「療護施設から地域で自立生活」、 麸澤孝さん

Mr. Takashi Fuzawa of "WORKING QUADS" writer

"WORKING QUADS" homepage

"WORKING QUADS"No.9執筆者

"WORKING QUADS"No.10執筆者

麸澤孝さん:『ワーキング・クォーズ』執筆者:埼玉県
[写真説明:麸澤孝さん。1997頚連全国総会in大阪]
[ Photo : Mr. Takashi Fuzawa 1997 Osaka,Japan Association of the Quadriplegics. ]



「療護施設から地域で自立生活」


 97年5月より東京都保谷市内で自立生活を初めました。6畳・4.5畳・
台所の住宅街の古いアパートですが、浴室もユニットではなく以外と広いで
す。

 18歳で頸髄損傷(四肢の完全麻痺)になり31歳で初めての独立です。


 東京人!?になって早くも、6ヵ月がたちました。1日・1週間・1ヵ月が
飛ぶように過ぎ、自分でも信じられないスピードで時間がたっている感じで、
5月に申請した制度や手当が、今になって認定されるものもあり「ホッ」とし
ています。

 私の介助体制ですが自立生活と言うと、どうしても「大学の前や駅前で介護
者ボランティアのビラを配り、明日の介護者を見つけるのに苦労する。」と言
う印象ですが、私の場合ボランティアではなく時給で契約した介護者(介護経
験・性別問わず)で、12時間交代のほぼ24時間体制をとっています。です
から月末になると介護者の給料(東京都や保谷市から全額支給)の計算を自分
の責任でしなくてはなりません。そして介護者の能力・性格・得意分野(家
事・書類整理・外出時の介護など)を見極め的確に指示しないと自分の思った
通りには動いてもらえません。 

 そのほか、健康管理など食事の面でも気を使います。好きな物ばかりも食べ
てはいられず栄養のバランスも一応は考えています。療護施設入居中は「まず
くてくえねー」なんて言っていた私ですが、今では介護者と共にスーパーに出
掛け毎日の献立を考えています。まだまだ大変なことばかりですが、療護施設
での大変と今の大変はだいぶ違う楽しい大変さです。

 6月より週2回の訪問看護(排便・膀胱洗浄・洗髪・清式・全身管理など)
と週1回の巡回入浴サービスを受けています。5ヶ月が経ち、やっと住宅改造
(写真参照)が終わりフローリング、玄関スロープや天井走行式リフターで生
活もスムーズになりました。

 自立生活を始めて改めて感じるのは、体調が少々悪くても暑くても寒くても
必要があれば、買い物や銀行、市役所に行かなくてはならず、体調の維持や日
常生活に「責任」の重さも痛感しています。


 朝、新聞配達の音で目覚め、昼は小学校のチャイムが聞こえ、夜中は酔っぱ
らいの声や救急車のサイレンが鳴り響く。夜9時には電気の消える病院や療護
施設での生活が長かっただけに、生活の何気ないひとつひとつに感動している
毎日です。


今だから言えますが、市役所の皆さんは「私が保谷市でひとり暮らしを始め
る」と初めて市役所に行ったとき「こんな重度な頸髄損傷者が地域で暮らせる
のか?」心配だったそうです。私の場合療護施設入所中だったために、十分な
準備をせずに施設を飛び出して来てしまったので、皆さんに大変な迷惑をかけ
てしまいました。でも、市役所の皆さんを始め、保健婦、訪問看護ステーショ
ン、巡回入浴サービス、障害者センターなど皆さんとても良くバックアップし
てくれました。自立生活はやはり自分だけの力だけで成り立っているのではな
いと実感しています。


 これから色々大変ですが体調を崩さず毎日の生活を組み立てて行きたいと思
います。日常生活について余り書けませんでしたが、連絡をくれればお答えし
ます。これからもよろしくお願い致します。


         〒202 東京都保谷市中町6-13-25 ひまわり荘 103号室
             麸 澤 孝
         TEL・FAX 0424-23-7175  VED01101@niftyserve.or.jp


(1997年11月29日、『ワーキング・クォーズ』編集部に電子メール原稿がで到達。)



"WORKING QUADS" home pageへ


"WORKING QUADS" home pageへのe-mail

清家一雄、代表者、重度四肢まひ者の就労問題研究会