに参照元しか記録されないと言うのでは
もう一度参照をやり直すことになって面倒だ。

まあ参照が何度行われるかわからないので、そのすべてを記録するのが大変、
というのはわからんではないが、シャープの辞書では出来ているし、
また、最終的な記録をユーザーに行わせるという手もあるはずだ。
これは何とかして欲しいところである。


*単語機能
いったん牽いた単語を別のところに引き出しておくのが単語機能である。
よく見るであろう単語をしおり的に保存しておけるのだ。

これはIDFにしか存在しない。
また、その中からの検索も出来る。
この単語登録は辞書別に100個まで出来る。

IDFでは、この単語機能があれば先の履歴の代わりになる。
ただ、100語以上記録する場合には削除と必要となるので、
履歴のように古いものから消されると言う使い方は出来ない。
単語は辞書毎にも1単語毎でも削除できる。

同じ語句を何度も見るかという疑問はあるが、英単語の勉強などには
使えるのかもしれない。もっとも、その場合100語では足りないとは思うが。

しかし、この単語機能にも大きな欠点があった。
この単語機能で登録された語句が入った複合語や慣用句があるとき、
そこへ一発キーで飛べないのだ。
(履歴から牽いたときは飛べる。)
普通に検索したときには出来ることが単語登録すると出来なくなる。
これは欠陥とも言える仕様だ。
単語帳が本当に元の辞書からそのページだけ切り取ってくるような作り
だからなのだろうか。しおり的なもので良かったのに。
これはIDFの数少ない欠点の1つと言えよう。

        ・・・

で、全体の感じであるが、以下のようになろうか。
IDF
        日本語と英語のバランスが取れている
        特に検索が非常にすばらしい

SR
        英語を重視するなら良い(リアルタイムで訳が見えることと画面の広さから)
        カタカナ略語辞典が意外に使える
        機構面ではSRの方が画面が広い、ACアダプタが使える、
         キーの作りがしっかりしていることからパワーユーザー好みなかも

日本語重視ならIDF、英語重視ならSRと言えるだろう。
とは言ってもIDFの英語が通常の利用において弱いわけでもなく
(実はIDFでは画面表示の英語/日本語切り替え出来る機能まである。
日本語を学ぶ外人に受けるかも。)
そうなるとやはりIDFの方が、私には合っているわけである。

実際に、この電子辞書を買ってからは会社には携行しているし、
帰りの電車ではいろいろと語句を牽いて楽しんでいる。
見かけた、ちょっとでもわからない単語は片っ端から引いて調べている。
また、辞書間参照を使って言葉のつながりも調べるのも楽しい。
携行出来ることや素早く次の参照が出来るのは紙の辞書では出来ないことだ。
安いとは言わないけど、持っていて決して損にはならないものと思う。

はてさて、これからオタクラの語彙が増えるかどうか、こうご期待。

        おすすめ度      SR9600            60%
                        IDF−4000        80%

いったんはSRを買った私であったが、辞書間参照のあまりの貧弱さにあきれ果て、
お店に「その機能が欲しいので交換して欲しい」と無理を言って、翌日に交換して
もらったのがIDFである。

SRも決して悪い機種ではないが、
少なくとも私のような日本語中心の使い方で辞書間参照を重要視する
人には問題がある。

SRが英語重視だとは言っても、IDFに比べての話であって、
他の、英英辞書などを積んだ本当の英語重視機種に比べれば
遙かに弱いわけだから、英語が欲しいならそういった機種も買うのが筋であろう。

しかし、最初の一歩としてはSRもIDFも両方そこそこ使えるので、
共に良い機種だとは思う。

元値は同じだが、SRの方が新しいだけあって値引きが若干少ない。
これはJ&Pだけでなく、インターネット通販でも同じ。
安くて良いのだから、やはりIDFをおすすめしておく。

しかし結局のところ、1台ですべてをカバーする機種はないとは言える。

私もできるならSRとIDF両方持ちたかったが、両者の辞書としての内容は
似かより過ぎている上に、そこまでのお金は出せない。

IDF−4000の後継機種4500は英英辞典が付いたこと以外
あまり変わらないようなので、SR9600の後継機に期待か。
それとも辞書内容が大きく異なるシャープにするか。
(ちなみにシャープのは電卓機能も充実である。さすがは電卓メーカー
って、キャノンも電卓では老舗ではなかたっけ?)
掲載時補足;最近はIDF4000の直系の後継機種IDF4100というのも出ている。
ただ、ちょっと辞書が違うような気がするが、詳細は資料がないので不明。

電子辞書は、デジカメと一緒で、結局1台は買って使わないと善し悪しは
わからないと言うこと(パソコンもそうだと言えけど、Windowsマシン
では実際のところあまり差はないからね)。
わかってこそ初めて次の選択ができる。

今回は結果として、店に無理言って交換してもらうことで、2機種の比較ができたので
電子辞書に対する見識が一層深まった。
(1日ではあったが使っている機体の交換なので、しぶしぶそうではあったが、
やってくれた。このあたり、少し高くはあったがさすがは量販店である。
J&P寺町店。)
店との間を行ったり来たりで結構疲れたが、元は取れたのかもしれない。

いずれにしても、まだ現在発売されている電子辞書では専門用語がほとんどだめ
なので、専門分野辞書をメモリーカードの形で供給してほしいと思う。
私がいつも調べるのが
        「律速」        りっそく
である。これは化学用語で反応が進むにおいて一番ネックになる反応段階のことだが、
これの意味が出る辞書は見たことがない。こう言うのを出せる辞書が欲しいのだ。
(律速はPC用のATOKでも変換できないが。)
一番やりそうなのはシャープだが、どうだろうか。
(ワープロの書院では専門用語変換辞書出してたんだけどなぁ。)

そうそう、IDF4000には誤字がある。

ヘルプ-各種資料−広辞苑第五版−広辞苑自序(第一版)
の一番最後にある奥付が「昭和30年(一九九五年)」となっている。
正解はもちろん一九五五年。
五と九が似ているので打ち込みミスかOCRの読み取りミスであろう。
こんなところまでちゃんと読んで、しかも誤字を見つける奴なんて
居なかったんだろうね。
えっへん。

        ・・・2005/04/12追記・・・

さらに、バグも見つけてしまった。

広辞苑で「括弧」を検索、ここでジャンプを押してカーソルを括弧記号()「」『』[]<>{}
のところに移動しようとするとハングアップする。
電源以外のすべてのキーが効かないし、電源キーを押して一度電源を切っても復帰しない。
さらには、電池を抜いてもだめ。
復帰には、底面にあるリセットスイッチを押すしかない。
かなり致命的なバグである。

他の項目でジャンプを使うと解るが、本来ジャンプにおけるカーソル移動では
これらの記号文字の部分はカーソルが飛ばされるようになっている。
ところがここではその飛ばすべき文字が連続して並んでいるために
異常を起こすのだと思う。
(記号文字は連続しないとしてプログラムが書かれていると思う。)

滅多に遭遇しないバグだとは思うが、CANONの人がここを読むことがあれば、
是非とも改善していただきたい。

        ・・・


ヘルプに入っている辞書の序章とか記述に関する資料は、結構ためになるので
読むと良かろう。

最近はほとんど毎日鞄に入れているが、通勤の電車の中でいろいろと見ていると
おもしろい。
特にIDF4000は検索とジャンプが優れているので、連想読みが出来るのがよい。
(ある単語からつながっていく語をたどっていける。)
これはとても勉強になる。それをオタクラに活かせればよいのだが、
まだそこまでは出来ていない。

なんにしても辞書のおもしろさを再認識できる1台である。

        ・・・おわり・・・
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