WORKING QUADS
◆ マイ・ホームを持とう!
 -1500万円でマイ・ホームを!-

丸紅基金データベース、住居

向坊弘道さん・"Working Quads"執筆者
Mr. Hiromichi Mukaibo of "WORKING QUADS" writer

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福岡県北九州市若松区にある向坊弘道さんの自宅、1989年10月

 ◆ マイ・ホームを持とう! --1500万円でマイ・ホームを!--


 私の家はアマチュア無線、パソコン通信、インターネット等を安心して楽しむのにも、自分の意志で自由に切り刻むことさえできる持ち家に住むことは必要だと昔から考えていました。

 なぜなら、天井走行型ホイストのために屋根裏を加工したり、屋根にアンテナを建てたり、風呂の床を埋めたり、本来なら家主がいれば柳眉を逆立てそうな改造を平気で自由にやらなければならないからです。

 そこで、ある時近所のお百姓さんに「タバコ銭ていどでいいから、、、」とせがまれて、崖がほとんどという60坪の土地をわずか3万円で買っておきました。 そしてそこに、18年後、1983年に両親が亡くなったチャンスをとらえて思い切って7坪の我が家を建てたのです。 7坪といえば畳にしてわずか14枚分で、その中に居室(8畳)、キッチン(3畳)、風呂兼便所(3畳)という狭さですから、もちろん玄関などはありません。  表を歩く小学生が「ねえ、見て! この家は玄関がないよ」と珍しそうに”正直な感想”を大声で述べ給いながら通り過ぎて行きました。

 ウサギ小屋ならぬマッチ箱小屋ていどでも、寝ていることの多い重度身障者の独居生活にはじゅうぶんです。 この建築費350万円也と周囲の石垣と門などが150万円也で、合計500万円でした。 高々とアンテナを建て、海外とのDX無線を楽しみました。

 ところが、3年経つと車イスの雨天練習場を持たないのが不満で、裏の崖を250万円でブロック化、その崖っぷちに今にもこぼれ落ちそうな20坪の練習場を250万円で建てようと張り切りました。 欲は限りのないもんだと思います。 でも、欲望こそが統合生活(ノーマライゼイション)への原動力なんですねえ。

 崖っぷちの庭から海を眺めて飲むコーヒーのうまさ。。。と、思いきや、人が集まってバーベキューを楽しむときに庭が狭い、というのが気になって、1997年に贅沢にも鉄骨を組んで海岸側に16坪のベランダを突きだしました。


 頸髄損傷者としての持ち家を考えるならば、例えば郊外に30坪の土地(坪25万円くらい)を買うとしましょう。 そしてそこに1階10坪を自分の部屋とトイレ、キッチンにして、2階5坪をゆとりの部分とすれば15坪で建築費は500万円となります。

 締めて私と同じように千万円あまりで一戸建てができ、誰にもイチャモンをつけられない一国一城のアルジとなります。 管理に問題の生じやすいマンションよりおススメ、、、です。

 一方、身障者個人の家を近いところに集合させ、介助の効率を向上させるグループ・ホームという構想の実験がスエーデンやアメリカ、日本で行われています。 個人的な自由と公的な義務がマッチするこの考え方が将来の身障者の住居の究極を示唆するものだと受け取られています。

 グループ・ホームといっても、少なくとも借家か持ち家かの集合構成上の違いは生じそうです。 個人の権利がほぼ完全に保障される持ち家のグループ・ホームこそ望ましいわけです。

 ド田舎の崖っぷちの我がマッチ箱小屋も、その実現に向けて一石一石布石を打つ意味で、少しは意義がありそうだと考えています。

 庭先に車イスを止めて、またも海風に吹かれながら一杯のコーヒーを飲んでいると、やはり一国一城のアルジとなってからは、そのうまさもまた一段と違っているような感じを受けます。

 頸髄損傷者の持ち家、マイ・ホームを提案して、行く行くはグループホームに発展するように念願しています。 身障者もがんばりましょう!

    終わり


向坊弘道さんの電子メール・アドレス
BXE06432@niftyserve.or.jp
LUCENASHI@msn.com



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