麸澤 孝 さん:自立生活一問一答
(瀬出井弘美さんとの)
Mr. Takashi Fuzawa of "WORKING QUADS" writer

"WORKING QUADS" homepage

"WORKING QUADS"No.9、10執筆者

麸澤孝さん:『ワーキング・クォーズ』執筆者:東京都
[写真説明:麸澤孝さん。1997頚連全国総会in大阪]
[ Photo : Mr. Takashi Fuzawa 1997 Osaka,Japan Association of the Quadriplegics. ]



 麸澤 孝:自立生活一問一答(瀬出井弘美さんとの)


 麸澤 孝:自立生活一問一答



瀬出井 弘美 さん:『ワーキング・クォーズ』ゲスト:神奈川県横須賀市市
[写真説明:瀬出井 弘美 さん]
[ Photo : Ms. Hiromi Sedei ]



Q.東京都保谷市を選んだ訳は?

 東京は制度的に全国でも充実しているし、こちらに友人がいた事と、埼玉の実家から近いという事で選びました。電動車イスで使える西武新宿線西武柳沢駅が最寄り駅です。


Q.自立生活をしようと思った動機は?

 自宅に帰って、家族の介護を受けて生活したくなかったというのが一番大きいかな。自分には自分、家族には家族の生き方や生活があるから。受傷した当時は一生施設か病院暮らしかと思ったけれど、周りで自立していく頸損の人達を見て、段々と自分にもできるんじゃないか!と思い始めました


Q.実際にはどの位の期間がかかったか? 最終決断は?

 毎年冬に行く「フィリピン滞在」も今年初めて単独で往復し、約50日間の長期滞在が大きなトラブルも無く上手くいき自信がついた事と、カーサ・ミナノでの生活が自分の思っていた生活と段々かけ離れていくのが、自立生活の最後の一歩を踏み出せた大きな理由のひとつです。

 カーサ・ミナノ入居当時は、個室でのプライバシーの守まれた生活に満足していたけど、強制的な部屋替えと毎年厳しくなる「管理と規制」に積極的に生きて行きたい私には「きれる!」寸前でした。遊びに行くと外泊届けを出して、アパートを探し、施設長に報告をしたのは退所の8日前で、いろいろな手続きもひとりでやり、飛び出すようにカーサ・ミナノを退所しました。


Q.家探しはどうしたか?

 土地勘のある、こちらの車いすの友人と一緒に不動産屋を回って、五日位で今のアパートが見つかった。埼玉の実家に近いという事と、電動車イスで使える駅というのを条件に、西武線沿線の保谷・田無・東久留米を中心に10件以上回ったけれど、車いすだという事で断る不動産屋は一件もなかった。今は昔と逆で、障害者の方が年金とか定期的に収入が入るので、家賃の滞納がなくむしろ貸しやすいというか、このアパートの不動産屋さんもとてもいい人で、出る時に現状復帰すればいいという事で、快く改造もOKしてくれました。


Q.改造した場所、またはその補助は?

 玄関をスロープにして、お風呂の段差をなくすためにすのこを敷いた。あとは部屋の間仕切りをアコーディオンカーテンに変えた位かな。床のウッドカーペットは自分で購入したが、その他は住宅改造の補助の限度額内だったので、自己負担はゼロです。全部でいくらではなく、玄関・居室・風呂・トイレ等項目別に限度が分かれて決められている。


Q.日常生活用具の給付は?

 ベッド、電話、エアコン。リフターは、社協から床走行式のを今のところ借りています。12月には天井走行式リフターが入ります。


Q.介護者はどうやって見つけているか?

 大学生やフリーター、介護を専門にしている人達がほとんどで、今10人位入っている。ボランティアではなく、全員介護料を出して契約しています。募集はアルバイトニュースに載せたり、大学のアルバイト情報誌に載せたりするのが一番集まる。それから障害者センター、ボランティアセンター等、そういう人達が集まりそうな場所にビラを貼っている。介護者は面接をして決定します。


Q.介護料はどうしている?

 たまたま6月から保谷市で、24時間対応のホームヘルパー制度に変わってそれを利用している。自選のヘルパーを登録するという形です。だから、東京都の全身性障害者介護人派遣事業は利用していません。月給ではなく、時給としてヘルパーに支払っている。


Q.介護者の入り方は?

 基本的には、朝の9時から夜の9時の12時間制二交替で入ってもらっています。外出もその時に入っているヘルパーと出かけ、出先で会議等の場合は、終了時間に迎えに来てもらっています。


Q.時給制にする訳は?

 24時間介護者が側にいるのはイヤではないが、一人で過ごしたい時は早く帰ってもらったりする。それはこちらの都合なのでその分の賃金は支払うが、その逆にヘルパーの都合で早く切り上げさせてほしい時はお金は出しません。時給制の方がそういう融通や、臨機応変な対応ができるので。


Q.ヘルパーを選ぶポイントは?

 資格や経験よりも見てやる気のある人が一番です。


Q.入浴とトイレは?

 入浴は月4回、巡回入浴サービスを水曜日に利用している。トイレは、月・金で訪問看護の看護婦さんにお願いしています。入浴は基本的には週一回だが、看護婦さんが来た時に、洗髪や清拭をしてもらっています。散髪は、近所の床屋に行っています。


Q.経済的収入は?

 介護料は別で、障害基礎年金・特別障害者手当・都と市の障害者手当です。生活にすごいゆとりがあるというほどではないが、明日のお米に困るほどでもありません。


Q.一ケ月の生活費はどのくらい?

 介護料・家賃は別で、光熱費込みでだいたい10万ちょっとかな?紙おむつとかガーゼとか、医療費で出ない部分の支出もバカにならない事が一人になってわかりました。


Q.外食や外で買うお弁当等の割合は?

 一週間に0〜1度。朝はお茶だけで昼食と夕食は、ヘルパーさんに作ってもらっている。献立は、その時の冷蔵庫の中身を見ながら。一週間分をまとめ買いしています。野菜を多く取るように心がけています。


Q.施設の生活と比べて一番の違いは?

 施設では職員任せだったけれど、お金の管理とか、自分の責任で何でもしなくてはならないという事が一番の違いかな。


Q.介護者とのつき合いで難しい点は?

 最初のうちは少し抵抗があったけれど、慣れてしまうと生活パターンはさほど変わらないので、する介護の内容も言わなくてもわかってくるし、あとはお互い適当に個々に過ごしている。なるべく一人で過ごしているのと同じにしています。


Q.ケアについてのマニュアルは?

 作りました。特に、お尻の床ずれのチェックは感覚がないし見えないので、お互い口で説明したり理解するのが難しいですね。


Q.今の生活の問題点は?

 やはり、体調維持のための健康管理。それに対して、具体的に特にしている事はないのですが…。ストレスを溜めないように気をつけています。


Q.一番困った事は?

 当日急にというのは一度もないが、ヘルパーに休まれた時。10人のヘルパーの他にもう10人位、何かの時に電話をかけられる相手を確保しています。失禁も何度もしたけれど、マニュアルに書いておいてあるし、仕方ない事なので開き直っています。


Q.大変なのと楽しいのとの割合は?

 その時々で大変だ!というのと、こんなに楽しい事はない、というのといろいろで、割合というのはちょっと…。大変でも、対処できてしまうとケロリと忘れてしまう。これが自立生活かなぁ?


Q.今、どのように生活している?

 起床は、入浴サービスと訪問看護の日は来るまで寝ている。(だいたい9時半)洗濯、掃除といった家事も午前中には終わるので、午後はほとんど毎日外出している。夜は9時から10時にはベッドに上がり、寝るのは12時過ぎ。歯磨きが終わったらアコーディオンカーテンを閉め、一人でテレビを見ています。背中に枕を入れて腰を浮かしているので、朝まで上向きのまま体交は無しです。何かなければ夜のヘルパーは楽だし、かなりいいアルバイトでは?と思う。


Q.今の生活の一番楽しい点は?

 やはり、いろいろな意味で自由だという事でしょうか。寝たい時に寝られるし…。それも絶対とまでは言えないけれど。


Q.緊急時のかかりつけの病院等は?

 泌尿器は、近くの個人の医院にお願いしている。3週間に一度のバルーン交換もそこでやってもらっています。市内の、大きな総合病院の看護婦さんが訪問看護に来ているので、そこにカルテもあるし、緊急時はそこに救急車で行くことになるかなぁ。


Q.車いすだという事で近所づき合いは?

 ほとんどない。挨拶する程度です。でも、障害者センターが近くにあるので、車いすは見慣れているのでは?


Q.これまでこれは大変だ!という事は?

 引っ越してすぐに高熱を出した事。疲れとかいろいろ重なったのだと思う。泌尿器の先生に往診してもらって、抗生物質の点滴をしてもらったらすぐに治ってホッ。


Q.どんなリスクが一番大きいか?

 だいたいいつもヘルパーが側にいるし、死にそうな大変な目に合っていないので…。 体調さえ崩さなければと思っています。


Q.今後の生活の目標や夢は?

 障害者に限らず、地域との関わりを持った活動をしていきたい。少したったら、自立生活をしたいという頸損のアドバイザーもできたらと思っています。年をとったら!? フィリピンに越冬に行く生活もいいですね。


Q.自立がしたいと思ったら誰でもできる?

 私の場合施設にはもう戻れないし、後戻りはできないんだ、この生活を続けなければ %%% という覚悟がないと、いくら制度が整っていたとしても、何とかなるカナー? ぐらいでは長続きしないのでは?


Q.自立生活に一番必要なものは?

 始める一歩が重要だと思います。


Q.これから自立生活を目指している人に何かアドバイスを

 絶対一人暮らしがいいとは言い切れません。どんな生活でも、本人が納得していればよいのですから。私の場合は制度の事は知っていたけれど、内容をよく確かめなかったたため、こちらに来てから慌てたという事がありました。住民票を移さないと、補助や制度は受けられません。その辺の下調べや準備はきちんとした上で、行動を起こして下さい。それからケア・マニュアルは必要です。


97年9月 編集


その他の質問は電子メールにてお待ちしています。


 t_fuzawa@ma3.justnet.ne.jp 東京都保谷市 麸澤 孝
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

  麸 澤 孝 TAKASHI FUZAWA

 〒202−0013 
 東京都保谷市中町6−13−25 ひまわり荘 103号室
 TEL・FAX 0424−23−7175
 t_fuzawa@ma3.justnet.ne.jp  VED01101@niftyserve.or.jp
 アマチュア無線局 JM1TTE
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


(1997年12月11日、『ワーキング・クォーズ』編集部に電子メール原稿がで到達。)



"WORKING QUADS" home pageへ


"WORKING QUADS" home pageへのe-mail

清家一雄、代表者、重度四肢まひ者の就労問題研究会